須賀健太と荒牧慶彦がW主演を務めるドラマフィル「奪われた僕たち」(毎週木曜夜1:29-1:59ほか、MBSほか)が現在放送中。同作は、一人の映像ディレクターが連続殺人犯と出会い、殺人の記録を撮り続けることになってしまう姿を描くサイコスリラー。
須賀が演じるのは、フリーの映像ディレクターで、過去に自身が制作したドキュメンタリー作品で賞を受賞した経歴を持つ堺洋一。荒牧は、ピアノ教師だが実は連続殺人犯というサイコパスな男・光見京を演じる。
このたび、WEBザテレビジョンでは、同作のプロデューサーを務める林玄規氏にインタビューを実施。キャスト陣の魅力や起用理由、制作秘話などを聞いた。
■「より作品のメッセージ性が強く出た」
――まずは、完成した映像を見た感想を教えてください。
本編が4:3の画角になっていたり、須賀さんが実際に役として撮影する映像を使っていたりと、細かい設定の打ち合わせを重ねていたので、上がった映像を見た際は、監督たちと話していた形になっているという実感がありました。
また、役者さんのお芝居で素晴らしい作品にしていただいたというのが率直な感想で、感謝の気持ちでいっぱいです。お二人に演じていただいたことで、より作品のメッセージ性が強く出たなと思います。
それは演技の迫力だったり、それぞれの役柄の見せ方だったりもそうですが、僕には計り知れない努力をお二人がされているのだなというふうに思いました。
当初は、ここまで死生観を含んだ作品になる想定ではなく、光見のキャラクター性をエンタメ的に描こうと始まった企画だったのですが、お二人に演じていただいたことで、僕自身も人の生死について深く考えさせられる作品になったなと思いました。
――殺人の描写や刺激的なシーンも多いですが、制作する上で具体的にどのような打ち合わせをされましたか?
最初に光見のキャラクター性から話を作り始めているので、怖さや残虐な描写というところだけではなく、どうしたらより光見のカリスマ性や美しさを表現していけるかを軸に話を進めていきました。
音楽面も、おどろおどろしい音楽を入れていくというよりは、ピアノの曲を使うなど、サイコパスな一面だけではない表現をしていこうと話していました。
■荒牧慶彦が提案したサイコパスなキャラクター
――光見のような人物像を創り出そうと思ったきっかけがあれば教えてください。
以前、MBSで荒牧さん主演の「たびくらげ探偵日記」(2022年)というドラマをやらせていただいて、その流れで針生悠伺監督や荒牧さんとも「また次にご一緒するならどういう作品がいいか」といった話をしていたんです。その中で、荒牧さんからこういうサイコパスなキャラクターを提案していただき、そこを広げていきました。
――放送が始まってからの反響はどのように感じていらっしゃいますか?
ありがたいことに、 視聴者や関係者からも「この先どうなるの?」「続きが気になる」といったご意見をいただいていたので、皆さんの興味をそそるような作品が作れているのかなという実感はあります。
■須賀健太の怪演に「鳥肌が立ちました」
――須賀健太さんの起用理由を教えてください。
堺はこの物語において一番視聴者の目線に近い役柄なので、やはり演技力のある役者さんにお願いしたいという思いがありました。プロデューサー陣や監督とも相談している中で、須賀さんだったらこの堺という役にバッチリはまるのではないかと。
これまでとは違ったイメージの役ですが、見事に演じていただきました。監督からのひげを生やす提案にも、堺のイメージとして共感していただき撮影までに伸ばしてきていただきました。
――須賀さんの演技で特に印象に残っているシーンはありますか?
第1話の最後の方の猪熊辰也(玉城裕規)が光見に殺されるシーンで、堺がカメラを回しているのですが、最後に少しだけ笑うんですよね。その表情がなんとも言えない、笑顔ともほほ笑みともまた違った絶妙な表情で鳥肌が立ちました。
須賀さんは、現場で見ていても、役に対して真摯に向き合っていただき監督ともディスカッションを重ねてくれますし、実際にカメラで撮影もしていただいて、作品をより良くしていこうという気持ちを強く感じ、本当にありがたい限りです。
――荒牧さんの演技で特に印象に残っているシーンはありますか?
個人的には光見がテロの計画を堺に伝える第3話ですかね。堺のカメラを自分に向けてやり取りをするのですが、堺に対して淡々とした光見なりの感情の高ぶりではあるのですが、その表現を生み出すのには普段の光見との演じ分けがあるわけで…あのシーンはすごく胸をつかまれるような感覚になりました。
そのギャップの生み出し方は、きっと荒牧さんの中ですごく考えてやられているのだろうなというのが見ていて伝わりました。
あとは、第6話で、堺がイメージした光見を描写するシーンがあり、そこで結構おちゃめな光見が見られるんです。監督が特にこうしてくれという指示を出したわけではないのですが、「そうきたか!」といった感じの演技で現場はもう大爆笑でした(笑)。そのギャップも荒牧さんの魅力なのだろうなと思いました。
――今回初共演となる須賀さんと荒牧さんですが、お二人の相性はいかがでしたか?
須賀さんは現場に入られてすぐ「本当にクランクイン初日か?」というぐらいスタッフの皆さんと熱心にお話しされていて、荒牧さんとも段取りやテストのときからずっとお互いをぶつけ合っていて、お二人ともすごいなと思いながら見ていました。
須賀さんも舞台で演出をやられていたり、荒牧さんもプロデュース業務をやられていたりと、役者だけではなくクリエイティブな方面でも活躍されている方たちなので、そういうやり取りもすごく新鮮でしたね。
■「光見に殺される役どころを皆さん面白がってくれました」
――さまざまなゲスト俳優が出演されていますが、撮影現場で印象的だった出来事はありますか?
まずは、殺される役の皆さんがお忙しい中でも短い尺のためにお越しくださり、本当に感謝の気持ちしかないです。光見に殺される役どころというので皆さん面白がってくれました。
作品の内容的には重めな話ですが、本当に楽しく撮影できる環境だったので、メイキング映像やオフショットではそういった楽しい雰囲気が皆様に伝われば良いなと思います。
あと、志磨遼平さんにプロデューサー役で出ていただきましたが、主題歌を今回ドレスコーズに担当いただいております。楽曲も、普通だったら激しめやマイナー系な曲が来そうなところを、作品に寄り添って彩っていただいたのがありがたかったです。
――この作品を通して世の中にどのような影響を与えたいですか?
光見が正しいとは思いませんが、人の生死において何かを考えるきっかけになるような作品になればいいのかなと思います。自分自身も出来上がった映像を見て、よりそういった深い部分を考えさせられるような作品だと改めて実感しております。
――最後に、後半戦の見どころと視聴者へのメッセージをお願いします。
まずは、ご覧いただいている方には感謝の気持ちでいっぱいです。本作は、本筋は第5話で一旦区切りがつく形にはなるのですが、最終回も光見の違った一面が見られたり、堺と光見のやり取りで「こんなこともあったんだ」といったような楽しみ方もできる内容になっているかと思いますので、ぜひ最終回までご覧いただけたらと思います。
また、7月10日(水)発売のBlu-rayでは、本編とは異なる現場の明るい雰囲気が伝わるメイキング映像が収録されておりますので、ぜひそちらもお楽しみいただけたらと思います。
<奪われた僕たち>ドラマPが語る須賀健太&荒牧慶彦の実力と素顔「ここまで死生観を含んだ作品になる想定ではなかった」
2024年5月9日