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『6秒間の軌跡』高橋一生×原田美枝子が生み出す至福の時間 母と“出会い直した”星太郎

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『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の2番目の憂鬱』©テレビ朝日

 謎の細長い穴に落ちた星太郎(高橋一生)が航(橋爪功)に助けられる。第1話で星太郎が見た夢は、何かの暗示なのだろうか。『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の2番目の憂鬱』(テレビ朝日系)第4話では、再び航が幽霊となって現れた理由について、ある疑惑が浮上する。

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 自分が花火師以外の道を選べなくしてしまったのではないか、と父親として責任を感じている航に「この家に生まれて良かった」という素直な想いを伝えた星太郎。その言葉を聞いて安心した親父は、もしかしたら死後の世界に戻ったかもしれない。星太郎はそう思っていたが、航はあっさりと姿を現す。

 すると、「やっぱり」とあたかも航がまだこの世界に残っていることをわかっていた様子のひかり(本田翼)。それは予知能力なんかではなく、何かが起こる前触れのようなもので、星太郎も幼い頃、母・理代子(原田美枝子)が家を出て行く前にそれを感じたことがあった。

 そんな中、星太郎が明太子おにぎりを食べたくなったことが前触れだったかのように、スペイン帰りで明太子ごはんを食べたがっている理代子が望月家にやってくる。星太郎を見つけるや否や、小走りで駆け寄ってハグする理代子。その瞬間、照れながらも嬉しそうな星太郎が大の大人なのに思春期の男の子に見えた。自ら理代子を家に上げるも、そわそわと落ち着きがない星太郎。無理もない。だって、彼女が望月家の敷居をまたぐのはおよそ30年ぶりなのだから。

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 理代子は航と離婚以来、自身が通っていた陶芸教室の講師と再婚。だがその後、2人は本人たち曰く“出会い直し”、星太郎が知らないところで不倫関係にあった。それだけでもかなり常軌を逸しているが、星太郎と30年ぶりに再会した時も理代子は彼を躊躇いなく抱きしめた。それも自分のせいで寂しい思いをさせた息子に「ごめんね」の一言もなく。

 自分勝手に飛び出した家に足を踏み入れるのだって、普通なら遠慮されるものだろうけど、理代子にはそれが全くない。なのに、この理代子という女性はなぜか憎めないのだ。偶然の出会いとその時の自分の気持ちに身を任せて人生を漂う理代子。そんな彼女の自由で楽しげな笑顔を前にしたら、何かひとこと言いたい気持ちはあっても、まあいっかと思ってしまう。最初は復讐心を持っていた星太郎もすっかり骨抜きにされ、今やまるで恋人を前にしているかのように目が輝いている。そんな星太郎の表情を引き出すのは彼女だけだ。

 理代子は星太郎に“星”という字を書かせ、「昔は正しい書き順で書かなかったのよ」と嬉しそうに思い出話を語る。彼女にとって、この家で過ごした日々は苦しいことばかりではなかったのだろう。星太郎と理代子が机を挟み、楽しげに会話をしている。カメラが引き、居間全体が映った時、その光景が望月家の穏やかに溶け込んでいて、ああ、この2人は本当に“出会い直した”んだなあと思わされた。ちょっとした間や視線の運びも意味を帯びる高橋一生と原田美枝子の掛け合いがワンカットだからこそ、より真に迫る至福の時間だった。

 幽霊の航は自分の姿が理代子に見えていないことがわかり、スッと姿を消したが、仲が良さそうな2人を見て安心したことだろう。もともと航が幽霊になって帰ってきたのは、理代子との関係を星太郎にずっと黙っていたことに対する罪悪感があったからだ。では、二度目の理由は? 星太郎は細長い穴に落ちる夢や、航の意味深な言葉の数々から、自分に何か危険が迫っていて、それを航が伝えようとしているのではと思い始める。「父って、未来が見えるの?」という星太郎のど直球な質問に、果たして航はなんと答えるのだろう。

(文=苫とり子)

 
   

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