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NHK夜ドラで描く『VRおじさんの初恋』。バーチャル体験はおじさんの心を豊かにするのか、孤立感を高めるのか…?

ダ・ヴィンチWeb

『VRおじさんの初恋』(暴力とも子:原作/一迅社)

 技術が進化し続ける現代、VR(バーチャル・リアリティ)は聞き馴染みのある言葉になった。まるで自分がその場にいるかのようなバーチャルな世界は、どんどんとリアルなものとなり、現実の世界で目にするものと変わらないのではないかと感じることもある。

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 NHKの夜ドラ『VRおじさんの初恋』(暴力とも子:原作/一迅社)の主人公は、中年の独身男性・直樹(野間口徹)。成功体験もなく、恋愛経験もない彼の楽しみは、帰宅後にVRゲームを始め、若い女性アバター・ナオキになりきることだ。しかし、そのVRゲームは半年後にサービス終了を迎える。迫り来るVRゲームの終焉を前に、ナオキは無邪気な女性アバター・ホナミと出会う。それは、現実の直樹にとっても、初めて一緒にいたいと思える相手だった。

 ドラマは原作漫画と異なるシチュエーションや設定を含みながら物語が進む。原作を読んだ人ならわかるかもしれないが、ドラマのほうがVRパートだけでなく現実パートも多く描かれる。直樹の職場での人間関係も細かく描写され、第1週(4話まで)のラストは現実の直樹にとって不穏な終わり方をした。一方、VRの世界では、第4話終了時点でナオキとホナミの関係はどんどんと深まっていく。

 現実でもVRでも孤独だった直樹にとって、初恋は刺激的なものだ。その新鮮さは視聴者である私にも伝わってくるが、VRで培った関係は現実とは異なる。味気ない日常を送っていた直樹は、VRの世界での感情に生きがいを見出す。バーチャルな体験は人間の心に豊かさをもたらすのか、それとも現実との比較で孤立感を強めるのか。第4話まででナオキとホナミは互いに好意を抱くが、現実の直樹の環境は変わらない。VRパートと現実パートの交差は、「恋の新鮮さ」と「現実と虚構の落差」を浮き彫りにする。

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 ただ、VRの世界での経験を無駄だと切り捨てることはできない。VRゲームでのナオキとホナミの想いはとてもピュアだ。現実の直樹も、VRゲームでの体験によって、かすかに明るい表情を見せ始める。VRと現実の落差や、迫りくるVR世界の終焉を受け止めながらも、直樹は確かに変化しているのだ。

 第2週以降、ホナミとの出会いによる直樹の変化は、吉と出るのか、それとも凶と出るのか。毎週月曜から木曜まで放送される本作を、最後まで見届けたい。

文=若林理央

 
   

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