日本文学史における私小説の出発点と言われている田山花袋の不朽の名作を、舞台を明治から令和に移して映画化した『蒲団』が公開に。主人公を小説家から脚本家に設定を変え、現代劇として新たな命を与えました。
主人公・時雄役を、映画『EUREKA』など青山真治監督の常連俳優として知られ、名バイプレイヤーの斉藤陽一郎さんが演じています。本作が20年ぶりの単独主演作となった斉藤さんに作品や仕事への想いを聞きました。
■公式サイト:https://futon-cinema.com/ [リンク]
●令和によみがえった「蒲団」ですが、最初にオファーが来た時はいかがでしたか?
うだつの上がらない中年男性がいびつな恋愛にトチ狂って落ちぶれていく話が僕にぴったりなのだと……制作サイドが言ったか言わないかは分かりませんが(笑)、きっと合うと思ってご依頼いただいたのだと思います。釈然としない思いもありながら(笑)、「やります!」と即答しました。
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●悩める中年男性でしたが、撮影を終えられてみて実際いかがでしたか?
なぜ今100年以上前の「蒲団」なのかと思った時に、当時もかなり物議を醸したと何かで読んだことがあるのですが、2024年も同様の受け取られ方だろうなと思いました。最近のコンプライアンス事情含め、おじさんたちへの啓蒙の側面もある映画だなと思うと同時に、一方で誰しもが分かる純愛映画として楽しめたらいいなという想いもありましたね。
●男性視点では自分に置き換えた時に相当怖い映画だと思いました。
だとしたら、この映画は大成功なんじゃないですか(笑)。魔が差すって怖いですよ。最初はそんなつもりはないのにね。屋上で青空を見上げているシーンでは、何だかいい感じの音楽も流れているのですが、おじさんの頭の中には流れているんです。あれは恐ろしいメロディですよ(笑)。流れ始めたら、もう気をつけろよと。
●脚本家の竹中時雄という人間像は、どのように理解しましたか?
一度は成功を手に入れた人ですよね。いい家に住み、いい暮らしをして、ただ、人ってずっと順風満帆なのかと言うと、そんなことはなくて。僕自身もそうで山あり谷あり、そういう時期があるんだと思います。年齢や健康によっても変わるだろうし。だから、ダメになりそうな人たちに寄り添うような感じというか、そこは僕のダメさにも重なっているのですが、そこを見抜いた監督とプロデューサーさんがすごいと思いました(苦笑)。