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内田彩、初のギター弾き語りを披露した『ACOUSTIC DAY』&『SWEET POP NIGHT』レポート

ジェイタメ

声優・アーティストの内田彩が、2024年4月28日に神奈川・関内ホール 大ホールにて『AYA UCHIDA SPRING LIVE ACOUSTIC DAY / SWEET POP NIGHT』を開催した。

今回のライブは、アコースティック演奏での昼公演(=ACOUSTIC DAY)と、エレクトロポップを主軸とした夜公演(=SWEET POP NIGHT)の2部構成に。内田はかつて、2017年6月に開催した『AYA UCHIDA Early Summer Party ~SUMILE SMILE~ / ~Everlasting Parade~』でも、昼夜公演それぞれでライブコンセプトを分ける試みに挑戦し、当時は「ハルカカナタ」など数曲のみをアコースティック形式で披露。同公演やその後のインタビューにて、今度は全編を通したアコースティックライブを開催したいという旨をたびたび口にしてきただけに、ようやく念願が叶った形となる。

そんなライブ当日の模様は、5月12日までニコニコ生放送にてアーカイブ配信を実施中(※視聴にはチケット購入が必要)。現在も公開期間中のため、これから配信を視聴する読者の楽しみを奪わぬよう、本稿ではできるだけポイントを絞って振り返りをしていきたい。

昼公演の開幕早々、この日最初のサプライズが。「キックとパンチどっちがいい?」で登場してきた内田の肩に、“ACOUSTIC DAY”のライブタイトルに合わせて、オフホワイトのアコースティックギターが下げられている。よく目を凝らして見るとあのギター、どこかで見覚えがあるような? そう、2020年8月に行なった5周年記念特番の放送内で、音楽ディレクターからプレゼントされたもの。約3年8カ月越しの布石が思わぬタイミングで回収されるのかと、思わず胸に込み上げるものがあったが……。

フレットを握り、弦にも手をかけ、音が鳴る瞬間をいまか、いまかと待ち構えるも……なんと、そのままギターを下ろして、自身の後方に置いてしまう。そして始まった曲の歌い出しは〈別にどうでもどうでもどうでもいいのよ〉で、会場全体から大爆笑と拍手が巻き起こったのは記すまでもない。そこから腰を据えて、内田のキュートな歌声、河合英史(バンマス、Key)と嘉多山信(Gt)のアンサンブルに心をほだされようとしたところ、内田の方から〈終わったものは もう終わりなんです〉と、申し訳なさそうにステージに間借りしている件のギターに手を向けて“天丼”で笑いをさらったのにはもう脱帽である。

諦念か、慈しみかーー。サビ終わりの〈静かなため息に カレンデュラ、揺れる〉でのため息いっぱいの歌唱と、直前のアコースティックギターによるクレッシェンドの盛り上がりの振れ幅で、曲名通りに心を揺らされた「カレンデュラ、揺れる」。もはや先ほどまでとは別人が歌っているのではと思わされるほど、同楽曲とは異なる低音と歌声のエッジを際立たせた「Inferior Mirage」。“ACOUSTIC DAY”を掲げるだけに、まったりとした楽曲ばかりが並ぶものかと想像していたが、蓋を開けてみれば、ライブ序盤には暗闇をもがくような楽曲がずらり。改めて、一筋縄ではいかないアーティストだと痛感させられる。

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中盤ブロックでは、普段のライブで人気のアッパーチューンを暖かで軽快なアレンジにして演奏。せっかくならばアーカイブ配信にて確認してもらいたいため、あえて曲名こそ伏せるのだが、来たるアーティストデビュー10周年を予感させるように、“物語を紡いできた時間”を懐かしむような眼差しで歌った楽曲だったり、椅子に座って何度も足をのばし、自身の足元の“スニーカー”を誇らしげに見せて、小さくステップを披露してくれた楽曲だったり。特にこの2曲のボーカルは、全体的に歌詞の発音をやや崩し、演奏に対して歌声がじんわりと浸透するような、チルでウェイビーな感触に聴かせることを重視していたように思えた。

全体を通して、昼公演の楽曲は原曲に比べてテンポを落とし、かつ音数もシンプルなぶん、普段以上に歌詞の意味を噛み締める瞬間が多かったと振り返る。内田のボーカルも演奏にあわせて、駆け足で前のめりにしたり、反対にレイドバックさせて溜めをいっぱいに作ったり。体を自由に動かすようにリズムで遊ぶ姿は、“ACOUSTIC DAY”のなんたるかを象徴していた。

ライブ終盤には、「運命じゃなかった」のライブ初披露などもあった後、アンコールでは「わかってるんだ、これでしょ」と、内田がとうとう観念。冒頭の“出オチ感”も、ここまでの伏線だった。誰もが気になっていた件のアコースティックギターに、いよいよプラグが刺される。そこからギターを抱え、用意された椅子に座ると「この瞬間を脳裏に焼き付けてください」と人生初のギター生演奏。しかもサポートメンバーはただ見守るのみ。大舞台で選んだ楽曲は「まるで元気」だった。

演奏は、“せーの”と声なき声でタイミングを合わせるように、歌と一緒にギターを鳴らし、サビ後半には、原曲のコーラスの掛け合いを一人でこなす難しい部分もあったが、ボーカルこそ一切ブレなかったのが内田らしい。渾身のワンコーラスを弾ききると、サポートメンバーも加わってのフルコーラスに。最後には、客席との〈声を聴かせて〉の掛け合いが成立すると、両腕で大きな花丸を作って満面の笑みを見せてくれた。本当に、この瞬間が永遠に続いてほしい。そう願いたくなる、幸せいっぱいな昼公演の終幕だった。

対する夜公演は、衣装やステージセットをがらりと変えて、雰囲気を一新。特に後者は、ステージの上にさらに階段付きのステージを設けたりと、クラブをイメージしたサイバー感ある空間となっていた。ライブの幕開けを飾ったのは「with you」。続けて「Party Hour Surprise!」から「Candy Flavor」にかけては、曲間でキックの重みが徐々に増していき、楽曲がシームレスに繋がるDJ的な演出で会場を沸かせていた。

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