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石原さとみ、“ヒーロー”を“人間”に見せる演技力 『アンナチュラル』から『Destiny』まで

Real Sound

『Destiny』©︎テレビ朝日

 ピシッと決まっているパンツスーツ、軽快なヒール音、そして書類に目を通す時の真剣な眼差し。『Destiny』(テレビ朝日系)で石原さとみが演じる奏の姿はとても凛々しく、とてもカッコいい。一方で、12年前、真樹(亀梨和也)と付き合っていたときに見せたコロコロと変わる表情や、貴志(安藤政信)から不意にプロポーズを受けて驚く顔はとても可憐で、思わず画面に向かって「かわいい」と呟いてしまうほどだ。

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 塚原あゆ子監督と脚本の野木亜紀子が再タッグを組み、8月23日に公開の映画『ラストマイル』では、この作品と世界線を同じくする『アンナチュラル』(2018年/TBS系)、『MIU404』(2020年/TBS系)から総勢16名のキャストが出演することが発表されており、石原は6年ぶりに通称・UDIラボの法医解剖医、ミコトを演じることが決定している。現在公開されている予告編でも、早速ミコトの姿を確認することができる。

 思えば石原がドラマに出演するたび、そのかっこよさに惚れ惚れしたり、かわいさに心奪われたりを繰り返している気がする。しかし、彼女が演じる役で何よりも魅力的なのは、内に秘めた芯の強さではないだろうか。

 石原が演じるのはいつも「誰もやらないことをやろうとする人」だ。とにかく自分が納得するまで諦めず、与えられた仕事以上のことをやろうとしてしまう。『アンナチュラル』のミコトは担当した遺体の明確な死因を特定するため、たびたびラボを飛び出しているし、『Destiny』の奏は担当する事件について上司の大畑(高畑淳子)に詰められ、嫌味を言われるなど、自分の仕事に余裕があるわけでもないのに、父・英介(佐々木蔵之介)や友人のカオリ(田中みな実)の死の真相を調べずにはいられない。

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 ミコトも奏も己の確固たる信念に従って誰にも左右されず、淡々と行動しているように見える。しかし、物事に真摯に向き合おうとするからこそ、ぶつかる壁は多く、精神的には常にギリギリの状態のようだ。

 奏は真樹と彼の父・浩一郎(仲村トオル)の会話を聞いてしまってから、父が自ら命を絶った理由とカオリの命を奪った事故の背後にあるもの、そしてふたつの死の関連が気になっていた。そしてこのどちらにも浩一郎が関わっていることがわかってきた頃、なぜか、浩一郎本人が奏に面会に来た。奏は、これをいい機会と捉えたのか、それとも勢いあまったのか、浩一郎に自分の父がなぜ死んだのか、父の死とカオリの死が関係があるのかをストレートに聞いたのである。検事である奏は、筋道立った説明やそれを裏付ける証拠が何よりも大切であることは分かっているはずだが、吐き出さずにはいられなかったのだろう。今にも泣きそうな顔で訴えかける奏の姿はとても印象的だった。

 石原は軽々と仕事をやってのけるような“ヒーロー”を演じはしない。“ヒーロー”に見えるような人の、迷いや挫折、泥臭い部分もしっかりと見せて“人間”を演じようとするのだ。言葉に詰まったり、何かを堪えるために目を閉じたり……。些細な仕草からそれを感じ取ることができる。何にも揺らがずに自分を信じて行動できる人はカッコいいし、できれば自分もそうでありたいと誰しもが願うだろう。だけど、現実にはなかなかできることではない。そんな中で、自分を叱咤激励して奮い立たせながら、妥協せず、目指すところに向かって歩みを止めようとしない奏やミコト。そして彼女たちを演じる石原の姿には、いつも勇気づけられるものがある。この芯の強さから生まれる“必死さ”が、私たちが石原の演技に魅了される理由のひとつになっているのではないだろうか。

 『Destiny』の奏には、父やカオリのこと以外に、心穏やかになれない理由がある。かつての恋人・真樹の存在だ。元々、愛想を尽かして別れたわけではないからこそ、また惹かれあってしまったふたり。いけないとはわかっていても、止められない衝動がある。これもまた“人間”らしいといえるが、その先に見える道は明るくはない。これから奏はどうなってしまうのか。ますます目が離せない。
(文=久保田ひかる)

 
   

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