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『東京タワー』を成立させる永瀬廉の思慮深い佇まいと大胆さ 駆け引きのバランスが秀逸

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オシドラサタデー『東京タワー』©︎テレビ朝日

 東京タワーの光に照らされながらの逢瀬の後、透(永瀬廉/King & Prince)が詩史(板谷由夏)と意外な場所で再会を果たす『東京タワー』(テレビ朝日系)第2話。

参考:『東京タワー』上川隆也が永瀬廉の父親役に 「また違った一面を見せていただきました」

 母親・陽子(YOU)に連れられて行った有名なカメラマン・本多(上川隆也)の写真展で、母親の友達として詩史を紹介される展開が2話にして待ち受ける。

 「会えそうな日の夕方4時頃にまた連絡する」と言って詩史が一人先に部屋を出て行ったきり、鳴らないスマホを前にじっと待ち続けていた透からすれば願ってもみない再会だが、この偶然は写真のように現実的で残酷だ。

 本多の出世作になった15年前に撮影された作品のモデルを詩史が務めていたことを知り、改めて自分との年齢差をまざまざと突きつけられる。逢瀬の後も早々に切り上げ帰宅してしまい、そこから待てど暮らせどスマホも鳴らず、透には彼女のことが遠く感じられて仕方ないのだろう。束の間距離が縮まったと思っても彼女との距離は本質的には一向に埋まらず置いていかれてしまう。ずっと追いつくことのできない詩史の背中を写真越しに立ち尽くしながら見つめる透の姿はどれほど彼女に恋い焦がれているのか痛いほど伝わってくる。

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 そんな焦燥感に駆られていた中、ようやく詩史から連絡が入ったかと思えば「全てなかったことにしましょう。それがお互いのためだわ」と決定事項として言い渡されてしまう。

 このあまりに一方的で唐突な詩史の申し出に傷つきながらも「僕にも考える時間をください」と真っ直ぐ伝える透の姿に、彼の生半可ではない本気度が滲む。耕二(松田元太)から“不倫”だと指摘された透はその言葉自体に強い拒否反応を示していたが、自分の父親の不倫のせいで世間から勝手に押された烙印の数々が思い出されるのだろう。そしてそんなものに縛られず自由に生きていそうな母親こそが“世間体”を気にして、必ず旧友と会う際に夫の代わりに自分を連れていく姿も、彼にとってはなんだかとてつもなく陳腐に感じられるようだ。

 “陳腐”といえば、自分に感化された耕二が家庭教師をする教え子の母親・喜美子(MEGUMI)に寄せる好奇心と自分の詩史への気持ちを同質化されたくない透が、珍しく語気を強めて言った「俺とお前は違う、絶対に違う」は、透が「これはそこらへんに転がっている“不倫”ではない」と訴えているかのようだった。喜美子自身というよりも“人妻”や“年上の女”という彼女が持つ記号に興味を示す耕二に対して、「年上だから好きになったんじゃなくて、好きになった人が年上だった」とする透。この2人がいることでいわゆる“不倫”と一括りにされる恋愛模様にもグラデーションが広がっていること、許されぬ恋の中にもとってもピュアな部分があることが強調される。

 本作は透から詩史へのひたむきな純愛というものがなければ、それこそ一気にチープになってしまうが、透役の永瀬廉の駆け引きのバランスが秀逸だ。彼女に翻弄されながらも彼女に振り回されるだけではない。主導権を詩史に握られながらも“上下関係”が出来てしまわず、詩史のような捉えどころのない自立した年上女性に引っかかりを常に与え続け、完全には関係が断ち切れない。手強い詩史にとって“番狂わせ”を起こさせる存在であり続けなければならない透という存在を、見事に体現している。

 彼との関係を精算しようとした詩史に「僕は今までいろんなことを我慢していた(中略)でも詩史さんのことだけは我慢したくない」なんてあんなに切実に訴えられたら、決意が揺らいでしまうのも頷ける。理屈や倫理観を吹き飛ばすような求心力がなければ透と詩史の関係も、このストーリー自体も進行しないが、それを牽引する透役の永瀬の思慮深い佇まいと、時に発揮される大胆さによって、この作品が成立しているように思える。

 傍から見れば、医学部生の透と超売れっ子建築家の詩史という、それぞれ社会にしっかりと居場所のある2人だが、彼らは彼らにしか見抜けず分かち合えない“寂しさ”を共有し合い、惹かれ合っている。東京タワーを見て“寂しそう”と思うその感性で引き合わせられた2人には、2人にしか作り出せない空気感があり、それを前に年齢もあらゆる諸事情も、たとえその人が自分の母親の友人だとしても、そんなことは障壁にはならないのだろう。

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