top_line

足し算+パズルで脳を鍛える!
「2048」はここからプレイ

金村尚真、「回またぎ」起用の意図――すべては先発の道へ通じる【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#224】

ベースボールチャンネル

金村尚真、「回またぎ」起用の意図――すべては先発の道へ通じる【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#224】(C)ベースボールチャンネル

セットアッパーでいくか、先発転換か

 金村尚真の起用法が話題になっている。今シーズンは池田隆英の出遅れ(右ひじ炎症)もあって、セットアッパーとして勝ちパターン継投の重責を担っているのだが、そもそも彼をセットアッパーで使うこと自体に議論がある。解説者の金村曉氏は「先発で使えば間違いなく2ケタ勝つ」とずーっと言い続けている。まぁ、ドラフト時の期待もローテの一角に食い込んでほしいというものだった。持ち球にバリエーションがあり、どの球種も一級品だ。フツーに考えれば先発タイプなのだ。当然のように開幕当初、ファンの声も先発で使ってほしいというものだった。
 
 ところがセットアッパーとしてハマッたのだ。ファイターズはここまで下馬評を覆す健闘を続けているが、勝ちのファクターを探ると「下位打線の活躍」と「投手陣の踏ん張り」が大きい。4番マルティネスがなかなか点火しなかったのでもわかる通り、ファイターズは主軸の爆発でドカンと大勝したのでなく、下位打線がコツコツ点を稼ぎ、投手陣が僅少差を守って勝ってきた。1点差勝ちが多いのだ。もちろんのこと、河野竜生、北浦竜次、田中正義らとともに金村の働きが欠かせなかった。
 
 3月4月は連戦が少なく、先発のコマが4枚プラスアルファで回せたことも大きい。4枚というのは伊藤大海、加藤貴之、山﨑福也、北山亘輝の4人だ。本来はバーヘイゲンがそこに加わっている構想だったが、調整がうまく行ってない。根本悠楓、上原健太、鈴木健矢、田中瑛斗もローテを1シーズン守り切る評価に至っていない。初先発で評判になったのは福島蓮だ。金村が今後、配置転換されるとしたらこのメンバーと5枚め6枚めの位置を争うことになる。
 
 難しいところなのだ。金村ほどの大器はでっかく育てたい。ファイターズは(先日、29年ぶりの2試合連続完封劇があったけれど)リリーフの負担が大きいから、酷使して潰してしまわないか心配でもある。おそらく将来性を考えれば、中途半端な便利使いはやめて長いイニングを任せるべきなのだろう。相手打線を1巡め、2巡め、3巡めと組み立てを変えつつ仕留めていくには、頭と身体のスタミナが必要だ。それは実戦のなかで身に着けていくものだと思う。
 
 といって結果が出ているものを変えるのは大変だ。今、接戦をものに出来ている継投パターンの一角を敢えて崩すのだ。せっかく1点差勝ちができているのに、また昨シーズンの「1点差負けの山」に逆戻りかもしれない。僕自身も「先発タイプだけどなぁ」と「でも、ハマってるしなぁ」の間を行きつ戻りつしているような状態だった。早く池ちゃん(池田隆英)が帰ってきてくれたらこんな問題はすぐケリがつくのにと思いつつ。

勝ちパターンで先発の準備は吉と出るか

 そうしたら新ネタが投下された。新庄監督が記者談話で金村の新・起用プランを明かしたというのだ。5月下旬、4週連続6連戦が続くスケジュールをにらみ、先発の枚数を増やす必要がある。福島蓮ら「第2集団」に期待する一方で、「6連戦が続くから、先発の準備もさせていかないと。次2回、次3回とか、こっちでゲームに参加しながらの方が僕はいいと思う」(4/25付、スポーツ報知)と、1軍で「回またぎ」起用をしながら調整するアイデアを披露したのだ。2軍で先発登板させ調整するのでなく、1軍の実戦で投球イニングを増やしていく新機軸(?)だ。なるほどこれなら勝ちパ継投を崩さず、先発の準備ができる、のかもしれない。
 
 そもそも金村の「回またぎ」起用はSNSで議論百出だった。新庄監督はどういうわけか金村を回またぎで使った。通常、セットアッパーは8回なら8回の1イニングを任される形が定型化しているのだが、どうも金村は違うのだ。「回またぎ」のリリーフは一度アドレナリンが出切って、インターバルの間にそれが落ち着いてしまうので、もう一度、状態をつくるのが難しいという。が、金村は淡々と「回またぎ」をこなしてしまう。別に起用の不満も言挙げしない。一部のファンは「酷使ではないか!」とSNSで沸騰していた。それがこれまで以上に「回またぎ」のイニングを増やしてゆき、先発に備えさせるという。なかなかの仰天プランだ。
 
 たぶん金村には相当、頭の切り替えが要求されるだろう。爆発的に力を使えばいい「短距離走者」が、中距離、長距離とペース配分を覚えていくのだ。まぁ、建山ピッチングコーチも金村のスマートさを評価して、2軍調整不要のジャッジをしたのだろう。
 
 僕には何とも言えない。これはもう個別具体のケースだ。敷衍(ふえん)して、ファイターズの投手全員に当てはまるよう「公式化」するもんじゃない。うまく行けなければ(2軍でステップを踏んだ?)再調整になるのかもしれない。ただ大事なことがある。新庄監督が「彼は将来的には間違いなく先発」(同紙、談話)と認識している点だ。ファンは2年めの新人王を期待して、起用法を云々(うんぬん)するかもしれない。だけど、「すべての道はローマに通ず」じゃないけれど、あらゆる起用が最終的には「先発の柱・金村尚真」に通じている。そのために経験値を稼いでいる最中だ、と思えば5月の観戦にグッと興趣が増す。金村がどうモデルチェンジしていくか。首脳陣がどう配慮し、どう導いていくか。そこのところを注視したい。

 
   

ランキング(スポーツ)

ジャンル