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【高校野球】40年ぶり春4強の武相 練習の「姿勢」「質」を高めて遂げた躍進 

週刊ベースボールONLINE

「古豪復活」を託された指揮官



1984年以来の4強進出。夏の第1シードを得た八木[左]と吉崎[右]の2年生バッテリーは、喜びを爆発させた[写真=田中慎一郎]

【4月27日】
春季神奈川県大会準々決勝(保土ヶ谷)
武相高6-5日大藤沢高

 武相高が2点をリードした9回表の守り。日大藤沢高に1点を返され、なおも、二死三塁とピンチが続いたが、先発の2年生サウスポー・八木隼俊に焦りはなかった。

「今までやってきたことを信じて、我慢強く、武相の野球で勝つ」

 次打者を二ゴロに抑え、武相高が6対5で逃げ切った。40年ぶりの春4強である。

 2020年8月から母校を指揮する豊田圭史監督は試合後、取材の冒頭で報道陣から「春40年ぶり4強」と聞かされると「僕が生まれた年なんですよ。2月でしたから、2カ月ですねえ」と屈託のない笑顔を見せた。

「この春はベスト8を目標にしてきて、11年ぶりに達成した。この11年というのが、ものすごく頑張らないといけない時間で、このベスト8を越えれば、次の景色が見える、と。僕自身も4年目の昨秋、4年目の春となって、ベスト8の壁を越えないといけないと、プレッシャーがかかっていたので、だいぶきつかったですけど、選手が頑張ってくれた」

 武相高は過去に夏の甲子園に4回出場も、すべて1960年代で、68年を最後に遠ざかっている。「古豪復活」を託されたのが、豊田監督である。20年6月末まで指導した富士大(岩手県花巻市)では、北東北大学リーグで最長記録となる10連覇を遂げるなど、西武・山川穂高、外崎修汰らを育成した。

 大学野球から高校野球への転身も、一筋縄にはいかなかった。この春の県大会で対戦した相洋高、立花学園高、横浜商高、そして、日大藤沢高は練習試合を組む間柄である。

「就任当初は10点差、20点差をつけられて当たり前。毎回、ワンサイドでした。自分でも想像できない。ウチは正直、エリートはいないですから。中学時代に注目されていた選手は(2年生捕手の)吉崎(創史)ぐらいじゃないですか……。あとのレギュラー陣は中学時代に目立った実績のある選手はいません。よく頑張って、ついてきてくれました」

「練習の賜物だと思います」



2020年8月から母校を指揮する豊田監督[左端]。熱血指導が実を結んでいる[写真=田中慎一郎]

 なぜ、苦節4年で激戦区・神奈川で上位進出を果たせたのか。2つの要因がある。

 まずは、練習への姿勢。

 グラウンドは張り詰めた空気が流れ、全力疾走、全力発声を徹底している。常日頃から公式戦を想定したキビキビとした動きをしているから、試合会場で浮足立つことはない。

「ウチは9イニング勝負。常に言い続けていることです」。横浜商高との4回戦では3点ビハインドから逆転。日大藤沢高との準々決勝も2回表に3点を先制されたが、3回裏に打者一巡で一挙5点の大逆転劇を見せている。

 次に練習の質。

 準々決勝でリズムを大きく変えたのは6回表の日大藤沢高の攻撃だ。無死二、三塁。三塁線の鋭い打球を三塁手・渡辺羽音(2年)がダイビングで好捕、飛び出していた三塁走者を封殺した。次打者の場面(一死一、三塁)では、八木が意表を突く巧みな一塁けん制でアウトにしている。その打者を遊ゴロ抑え、相手に傾きかけたムードを食い止めたのだ。八木は「練習をしてきたので、合わせてできた。自信を持ってできた」と胸を張った。

「大学で野球をやってきましたので、一つの流れを変える1プレーに対して、時間をかけて取り組んできました。けん制以外にも、バントシフト、バント処理……。大学、高校もそこの大事さは変わらない。これまでずっとやってきた、練習の賜物だと思います」(豊田監督)

 昨秋は桐光学園高との県大会4回戦で、延長10回タイブレークで惜敗(3対4)した。

「9月17日に負けたその次の日から、今日という日を目標にあきらめずにやってきた。昨秋から出場している選手も変わらず、あの悔しさを下に成長してきました」(豊田監督)

 次戦、準決勝(5月3日)で勝利すれば、40年ぶりの関東大会出場である。

「4年目でベスト8が初めて、ベスト4も初めて。僕自身、横浜スタジアムにも初めて行くので……(苦笑)。関東大会と言われても、イメージが沸きません。次の向上高校さんに向けて1週間をかけて、選手と一緒に対策して、研究していきたい。もう1回、準決勝へ向けてベストを尽くしたいと思います」

 あくまでも、無欲を強調する豊田監督。愛する母校の「古豪復活」の過程に、気負いはない。準決勝まで中5日。神奈川県高校野球のメーン会場・ハマスタで、練習の成果を発揮するだけである。

文=岡本朋祐
 
   

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