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本玉真唯にとっての「テニス人生で一番大きい決断」――新たな環境とコーチの下で世界トップ50に挑む<SMASH>

THE DIGEST

本玉真唯にとっての「テニス人生で一番大きい決断」――新たな環境とコーチの下で世界トップ50に挑む<SMASH>(C)THE DIGEST
「1回戦から、緊張しちゃいましたねー」と、本玉真唯は安堵を言葉に滲ませた。

 東京・有明コロシアムで開催されている女子テニス下部ツアー「安藤証券オープン」(4月22日~28日)は、ITFカテゴリーでは最上位の大会。トップ100、そしてパリ・オリンピック出場を狙う現在118位の本玉にとっては、是が非でも上位進出したい大会である。そして今年4月から所属先が安藤証券に変わった彼女にとって、冠スポンサー大会にエースとして挑む立場でもあった。

 本玉が安藤証券所属となった背景には、同社の所属コーチである、原田夏希に師事し始めたことがある。全米オープン後の昨年9月、本玉は奈良くるみのツアーコーチを長く務めた名コーチの門を叩いた。それは彼女が、約7年間師事し続けた元世界24位の神尾米の下を、巣立った瞬間でもあった。

「甘えてたんですよね、ヨネさんと、コーチのジャイミー(比嘉ジャイミー幸男)さんに」

 今でも神尾たちに話題が及ぶと、本玉は過去を懐かしむような、柔らかい顔になる。
  本玉のプロキャリアにおける最初のブレークは、2年半前の2021年秋。シカゴのWTAツアー500大会で予選を突破し、ベスト8へと躍進した時だ。この年の年末に、ランキングは150位に到達。22年3月には、当時の自己最高位の126位にまで上昇した。さらに同年のウインブルドンでは、予選を突破しグランドスラム本戦初出場。トップ100定着も目前かと思われた。

 だがこの頃から本玉は、「ランキングが下がるのが怖くなった」と打ち明ける。ランキングポイントを守りたいという心持ちは、プレーにも反映される。「もっとポジションを上げ、ネットにも出るなど攻撃的に行くべき」という神尾たちの言葉を、頭でわかっていながらも行動に移せない日が続いた。

「できない自分が認められないというか、ヨネさんたちに……申し訳ない。それも甘えてたんだと思うんですけど、もうできなかったんですよ、その時は。自分の中では、やろうとしてるんだけど、できない。いつも気持ちが後ろ向きだったので」

 そんな彼女の胸中を知る恩師たちは、あえて新しい環境に移るようにと、愛弟子の背を推した。「お嫁に出すようなものだから」――そんな言葉と共に。
 「そんなこと聞いたら、やらなきゃいけないってなりますよ。その時に覚悟が決まったというのが、本当に自分の中でターニングポイントでした。その時に、(原田)夏希さんにお願いできたというのは、私にとっては多分テニス人生で一番大きい決断だった。夏希さんも、ヨネさんたちと同じようなことを言ってるけれど、違う言い方でアプローチしてくれた。私はもう、トライしなきゃいけないって心に決めていたので、そういうのがうまく一致して、今があると思います」

 原田に師事し始めてから、約7カ月。今の本玉は、「私の武器」と自負する脚力を生かし、左右のみならず前後に動いて、ボレーやスイングボレーでとどめを刺す。縦横にコートを駆け、宙を舞うように跳び上がりボールを打つ姿は、躍動感に溢れている。

 さらに昨年末以降、大きくメスを入れたのが、サービスだ。それまでの本玉は、身体が正面を向くのが早く、「ボールを押す」ようなサービスになっていた。それを、身体の回転を生かして打てるように、段階的に変えていったという。

「昨年末のオフシーズンに、まず足を軸足に引き寄せるフォームに変えました。その後の2月、日比野(菜緒)さんに負けた試合で、すごくダブルフォールトが多かったので、『これじゃダメだね』ということでグリップを変えました。握りをかなり薄くしたので、最初はうまくいかなくて…。まずはスピン系からトライしよういうことで、3月から4月のアメリカシーズンはそこに取り組み、段階を踏んで今はフラットも打てるようになってきました」
  その効果は確実に、今回の安藤証券オープンでも発揮されている。2回戦の小池愛菜戦では、ファーストサービスが入れば89%の高確率でポイントを獲得。セカンドサービスでも62%のポイント獲得率を記録し、相手に許したブレークポイントはゼロ。「サーブに助けられる場面も多かった」と、6-1、6-4の快勝を振り返った。

 勝ち星やランキングも「気にならないと言ったら嘘になる」が、今の本玉はそれ以上に、自分の成長を感じている。そして、出会ってきた人たちの縁や想いに導かれ、今の自分があることも。

「本当に、皆さんに感謝しかないです。送り出してくれた米さんたちや、今こうやって指導してくれる夏希さんにも。全てを私に教えてくれていることに、すごく感謝しています。だから自分は、みんなを信じ、なおかつ自分も信じて、やり続けるしかないなって」

 その決意と覚悟の先に、「今季の目標」であるツアー優勝と、トップ50がある。

取材・文●内田暁

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