もう三十数年以上も前の話だが、西武園競輪に出かけると必ず見かける、怪しい風体の老人がいた。仲間内では「死神」「疫病神」と呼んでいた。
その老人の髪はボサボサで、髭は無造作に伸び、虚ろな目に度の強そうな黒縁の眼鏡をかけている。夏でも汚れた黒いコートを着て、背中を丸めて場内をウロついていた。ただ、薄汚れてはいるが、黒ずくめの姿にはどこかインテリ風な品の良さがあった。
オンボロは世を忍ぶ仮の姿か…。老人は誰に言うともなく、ブツブツ呟く。
「2-3、2-3、2-3」
これには「また死神に会っちゃったよ」「なんて言ってた?」と、同行者と言い合いながら、気にはしていた。死神の老人が呟くのは当たらない不幸車券だから、買ってはいけない。まさか自分は不幸車券を買っていないだろうな、と車券を見る。
広告の後にも続きます
それにしても、あの老人は何をしに来ていたのか。そして何者だったのか。
そのうち姿を見かけることはなくなったが、西武園に出かけると今でも必ず思い出すのは、あの「死神」だ。
前置きが長くなったが、4月20日、西武園競輪場で開催の第74周年記念、GⅢ・ゴールド・ウイング賞の2日目に出かけた。
4月30日からは福島・いわき平競輪場でGⅠ・日本選手権競輪(競輪ダービー)が行われる。ダービーの3日目、5月2日にはいわき平でユーチューバー2人とトークショーをやることになっているので、ダービーにも出走する有力メンバーを現場でチェックしておくのが目的だ。
トップレーサーのS級S班(9人)は5人が斡旋されたが、古性優作が家事都合で欠場、2日目に脇本雄太が全治7日間の腰痛で欠場となった。