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世界最古?古代エジプトの「聖水自販機」とは

日刊ホントの話

「世界最古の自動販売機はいつ頃に誕生したのか?」に思いをはせてみると、「早くとも産業革命が起こった18世紀頃?」「いや硬貨の判別は難しいからもっと時代が下がって19世紀や20世紀に入ってから?」などと思われるのではないでしょうか。


 しかし、世界最古の自動販売機は、実は紀元前215年頃の古代エジプトに誕生していたといわれています。

●世界最古の自動販売機の仕組み

 世界最古の自動販売機は、アレクサンドリアで活躍した古代ギリシアの数学者にして技術者でもあったヘロンの著書『気体装置』のなかに「ヘロンの聖水自動販売機」(以下「聖水自販機」)と呼ばれる、硬貨投入口から硬貨を投入すると一定量の聖水が出てくる装置として紹介されています。

 「聖水自販機」の仕組みは、(1)聖水自販機の上部の口から5ドラクマ硬貨を入れる、(2)入れた硬貨が内部の受け皿に落ちる、(3)受け皿と繋がっている蛇口の弁が「てこ」の原理で開き聖水が出る、(4)受け皿から硬貨が落ちて弁が閉まると蛇口から聖水が出なくなる――となっています。

 なお、以上のような硬貨の重みと「てこ」の作用を利用した「聖水自販機」の仕組みは、実は現代の水洗トイレのトイレタンクの仕組みと同じです。

●イギリスから世界へと普及した自動販売機

「聖水自販機」以降、自動販売機と呼べるような道具が登場するのは、17世紀初頭のイギリスまで時代が下がります。1615年頃にイギリスの旅館経営者が発明した嗅ぎタバコの自動販売機は、真鍮製の箱の上部のふたについてる穴に半ペニー硬貨を入れると蓋が開いて中のたばこを取り出せるという仕組みになっていました。

 ただし、この自動販売機には自動的に蓋を閉める機能はなく、一度箱を開けると自由にタバコを取り出せることやふたを閉め忘れると後の人もタバコを取り放題であったことなどから、利用者の良心を期待して「正直箱(Honour box)」と呼ばれました。なお、「正直箱」は、現存する世界最古の自動販売機とされています。

 19世紀に入ると、産業革命を経たイギリスでは、様々な自動販売機が考案されました。自動販売機の基本的な技術もこの頃に開発され、鉄道乗車券、菓子、タバコ、ハガキなどで実用化されました。同時に自動販売機の技術は世界中に広がり、シェアも世界規模で拡大していきます。

 1857年には「切手と収入印紙」の自動販売機を発明したセミアン・デンハムが、世界で初めて自動販売機の特許を取得。さらに、1925年にはウィリアム・ロウによって、異なる価格、複数の商品から選んで販売できるタバコの自動販売機も作られました。後者は、近代的な自動販売機のルーツになったといわれています。

●日本での自動販売機の普及と多様化

 自動販売機の普及は日本にもおよびます。現存する日本最古の自動販売機は1904年に発明家・俵谷高七による「自動郵便切手葉書売下機」です。「売下機(うりさげき)」と名付けられた切手と葉書の自動販売機は、ポスト機能も兼ねたアイデア製品でした。

 その後も日本では多種多様な自動販売機が開発されたり導入されたりすることにより、全国各地に普及していきました。

 ちなみに、飲料自動販売機の本格的な普及は、1962年にアメリカの大手飲料メーカーの日本への本格進出がきっかけとなりました。また、1967年に100円硬貨が改鋳されたことによる硬貨の大量流通によって、乗車券自動販売機の導入が本格化しました。そして1974年頃から日本特有の「ホット&コールド機」が普及したといわれています。

 現在の自動販売機は、硬貨や紙幣を使わないキャッシュレスも普及し、販売される商品もさらに多様化しています。最古の自動販売機に思いをはせた後は、ぜひ最新の自動販売機も体感してみてください。

<参考文献・参考サイト>
・『自動販売機の文化史』(鷲巣力著、集英社新書)
・『図解古代・中世の超技術38』(小峯竜男著、ブルーバックス)
・『集英社世界文学大事典』(集英社)
・『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)
・世界最古の自販機は古代エジプト、神殿で聖水を売っていた?現存する日本最古は?
https://globe.asahi.com/article/14869221
・自販機の歴史│一般社団法人 全国清涼飲料連合会
http://www.j-sda.or.jp/vending-machine/rekishi.php
・実は歴史が古く、仕組みとイノベーションの宝庫|「自動販売機の始まり」の歴史
https://www.shisaku.com/blog/anatomy/post-61.html

 
   

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