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“最速161キロの清宮”がデビュー!3試合の一軍登板で得た手応えとは?<SLUGGER>

THE DIGEST

“最速161キロの清宮”がデビュー!3試合の一軍登板で得た手応えとは?<SLUGGER>(C)THE DIGEST
 スマホの画面上に映し出されていた育成契約の選手に、記憶はあったとはいえ、知っているという存在ではなかった。

 2021年2月ごろ、日本中で瞬間風速的に流行になった音声アプリ『clubhouse』でのことだ。筆者らが立ち上げたルームに入ってきたNPBの育成選手とちょっとした野球談義をした。当時の彼はトミー・ジョン手術をしたばかりだったから、その背景を聞いたのと、「頑張れよ」と声をかけたくらいの印象だ。

 彼の名は清宮虎多朗。

 姓は「セイミヤ」と読む。高校通算107発のスラッガー清宮幸太郎(日本ハム)が高校野球を騒がした翌年の、18年ドラフトで楽天から育成1位指名を受け、ちょっと話題になったこともある。

 そんな清宮が今年4月に支配下登録された。さらに、クローザーを務める則本昂大が感染症特例で登録を抹消されると一軍登録を果たし、すでに3試合に登板している(則本の復帰に伴って4月23日に抹消された)。
  清宮はえげつないボールを投げている。最速は161キロ。190センチの高身長から投げ下ろされるから魅力いっぱいだ。

「すいません、覚えてないです」

 かつての『Clubhouse』でのことを本人に当ててみたところ、正直にそう答えたが、話を進めていくと「ちょっと思い出してきました」と少し笑みを見せた。

 19年に楽天入りした清宮はルーキーシーズン、二軍でも登板はなかった。2年目には4試合、8.2回の登板ながら12三振を挙げる大器の片鱗を見せている。しかし、その細身の身体から豪快に投げ抜く投球スタイルはやはり肘に負担がかかり、靭帯を損傷。手術を受けることになった。

「高卒1年目は身体のことや、トレーニングについて何も分からない状態でした。3年目にそういう形で怪我して、いろいろ身体について勉強もしたし、その期間が成長させてくれました。(怪我をしたことは)失敗でもあり、成功でもありという感じで充実した時間ではあった。しんどかったですけどね」

 手術を受けてからの日々は過酷だったと話す。至近距離からボールを投げることから始まっていくリハビリの工程は、経験したものにしか分からない苦労があるという。ただ同時に、身体についてより知ることができるようになった。それぞれの部位の働きや、怪我をしないためにはどのようなことが必要で、そのためにどうトレーニングすべきか。怪我したことの意味は、より自分を知る第一歩と言えるかもしれない。
 「食事面とかもそうですし、肩・肘のコンディショニングを作るメニューなどは、自分の中では決めています。ただ一概に、それをすることだけが自分を良くするわけではないので、いろいろ取捨選択して、その時に合わせたことをいろいろやっています」。

 支配下登録を経てのデビュー戦は、「ふわふわしていて何が起きているか分からない状態」と笑った。3登板で計4失点を喫し、決して良い出来には見えなかったが、清宮の中では見えてきたことも多いという。

「2登板目と3登板目は良い緊張感を持って投げることができました。失点しましたけど、自分の中ではそんなに悲観的になるような内容ではなかった。一気にドーンとするような結果は残せなかったですけど、着実に成長する姿を見せて、接戦の試合で投げられるようになりたいですね。今はファームで経験できないことが新しく見えてきて、まだまだ課題がたくさんあるなって思い知らされている段階です。それを一つずつクリアしていく。才能があるわけじゃないので、毎日、うまくなっていこうと思っています」

 課題は安定感だ。最速161キロ、150キロもコンスタントに投げられるが、自身でも調子の波を感じている。「ストライクゾーンに強い真っ直ぐを投げる。そこから次の段階が見えてくるのかな」と目の前にある課題と向き合う。強くないまっすぐでは意味がなく、かといってコントロールが悪くともいけない。まずは腕を振ってストライクを投げ込む。
  清宮が将来目指すところはリリーバーの頂点、クローザーだ。今は勝敗とはおおよそ関係のないところでの登板という位置付けだが、本人も期するところはある。

「もちろん、やるからにはそこは目指していきたい。ただ、今はまだまだです。ダークホース的な存在ですけど、自分のチームの中継ぎ陣をドキドキさせるような存在になりたいですね」。

『Clubhouse』で出会った時は、まだ名もなき育成選手だった。

 清宮(セイミヤ)虎多朗が、いつの日か、うねり上がるストレートを武器に、パ・リーグの名クローザーの地位を確立している日を楽しみにしたい。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。

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