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女優、ハ・ヨンスが朝ドラ『虎に翼』に出演「作品に出演したことが、一個のいい“根”になる」

Walkerplus

2024年4月1日から放送中の、伊藤沙莉さん主演のNHKの連続テレビ小説『虎に翼』。日本史上初めて法曹の世界に飛び込んだ、一人の女性の実話に基づくオリジナルストーリー。映画『恋愛の温度』やドラマ『モンスター』、韓国版リメイク『リッチマン』など数々の作品に出演した韓国の女優、ハ・ヨンスが日本に活動を移して、この朝ドラに出演。法律の道を志し日本に渡ってきた留学生「崔 香淑(さい・こうしゅく/チェ・ヒャンスク)」を演じる。そんな彼女に朝ドラへの出演の意気込みや日本での生活に付いて話を聞いた。

■「出演が決まったのは、演じる香淑と韓国から日本に来た私の立場が似ているからじゃないかと思った」

――まずは、連続テレビ小説「虎に翼」に出演が決まった時の気持ちを聞かせて下さい。

最初は本当に私でいいのって思ったんです。もちろん演技の経歴は、韓国ではもう10年以上と長いですけども、日本語で演技したことが経験ゼロですし、スターの登竜門とも言われている朝ドラに、私が出ても本当にいいのかと思いました。今の日本語の実力で大丈夫かなという不安が一番大きかったです。

でもずっと仕事を待っているタイミングで、今後私に日本語で演技するチャンスが来るかもわからないですし、不安な気持ちももちろんあったんですけどやっぱりうれしくて、こうなったらとりあえず自分ができる限り、自分のことが恥ずかしくならないように、精一杯頑張ってみようと思いました。結構こだわりもあるし、完璧主義みたいなタイプなので、自分で自分を持ち上げて頑張ろうって気合を入れました。

――今回、出演が決まった理由はご自身で何だと思いますか。

朝ドラは役者の皆さんがみんな出たいので、100%オーディションだと勝手に思っていて本当に緊張してたんです。でもそれが制作スタッフの方との顔合わせと聞いて、もっと怖いんじゃないか、どうしようと思って行ってみたら、本当にお話だけでしたので驚きました。

監督を始め、他の制作スタッフの方もいらっしゃってて、その雰囲気だけでプレッシャーを感じたんですけど、私に決めた理由は多分、どれぐらい日本語を話せるんだろうかというのが一番だったと思っています。

それと、演じる崔 香淑(さい・こうしゅく/チェ・ヒャンスク)と韓国から日本に来た私の立場が似ているからじゃないかと。私も新しい挑戦を始めたばかりだから、被って見えるところが多かったんじゃないかと思っています。

――境遇が似ているので、今のハ・ヨンスさんじゃないと演じられない役柄と言えますね。

自分としても気持ちを込めることができます。本当にリアルな気持ちで演じられると思います。

――演じる崔 香淑は「主人公が通う明律大学に法律を学ぶため朝鮮半島から渡ってきた留学生」とのことですが、役柄について詳しく教えてください。

香淑は、ちょっとおとなしい性格です。でもめちゃくちゃ暗い感じではなくて、よく笑うし、食いしん坊でよく食べます。周りの空気を読むのが早くて、困ってたりとか何か事情がありそうなことをすぐに感じ取る洞察力がすごいあるタイプです。そんなにお喋りやじゃないけれど、みんなの表情とか状況を見てて、動くのがすごく早いんです。

――役作りのために準備したことはありましたか。

弁護士を目指してる役だから実際に韓国の裁判を見に行きました。民事も刑事も見たんですけど、ちょっと心がつらかったです。弁護士の友達に話を聞いたんですけど、裁判が始まったら弁護士は本当に依頼人と一緒にならないといけない、自分が裁判に勝って嬉しかったときのこととかいろんな経験を聞きました。弁護士になるまでの苦労もぜんぶ聞いてメモしました。自分の経験みたいな気持ちになって泣きながら話を聞きました。

――弁護士のリアルな体験を吸収してから役作りされたわけですね。ハ・ヨンスさん自身は崔 香淑と似てますか。

早く早くみたいなタイプで似てると思います。韓国人は何でも早くっていうところはあるかもしれません。例えばバスも、日本は止まってからゆっくりバスから降りて、ゆっくりドアが閉まってゆっくり出発するとしたら、韓国ではもう止まる直前にドアの前まで行って、ドアが開いたらすぐに降りる、降りると0.1秒ぐらいでドアを閉めるぐらい、本当に何でも早いです。そういう環境で育ったから、周りを見て空気を読むのは結構早いと思います。後は食いしん坊だし、日本でお茶を飲んだり、コーヒーを飲みに行ったり、うどんとかそばが好きだから美味しいお店を探したりしているところも香淑とは共通点だと思います。

――逆に香淑と違うところはありますか。

香淑と違うところは家族だと思います。私は両親がちょっと早めに離婚しちゃって、母とふたりでの生活を長くしてました。香淑は日本にやってきていろんな大変なことがあったとは思いますけど、家族は完璧な状態でいるのでそこが違います。自分も生きていくなかでいろんな人生の波があったので、演技するときに気持ちを込められるんじゃないかなと思っています。

――どんなふうに演じていこうと思いましたか。

時代設定があるドラマは韓国も含めて初めてなんです。この前撮影した香淑は20代だったので、ちょっとほっぺがふっくらしているのが普通だと思い、意識して食べなかったりはしなかったです。戦後の香淑を演じるためには痩せようと思ってダイエットもしてます。戦後はご飯を食べることも難しかったと思うので、そこに合わせて香淑の状況と気持ちにもっとより近寄っていきたいと思っています。

表情も20代の香淑は大学のみんなとワイワイしたりしていると思うんですけど、戦後は落ち着いてると思うので、自宅で自分を撮って、こうしたらもっと年齢がいった人に見えるかもみたいなことをチェックしたりしてます。

――演じる上で難しかったことはありましたか。

食べながら台詞を言うシーンがあるんですけど、ちょっと難しくて。もっと口の中にたくさん入れたかったんですけど、台詞が言えなくて、台詞の方が大事だったので、入れられなかったのが残念だったんですけどこれからも頑張ります。ネイティブじゃないのでやっぱり口の中にたくさん入れちゃうと不安になるから、気遣いながらやったというところもあります。

――演じる役のヘアスタイルや衣装について教えてください。

当時はあんまりシャンプーとかできなかったと言われて、この髪型で寝ていたことにびっくりしました。自分でよくここまでスタイリングできると思うぐらいセットした髪型で、後ろを見たら、すごいディテールにもうびっくりして。このヘアスタイルを誰が始めたんだろうと思って感動しました。

洋服は、皆さんは着物とか和風の服を着ていらっしゃいますけども、私は外国人ですので普通に洋服です。香淑はそんなにお金に余裕があるみたいな設定ではないので、同じ服を何回も繰り返し着て登場します。多くて5着ぐらい、靴も1足しかなくてずっと同じ靴を履いてます。眼鏡も多分、ずっと同じ眼鏡だと思います。

■「失敗するかもしれないけど、でも行動しなかったら、永遠に後悔するのが嫌だなって思ってやってみようと思って日本に来ました」

――こうしてインタビューしていても日本語が上手だと思いますが、どうやって勉強されたのですか。

誰かから学んだわけではなく独学で覚えました。とりあえず言葉ができないから、家で1人でやってみようと思って、そこから半年ぐらい日本語を始めたんです。毎日、10時間ぐらいアニメばっかり見たり、映画を見たり、シャドーイングしながら真似して、耳の中に入れてちょっとずつ慣れていったという感じで勉強しました。

韓国語がうまくてネイティブ直前まで話せる、娘が1人いる日本人の友達がいるんですけど、彼女にいろいろ聞いたり、たまに連絡取ったりしてて、ちょっと助けてもらって、半年以内に日本語がだいぶ良くなってきて、これぐらいだとしたら、このペースで、もしかしてずっと続けたら、日本で日本語で演技できるかもって勝手に判断しました。日本で、病院にもひとりで行かないといけないし、生きていかないといけないので、毎日、単語一個でも日本語を勉強しています。

――話は変わりますが、日本に活動拠点を移した理由を教えて下さい。

イ・ビョンホン先輩やハン・ヒョジュ先輩たちがいらっしゃる大きな事務所に私も20代から所属してたんですけど、特にハン・ヒョジュ先輩が日本で活動し始めたのを見て、私も羨ましく思ってました。元々、演技じゃなくて絵を描いたり、アニメの制作を目指していて日本に興味があったし、日本で仕事してみたい気持ちもあったんです。演技を始めてからその気持ちはずっとあって。でもやっぱり私が日本で活動したいと言っても、先輩よりはだいぶ経歴も短いし、「日本語でどうやって演技するの」と言われて納得しちゃってました。でもどうしても行きたくて3回ぐらい言ってみたんですけどその度に断られて、20代では日本に行くことができなくて諦めたんです。それから10年が経っちゃって、自分の国で長く活動してみて、もしかして今であれば日本で活動できるかなと思って。

試験を受けて学校に入って美術を学ぼうか、演技をするかどっちにしようか悩んでたんですが、とりあえず日本に行ってからいろいろ調べて決めようと思って。事務所を調べてツインプラネットさんに入りました。今じゃなければもうだんだん遅くなるし、40代に来るよりは30代に来るのがいいんじゃないと思って。失敗するかもしれないけど、でも行動しなかったら、永遠に後悔するのが嫌だなって思ってやってみようと。自分が行動しなかったら、自分の人生って何も変わらないと思いました。

――行動力がすごいですね。韓国の輝かしいキャリアよりも、日本で活動したいという気持ちの方が勝ったということですね。

役者はいつも輝いているのかというとそうでもないと思います。1人で作品を作れる存在でもないし、周りの皆さんがいらっしゃらなかったら私なんてホコリみたいな小さな存在だと思っています。だから、自分のキャリアなんてすごくないと思っています。

――日本での生活にはもう慣れましたか。

生活的には難しいです。韓国も物価は高いですけど、日本はもっと高いと思いますし、電車の乗り換えでお金を払うのもびっくりしました。バスと電車は韓国は乗り換え無料なんです。駅がすごく広くて、たまに渋谷とか新宿とかで迷子になったり、道を間違っちゃったりする大変さもありますね。

本当に良かったと思うのが、うどん、そば、焼肉があることです。すごく好きでそれがなかったら日本に住むのは無理だったかも。自分の好みですけど、韓国より日本のお米の方がおいしいなと思ってて、お寿司も韓国で握ったものよりは日本のお寿司の方がおいしいって思っちゃいます。韓国料理で好きなのはテンジャンチゲという味噌チゲが好きで、一緒に焼肉とご飯を食べますね。あとは、日本でいうとラーメンに近いイメージなんですけど、モヤシを入れたクッパが好きです。プルコギもよく一緒に食べます。

――この作品に出演した後、自分自身が変わりそうな予感がしますか。

去年の9月下旬ぐらいから撮影が始まって今でも続いてますけど、何月に撮影が終わるかはまだわからないんですよ。去年の私と今の私を比べたら、だいぶ成長していると思っていますし、もちろん終わったらさらに心も気持ちも、演技に対する自分の思いももっと深くなって成長するんじゃないかと思ってます。

自分の国の言葉で演技するわけじゃないし、日本語で演技することがすごく心配だったので、どうしてもセリフだけを頭に入れて出すみたいになっちゃうと、本気じゃなくなるじゃないですか、だから、日本語のこの1個のセリフがあるとしたら、どんな方法を使ってもいいから、自分のものにしてからセリフを言いたいって思って、ずっと練習してきました。やっとちゃんと喋れるようになってきたし、自分のものになったかもみたいなタイミングが何回も来て、だいぶ成長してるなと思います。

韓国語でも日本語でも、演技する上で人間の気持ちは本当に山ほどいろんな種類があると思うから、一生命をかけてやっても難しいんじゃないかなって。めっちゃ広い宇宙のなかにある気持ちをいつも悩んで探して、これかなって選んでやっててもやっぱりちょっと違ったかもみたいな、役者としての悩みはずっと続いてるし、これからどんなに長く演技を続けても完璧にはならないかもって思ってて、いつも心配でプレッシャーがあります。どんなに頑張ってもまだまだだなって思ってて、作品が終わったら成長してるとは思いますが、さらにそれからももっと成長しないといけないという気持ちは正直あります。

この作品の中で本当に恵まれてると思うのが、役者の皆さんが本当に素晴らしい方たちだし、演技も本当にすごいし、監督さんも皆さんも本当に優しくて、私が不安になって質問したりしても、本当に優しく答えてくれることです。自分の事を植物だとしたら、この作品に出演したことが、一個のいい“根”になると思います。“根を張る”の“根”です。

――常に前向きに成長していこうとするハ・ヨンスさんの気持ちが伝わってきました。ところで、今日の私服のポイントを教えて下さい。

今日は曇っていたので、ちょっと色味あるものを着ようと思って、紫を選びました。天気を考えてコーディネートしてみました。ワンピースが紫で色が濃いから、ちょっと色が弱いジャケットをマッチしようと思い用意してきました。

――本当に素敵だと思います。最後にメッセージをお願いします。

まだ日本に来て2年しか経ってないんですけど、いつもマスクもしてないし、電車にも普通に乗っています。韓国での活動で私のことを覚えてくださっている方が、たまに「ハ・ヨンスさんですか?」と声をかけてくださったり、SNSに応援のコメントをしてくださることを本当に嬉しく思っております。

これからの人生は長いので、もっと日本語を頑張って、さらに皆さんに私が思っている気持ちとか、目指しているところとか、自分の価値観をちゃんと伝えて、恥ずかしくない俳優になるよう、誇りを持てる人になるように頑張りたいと思います。応援する価値がある人になりたいし、私もファンの皆さんに少しでも笑う瞬間をあげられる、そういう存在になりたいと思ってます。これからも頑張るのでぜひ応援してください。そして朝ドラをご覧いただきたいと思います。お願いいたします。ありがとうございます。

取材・文・撮影=野木原晃一
 
   

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