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日本は“AI企業の楽園”なのか? Open AIの東京オフィス開設から考える

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 もっとも、これらのケースは著作物と極めて酷似した出力を得るという、言わば「盗作」を明確に意図しなければ生じないと考えられる。

■他の先進諸国はAI開発に厳しい 訴訟や規制の対応に追われるAI企業たち

 日本以外の先進諸国におけるAIと著作権にめぐる現状は、厳しいものとなっている。たとえばOpenAIは、本社のあるアメリカにおいて著作権侵害を主張する訴訟にさらされている。

 アメリカ大手メディア『NEW YORK TIMES』は2023年12月27日、同紙の記事を許可なくAI開発に利用したとしてOpenAIとMicrosoftに対して訴訟を起こした(※3)。提出された訴状には、GPT-4が同紙の記事のほぼ全文を出力する事例が挙げられている。この訴訟に対してOpenAIは、学習データの一部が原型をとどめて出力される“逆流”現象は極めて稀なバグである、と2024年1月8日公開の公式ブログ記事(※4)で反論している。

 EU圏では2024年3月13日、AIリスクからEU圏内住人を保護する目的をもつAI規制法が欧州議会で承認された(※5)。同法はAI開発における透明性を定めており、汎用的AI開発においては学習データの詳細な要約を公開しなければならないとしている。

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 同法における汎用的AIとは、社会に対して大きな影響力をもつか、欧州委員会等が汎用的AIと判定したAIとされており、今後開発される、GPT-4やGoogle Geminiを超えるようなマルチモーダル基盤モデルが該当する可能性がある。

■理由2:日本はAIにフレンドリーな先進国? 国民の肯定的な目線

 OpenAIが日本に進出した理由として、日本がAIに対して友好的な国であることも挙げられる。この論点は、昨年同社のアルトマンCEOが来日した際にも言及されたことであった(※6)。

 世界各国のAIに対する世論を知る格好の資料として、アメリカ・スタンフォード大学が2024年4月15日に発表した「AI Index Report」がある(※7)。同レポートの第9章「大衆の意見」には、「AIを活用した製品とサービスは、利益が不利益を上回っている」というAIをポジティブにとらえる見解に対して、2023年時点で各国民が賛成した割合がまとめられている。

 日本はこの見解に対して52%が「そう思う」と答えており、2022年に同様の質問をした場合と比べて10%上昇している。

 G7に名を連ねる先進国のなかで日本を上回る賛成を得ているのはイタリアの55%であり、日本に続くのがイギリスの46%、ドイツの42%である。そこからカナダの38%のと続いて、一番賛成が少ないのが、アメリカとフランスの37%である。もっとも、先進国すべてにおいて2023年の賛成率が2022年のそれを上回っている。

 以上のように日本は、AI開発の規制が比較的ゆるやかなうえに、国民がAIに対して他の国に比べて友好的な態度を示しているとされている。こうした日本の特徴は、世界からAI開発企業を呼び込む際に有利に働くだろう。そして、国内のAI開発企業には自国の強みを生かして国産生成AIを世界に発信することを期待したいところである。

〈参考資料〉
(※1)朝日新聞電子版「「厳しいAI規制は志向しない」日本政府を評価 米オープンAI副社長」
https://www.asahi.com/articles/ASS4H41HLS4HULFA00RM.html?ref=smartnews
(※2)文化庁「文化審議会 著作権分科会 法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」【概要】」
https://nytco-assets.nytimes.com/2023/12/NYT_Complaint_Dec2023.pdf
(※3)UNITED STATES DISTRICT COURT SOUTHERN DISTRICT OF NEW YORK「Case 1:23-cv-11195」
(※4)OpenAI Blog「OpenAI and journalism」
https://openai.com/blog/openai-and-journalism
(※5)欧州議会「Artificial Intelligence Act: MEPs adopt landmark law」
https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20240308IPR19015/artificial-intelligence-act-meps-adopt-landmark-law
(※6)Real Soundテック「サム・アルトマンCEOの来日に見る、『ChatGPT』を開発したOpenAIの“過去・現在・未来”」
https://realsound.jp/tech/2023/05/post-1321766.html
(※7)スタンフォード大学「AI Index Report 2024」
https://aiindex.stanford.edu/report/

(文=吉本幸記)

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