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「一生懸命にならな損やんか」。誰にでも武器はあると教えてくれた杉原輝雄の勝負哲学【“甦る伝説”杉原輝雄の箴言集①】

みんなのゴルフダイジェスト

「一生懸命にならな損やんか」。誰にでも武器はあると教えてくれた杉原輝雄の勝負哲学【“甦る伝説”杉原輝雄の箴言集①】(C)みんなのゴルフダイジェスト

1960年代から2000年代初頭まで、50年の長きに渡って躍動した杉原輝雄。小柄な体、ツアーでは最も飛ばない飛距離で、当時トーナメントの舞台としては最長の距離を誇る試合で勝ったこともある。2打目をいちばん先に打つのだが、そのフェアウェイウッドが他の選手のアイアンより正確だった。ジャンボ尾崎が唯一舌を巻いた選手で、「マムシの杉原」、「フェアウェイの運び屋」、「グリーンの魔術師」「ゴルフ界の首領(ドン)」と数々の異名をとったのも頷ける話だ。「小が大を喰う」杉原ゴルフ、その勝負哲学を、当時の「週刊ゴルフダイジェスト」トーナメント記者が聞いた、試合の折々に杉原が発した肉声を公開したい。現代にも通用する名箴言があると思う。

勝利に謙虚になることが次への推進力を生む<心の巻1>

――「100点で勝った試合などない。ラッキーばかりで、それを埋めるには練習や。勝ったのではなく、勝てたんや」

これまでに勝利数、54という数字を刻ませてもらっていますが、その全部が勝たせてもらった試合ばかり。いや、謙遜で言うているのではありません。ホンマにそう思っているんです。

というのも、勝った試合のどれもが何かしらのラッキーがあってのもんです。もちろん、ゴルフにおいて完璧はありやしません。ラッキーもまた実力のうちやという言葉も知ってはいます。しかし、ドライバーショットかて240ヤードくらいしか飛ばん人間は何かしらいつも何か足りんと、飢餓感を持ってないとやっていけんのですよ。それにはゴルフに対して謙虚になっていなければいかん。そうしなければ、もっとや! ワンモアや! という気持ちも起きてこんでしょう。勝ってしまったその試合が頂点では、成長はそこで止まってしまいます。

いくつかのラッキーが重なって勝てたんや。だからそのラッキー分、つまり不足分を次にどうやって埋めていくか、これがボクの終生続く課題や思うてます。それには練習しかありません。そりゃ才能豊かな――ジャンボ尾崎選手みたいに黙って振っても300ヤード飛ぶんなら、その財産を守っていっても勝てるやろ。かって尾崎選手が第2打でショートアイアン、ボクはロングアイアンとなることが多かったもんです。その不利をカバーする練習で、技術を磨きかけていかなければ、ボクの生きる道はないんです。

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そやから、勝利した試合を分析して次へのステップをと前向きにならんといかんわけです。そうして見ると、勝った試合は一つもありません。たまたま勝てた、のであって、自らの“力”で勝てた試合などないんや、ということを思い知らされるわけです。

勝負の辞典に「あきらめる」の文字はない<心の巻2>

――「一生懸命にならな損やんか。あきらめたらあかん、粘らなあかん。そうせんと自分が損するだけやないか」

よくボクは小さな体でよう頑張ったなとか、努力を重ねて立派やとお誉めの言葉をいただきます。有難いことやが、誉められることが今だに面映い。

なぜなら、そんなことはボクは自分のためにやったことなんやから。不利な条件をクリアするためには、人の何倍も努力せなゴルフで食べていけんと思ったからやったまでで、賞賛されることなど何もないんやと今でも思うています。そやから、なぜみんな技術をあげるために、そういう時間もあるのにやな、一生懸命にならんのやろと。そうしてくれんほうがボクは助かるんやがね(笑)。不思議や思いますね。やらないと自分が損するだけやないですか。

僕がプロテスト通ったのは20歳のときでした。でもプロになったはいいが、「売れ残り」です。というのもその頃(昭和32年)は新設コースがようけ出来まして、一緒に合格した同僚、以前からいた先輩プロも次々に所属プロとしてスカウトされていきました。残ったんがボクだけでした。あとから聞くと、やはり“五角形スウィング”が不恰好ということで声がかからんかったといいます。そりゃショックで情けのうて……。しかし、今にみていろ、という気持ちで、そこで今まで以上に曲がらんスウィングの習得に励んだ。それが五角形だろうと何角形だろうとかまわんかった。それが後になって生きたと思っています。あの時あきらめてたら、今の僕はありませんでしたね。

現在(取材当時)、ガンでそれに打ち克つためにハードな加圧式トレーニングをやって、杉原はよう頑張るななどといわれますが、これとて自分のため。頑張れるのにやらない、あきらめるのは自分が損することなんです。

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