10人になったU-23日本代表は4-4-1のブロックを組み、CB木村誠二をMF山本理仁に代えて投入。先制点のきっかけとなったサイドを変えるパスを供給した山本には気の毒な交代となったが、予想される相手のハイクロスに対応できる体制に組み直した。
10人になってからも当初は自陣からビルドアップしようと試みたが、GK小久保怜央ブライアンはすぐに全体を押し上げてのロングキックに切り替えている。リードしていたので無理をする必要はなく的確な判断だった。相手陣内でスローインをとったときは、そこから人数をかけてゴールに迫れそうな雰囲気もあった。
ただ、ロングキックを選択したことで攻め手は限定され、相手にボールを持たれる時間は長くなる。技術的には差のある相手ながら、スピードとパワーという相手の武器をどこまで抑えられるか、耐えられるかの流れになっていった。
ボールを持てるようになったU-23中国代表は、両SBを高い位置へ上げる。これに対応して山田と平河悠のSHが引く。攻撃では上がっている相手SBの裏をつくカウンターの担い手にもなれるわけだが、それゆえにかなり過酷なハードワークとなった。サイドではSBが相手2人に対応しなければならない状況になっていたものの、山田と平河の戻りが速く破綻することはなかった。
●A代表と同じメカニズム…
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38分に陶強龍のシュートがバーを叩く。42分にはヘディングシュートをGK小久保がセーブした後、またも陶がヘディングで狙うが枠外。後半にも47分にカウンターのピンチを小久保が鋭い出足で救う。ただ、危なかったのがこの3回くらいだった。
中国はボールを持ってはいるが、日本のプレスがかかるエリアではファーストタッチの不安定さゆえに顔が上がるのが遅く、キックの精度に欠け、テンポが上がらないので寄せきられるなど、パスワークでは崩せない。そのため守備ブロックへの前進を躊躇する場面も多く、余計にチャンスにならない。これは相手の問題だが、一方でそれだけ日本の守備が安定していたとも言える。
問題は強引なハイクロスからパワーで押し切るような攻撃だったが、こちらも高井幸大と木村のCBコンビ、GK小久保が制空権を握って大事には至らなかった。
65分には消耗するSHを藤尾翔太、佐藤恵允に交代。藤尾は巧みなキープからファウルを誘うなど時間を意識したプレーぶり。佐藤の方は少しリスクを冒しても2点目を奪って試合を終わらせようとする。追加点は奪えなかったが、危なげなく試合を終わらせることはできた。
退場者を出すまでのプレーは正確で速く、相手にほとんど何もさせていない。
守備ではトップ下の松木が細谷と並ぶ形で4-4-2のブロック、攻撃ではハーフスペースに引いて4-3-3。この可変の仕方は日本代表と同じメカニズムだ。精力的な守備を基準に選手を選抜しているのも同じ。良い守備からの良い攻撃のコンセプトも同じ。力の差があったことで退場者を出すまでは圧倒していた。
10人になって状況が一変し、そのまま続けられなかったのは残念だったが、1人少ないながらもハードワークと隙をみせない戦い方も見事だった。
(文:西部謙司)
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