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【アーリントンC回顧】マイラーとして開花したディスペランツァ 中距離っぽいレース質に適性あり

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【アーリントンC回顧】マイラーとして開花したディスペランツァ 中距離っぽいレース質に適性あり(C)SPAIA

前後半800mの差は3秒5

アーリントンCは4月に移り、NHKマイルCトライアルになってから、間違いなくハイレベルな戦いが増えた。2018年以降、前後半のラップを比較すると、イーブン、もしくは前傾ラップばかりで、序盤のスピードと中盤から後半にかけての末脚をバランスよく繰り出せないと勝てないレースになり、NHKマイルCへとつながっていった。

唯一、スローだったのはイベリスが逃げ切った19年。そのラップは前後半800m47.4-46.8でレベル的には疑問符がついた。本番で馬券になったのは4コーナー16番手から追い込んだ2着カテドラル(NHKマイルC3着)だった。後半の速力が結びついた形だ。

なんだかんだとNHKマイルC好走馬を毎年送るトライアルは、ペースが緩みがちな阪神外回りマイル戦としては流れることが多いが、今年は前後半800m48.8-45.3と、19年を遥かに上回る超スローペースに陥った。

飛ばしそうな馬がおらず、戦前から速くなる予測はなかったが、ハナに行ったのが最内枠のポッドテオで早々に折り合ったため、先行勢は渋滞になるほど。スピード比べではなく、中距離っぽい折り合い合戦になった。4ハロン目に13.0が刻まれる緩さに力を出せなかったマイラーは多い。

重賞でこうもゆっくりと流れればラスト800m45.3、上がり600m33.2と当然、瞬発力の差とポジションが勝負を決する。これほどの瞬発力勝負を避けたい馬がいれば、また違った展開になっていたか。もう少し手がなかったかと思いたくなるところだが、得てしてこういうときほど動けないもの。折り合った馬を無理に動かすのも難しい。前途洋々な3歳馬たちの未来は壊せない。


マイルも強いルーラーシップ

中距離に近いマイル戦への適性が近かったのが勝ったディスペランツァだ。デビューは夏の小倉芝2000m。そこから2歳暮れのホープフルSまで一貫して2000mを選択し続けた。

ひとつ上の兄は共同通信杯を勝ったファントムシーフ。昨年の皐月賞はこの馬が1番人気だった。一方で、もうひとつ上のルピナスリードは全4勝のうち3勝が1200~1400mのスピードタイプでもあった。ファントムシーフの父はハービンジャーで、ルピナスリードはダイワメジャー。ルパンⅡは父の良さを引き出すタイプのようだ。

ディスペランツァの父はルーラーシップ。現役時代は中距離型であり、産駒も同タイプが基本線も、ソウルラッシュやドルチェモアのようにマイル重賞を勝つ産駒も送る。先日もマスクトディーヴァが阪神牝馬Sを勝った。ルーラーシップはスピードの持続力に長けており、その特性がマイル特有の流れで発揮する。中距離だと切れ負けしても、マイルなら末脚比べで渡り合える。そんなルーラーシップの特性はディスペランツァに色濃くあらわれている。

この春も大暴れのマジックマンことJ.モレイラ騎手は中盤までインコースに潜み、絶妙なタイミングで馬群の外へ持ち出し、オフトレイルの内に素早く入っていった。勝負所と進路を見極める天才特有の嗅覚の鋭さには脱帽する。ディスペランツァも4コーナーから直線半ばにかけての横の動きに反応し、しっかり末脚を発揮できた。快勝だった前走同様、マイルだと明らかにレースに艶がある。NHKマイルCにつながるかどうか難しいペースだけに断言しづらいが、マイラーとしての未来は間違いない。


本番で楽しみなチャンネルトンネル

2着は15番人気単勝176倍のアレンジャーが入り、波乱を演出した。ディスペランツァとは正反対で、マイル付近を使いながら前走で1200mに距離を縮め、浮上のきっかけをつかみ、再び距離を延ばしてきた。前走1200m出走という時点で評価されなかったのは仕方ない。だが、マイルに適性なしと判断するのは早かったか。1200mを走った直後とあって自然な形で先行できた。横山典弘騎手が巧みな重心移動でなだめ、我慢させたことも大きい。とはいえ、超スローの恩恵があったのは事実。今後はもう少し速い流れでも踏ん張れる粘っこさがでれば、おもしろい。

3着チャンネルトンネルはスプリングS4着で皐月賞の出走権を逃した直後に福永祐一厩舎へ転厩し、マイル戦に戻してきた。中距離を経験したため、緩い流れでも折り合いはスムーズにつき、4コーナー出口の立ち回りもきれいだった。今回は瞬発力の差が出たといった感じか。ここまで上がり勝負にならなければマイル戦でもやれる。待望のGⅠ出走権をつかんだ。案外、本番で楽しみなのはこの馬かもしれない。

冒頭で書いた通り超スローペースだったため、3番人気9着シヴァースなど窮屈な馬群で力を出し切れなかった馬たちも多く、負けた馬も次走に向けて改めて見直したいレースだった。


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。

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