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『貴公子』でスクリーンデビューしたキム・ソンホ。名匠と組んだアクションシーンは「一生心に刻まれる」

MOVIE WALKER PRESS

ドラマ「スタートアップ:夢の扉」でサブキャラクターながら一躍注目され、「海街チャチャチャ」で大ブレイクしたキム・ソンホ。そんな彼が映画初出演にして主演を務めた『貴公子』が公開中だ。巨額の遺産をめぐって繰り広げられる壮絶な攻防戦を描く韓国ノワールアクションで、『新しき世界』(13)、「THE WITCH/魔女」シリーズで大絶賛されたパク・フンジョン監督とタッグを組んだ彼に、オンライン取材で作品への思いや見どころを聞いた。

フィリピンで病気の母の治療費を稼ぐため、地下格闘を続けているマルコ(カン・テジュ)。
彼の父は韓国人だったが、これまで一度も会ったことがなかった。そんなマルコの前に、父の使いを名乗る男が現れて韓国に向かうことに。その飛行機の中でマルコは自らを「友達(チング)だ」と呼ぶ謎の男・貴公子(キム・ソンホ)と出会う。美しい顔立ちで不気味な笑みを浮かべる男に恐怖を感じたマルコは距離を置くが、執拗に追いかけられるなか、思いも寄らぬ事態へと巻き込まれていく。果たして、マルコは父と会えるのか?そもそも彼は何のために韓国に呼ばれたのか?そして、執拗なまで追いかける貴公子の目的とは?すべての謎が明らかになった時、マルコにさらなる危機が襲い来る。

■「監督から『時計じかけのオレンジ』の主人公を参考にしてはどうかと提案された」
今回、記念すべきスクリーンデビュー作であり、初主演作として『貴公子』に挑んだキム・ソンホ。その理由は「パク・フンジョン監督のファンだから」だという。

「この作品で描かれる貴公子こと、謎のベールに包まれた男にとても興味を引かれたのですが、そんな主人公をパク・フンジョン監督だったら、どんなふうに撮られるのだろうとシナリオを読みながら想像しました。特に、追跡シーンをはじめ、アクションシーンが得意な監督だけにとても興味がわいて。ぜひこの作品に出演したいと思ったんです」。

敬愛する監督との初タッグに、「緊張感もあったけれど、喜びのほうが大きかった」と満面の笑みを見せる。キム・ソンホといえば、にこやかな笑みが魅力の一つだが、本作で演じる貴公子ではその微笑みこそが、敵か味方かわからない正体不明の人物として謎を呼び、マルコはもちろん、観客すら煙に巻く。

「シナリオのト書きには、貴公子は微笑みを常に浮かべているとたくさん書いてあったんです。監督とキャラクターについていろんな会話を重ねていくなかで、スタンリー・キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』の主人公を参考にしてはどうかと言われて。あの主人公は自分が行っていることに対して善悪の意識などせず、無自覚に楽しんでいる。そんな姿を意識して、キャラクターを作り上げていきました」と明かす。

その一方で、貴公子は序盤からマルコをクルマで追い、自分の足でも走りに走って追い続けるという役どころ。しかも、スーツ姿で激しいアクションシーンに挑まなくてはならなかった。

「おかげでスーツのパンツが破れたこともありました(笑)。でも、スーツを着てアクションをするという素敵な姿を披露できるなんて俳優冥利に尽きるじゃないですか。だから、ベストを尽くして取り組みました。それに何度もスーツを着た状態でアクションをしていたら、何となく生地が伸びたみたいで少し楽に演技ができた気がします」

■「実は高所恐怖症。ワイヤーアクションは怖くて忘れられないものになった」
格闘に接近戦、そして銃撃戦などアクションシーンがノンストップで描かれる本作。そのために、入念に準備し、練習も重ねた。

「例えば、銃に関しては事前に映画会社の準備してくれたフェイクの銃があったんですが、これが実際の銃と同じ重さになっていて、なるべく触ることで少しでも早く手に馴染むように心がけました。また実際に射撃場にも行って何度も練習しました。戦闘シーンでは相手との動線やアクションがきちんと合うように細かくチェックし、アクションに関して万全の態勢で臨めるように取り組みました」。

もっとも苦労したシーンもあったようで、「実は、僕は高所恐怖症なんです。マルコを追って、高い橋の上を走るシーンなど、僕が走っていますが本当に怖かった。もちろん、背中には安全のためワイヤーが付いていますけど、それでも怖くて。忘れられないものになりましたよ」と苦笑いを浮かべる。

■「パク・フンジョン監督が自分が持つ以上の演技を引き出してくれた」
今回、韓国ノワール界の名匠の仕事ぶりを間近で見たキム・ソンホ。その魅力をどう感じたのか。

「パク・フンジョン監督のアクションシーンの演出は、とてもスピード感のあるもので、ある意味、リアルに描かれるアクションだと思いました。実際に息遣いが聞こえ、演じている俳優たちがアクションをするなかで本当にくたくたになって疲れていくような部分までもスクリーンの中に取り込んで緊迫感のあるものにする。だから、観客が目を離せなくなってしまうんだと思いました」。

さらに「やはりノワールの雰囲気を作り出す手腕は、本当に卓越していると感じました。たとえば、会話のシーンであっても、とてもインパクトがあり、緊張感を漂わせる演出をなさる監督だと思います。だから、スクリーンの中にいる俳優たちが自分が持っている以上の力量を発揮できる。僕自身も監督によって、自分が持つ以上の演技を引き出していただいたのではないかと思っています」とも続ける。

2009年に舞台でデビューし、演劇界のアイドルとして抜群のルックスと確かな演技力で人気を誇っていたキム・ソンホ。16年からドラマにも進出し、映画へと幅を広げてきた。そしてデビュー作となった本作では第59回大鐘賞映画祭で新人賞を受賞、さらには、来たる5月7日に開催される韓国のゴールデングローブ賞こと、百想芸術大賞で映画部門の新人賞にノミネートされている。

「賞をいただけたのは、先ほども言いましたが、パク・フンジョン監督の卓越した演出のおかげです。監督の演出によって、僕を輝かせていただいた。また共演者やスタッフの方たちのおかげでもあります。たとえば、マルコ役のカン・テジュさんとは飛行機の中で顔合わせるシーンが初めてでしたが、演技を合わせた時に、『これから一緒に撮っていく撮影が本当に楽しみだな』と感じたことを覚えていて。彼とはとても素敵な撮影ができました。今の気持ちを率直に言えば、本当に幸せで、とても記憶に残る現場になり、一生、このことは心に刻まれていくだろうと思います」。

キム・ソンホにとっていろんな思いの詰まった本作だが、見どころについてこう語る。
「この映画は決して難しい作品ではないんです。緊張感もありますし、スリルもあればサズペンスもあり、迫力もある映画になっています。でも、その合間合間にさまざまなウィットがちりばめられていて、本当に気楽に楽しめる作品です。ぜひ軽い気持ちで見ていただければと思います」。

■「『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』を観て、福士蒼汰さんのファンになった」
この取材は4月、日本でのファンミーティングを控える直前に行われたものだった。いくつか日本についての質問をしたなかで、日本の映画やドラマで好きな作品、あるいは共演してみたい俳優について尋ねたところ、こんな答えが返ってきた。

「福士蒼汰さん主演の『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』を観たのですが、この作品で彼のファンになったんです。将来、もし機会があったら、ぜひ作品でご一緒してみたいですね」という。また、「日本語の勉強を始めたところなんです」と明かしたキム・ソンホ。「日本に行ったら、実際に街を歩いて、日本の皆さんがどんな話をしているのか、聞いてみたいと思っているんです…。でも。この取材中、日本の皆さんの言葉がほとんど聞き取れず困惑しています(笑)」と茶目っ気たっぷりに語った。

次回作はパク・フンジョン監督と再びタッグを組んだドラマ「暴君」。全4話からなるドラマで、『楽園の夜』(21)や「私たちのブルース」の名優チャ・スンウォンと共演し、2024年下半期にディズニープラスで配信も決まっている。「『貴公子』とは全く異なるキャラクターですので、期待していただけるとうれしいです。僕としては『貴公子』に続いて、『暴君』も公開されると思うと、今から心臓がドキドキしているんですよ」と締めくくった。2024年、波に乗り、勢いを増していきそうなキム・ソンホ、その笑顔で世界を席巻してほしい。

取材・文/前田かおり
 
   

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