2人は道を共にすることはなかった。
決別してから少しの時を経て2人はどのような生活を送っているのか。それぞれが「これから」に向けて模索していた。
定子様のおでましです!
今回はなんといってもキュートな姫の登場に触れなければならないだろう。道隆(井浦新)の娘・定子(高畑充希)だ。即位したばかりの一条天皇(柊木陽太)のもとへと入内した。年上の妻となる。
一体、どんな夫婦になるのか……と観ていたが、これがまたかわいい夫婦だ。一条天皇の気持ちをほぐそうと変顔をする定子、特大にかわいい。
そして一条天皇が好きなものは全部好きになりたいという定子。が、虫だけではダメで……というのもかわいい。
かくれんぼをすれば、定子の着物の中に身をひそめる一条天皇もまるっとかわいい。入内前に、道隆ら家族団らんの様子が描かれていたが、穏やかな家族だ。こんな家族で育てば、朗らかな姫が育つのかもしれない。
そんなかわいい夫婦のもとに訪れるのは一条天皇の母・詮子(吉田羊)だ。
若干、定子に当たりが強いような? でも気持ちは分からなくもない。可愛い息子が、妻に懐いている。それもその妻は自分の兄の娘。そして詮子自身は夫・円融院(坂東巳之助)との仲は悪かった。
定子と詮子のシーンは短いながら、いろんな背景が見えてしまう……恐ろしい。
兼家の天下と思われたが
娘を入内させ、道隆は絶好調である。父・兼家(段田安則)が摂政となり、息子たちを分かりやすく出世させたからだが、その存在感を強めている。一方で、兼家には老いが迫っていた。一週、見るのを飛ばしてしまったかと思うぐらいに老いている。実は前の話から4年が経っている。4年が経つと、状況がいろいろと変わってくる。
そして、トップである摂政が心許ないと、にわかに後継者争いが発生する。今の父があるのは自分のおかげだと考えている道兼(玉置玲央)は自分の扱われ方に納得ができていない。そんなふたりを見守る道長(柄本佑)。
少しずつ、道隆らと道長の政に向かうスタンスの違いが出てきており、それが物語の後半に影響を与えていくのだろうと思うと楽しみになってくる。
注目は、民のためを思う政を説く道長を見つめる藤原実資(秋山竜次)だ。あれは完全に「あやつ、なかなかやりよる」の顔だ。
断ち切ったはずの思いが…
変わらず為時(岸谷五朗)に仕事はない。まひろ(吉高由里子)はそんな父にかわって仕事に出ようとするが、身分が低いこともあってなかなか決まらない。世知辛い、生まれながらにしてこんなにも差があるのか、と思わずにはいられない。
そんなまひろの状況を聞きつけたのが倫子(黒木華)だ。倫子にとってまひろは大事な友人。友人を助けたいと思ったのであろう倫子は、自分の家で働いてみてはどうかと提案する。
が、まひろは頷かない。そりゃあそうだろう……倫子の家=道長がいるのだから。すでにほかで仕事が決まってしまった、と言って断るが、なんとはなしにまひろに、文の話を持ち出した倫子。
道長が大事に婿入り先まで持ってきている文がある、と。それは漢詩で書かれている……
まひろが送ったものである。
倫子としては、道長は一度も文をくれずに突然訪ねてきたような人だったので、そういう人だと思っていた。いや、思おうとしていたのかもしれない。でも、文がある事実。
まひろはまひろで、文を大事に持ってくれていたことは嬉しいだろう。しかし、まひろと会ったその足で倫子のもとに向かったのだということを知ってしまう。穏やかなシーンなのに、2人の女性の胸中を想えば、決して穏やかではない。
視聴者としては、道長はかなり感情的になって行動した結果だし、言ってみれば道長の行動の原動力はまひろだ。だからと言って、結ばれるわけでもなく……。なんて複雑なんだ、平安時代。
道長が愛しているのは?
まひろの切ない心中に思いを馳せずにはいられない。が、帰ろうとしたタイミングで道長と出くわしてしまうまひろ。まひろをじっと見つめる道長。それは一体どういう感情が渦巻いているのか……。
ふたりが見つめ合うシーン、その距離感。それだけで切なく、美しい、と感じてしまうのはここまでのふたりを知っているからだろう。
今回は道長と倫子、そしてもうひとり妻である明子(瀧内公美)とのシーンがあった。明子は父が政変で追い落とされ、兼家に対して恨みを持っていた。兼家を呪い殺したい。そんな暗い思いがある。
だからか、道長といるときも表情が重い。子ができた、と言ってもにこりともしない。道長も彼女を無理に笑わせようとする様子は見られない。冷たくもないが、優しくもない。
では倫子に対してはどうだろう。仕事での相談もしているし、娘もかわいがっているようにも見える。が、心の動きが大きくは感じられない。
なのに、まひろと会ったときの心の揺れ幅と言ったら……言葉にしていないのに、想いが伝わってきてしまう。そのまま一緒に逃げ出せたらいいのに、と思うけれど、できないのがふたりである。
生きることに必死なまひろ
道長との出来事があり、自分が生きる道を必死に探ろうとしているまひろ。字が読めなかったせいで子どもが売られてしまう、という場面を見たことで、子どもに文字を教え始める。貧しい子に教えるわけだから、もちろんお金にはならない。しかし、それがまひろのやりがいにつながる。
とは言え、これがまひろの生きる道、とはならないだろう。おそらく、これもまた未来への道となるはずだ。
<文/ふくだりょうこ>
【ふくだりょうこ】
大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーのライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。好きなものはお酒と読書とライブ