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『不適切にもほどがある!』“終わらない”最終回の愛おしさ 連ドラだから許される奇跡

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『不適切にもほどがある!』©TBS

 「いつか終わる。ドラマも人生も。だからそのギリギリ手前までとっ散らかっていいんじゃないかね。最終回が決まってないなんてさ、最高じゃん」

参考:『不適切にもほどがある!』が令和に残したメッセージ ラストに出た予想外のテロップ

  『不適切にもほどがある!』(TBS系)第7話において、脚本家・エモケンこと江面賢太郎(池田成志)に主人公・市郎(阿部サダヲ)が言った言葉だ。

 宮藤官九郎が描いた、ドラマ『不適切にもほどがある!』の最終回は、まさに「終わらない」最終回だった。そしてそれによって描こうとしたのは、「ドラマだからこそ観ることができる希望」だったのではないか。現実は市郎の言う通り「俺と純子の最終回は決まってる」。でも、本作は、最後に、市郎が運命を受け入れ、死に向かっていく姿ではなく、「好きな時代に行ける」タイムトンネルの中に足を踏み出す姿を描いた。そうすれば物語は永遠に続く。

 続編が用意されてようがなかろうが、このドラマの続きは視聴者の心の中でぐるぐると回り続けるからだ。まるで、第10話において、別れの挨拶をするゆずる(古田新太)と市郎が、4年後の昭和での再会と、その後の顛末、さらには令和で再び会うことを話していたら、気づいたら無限ループ状態に陥ってしまったように。

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 最終回である第10話のテーマは、「繰り返し」だった。1986年と2024年を行き来できるバス型タイムマシンは直線的な移動しかできないが、最後に呈示されたタイムトンネルは、昭和と令和の人々の心の機微を見事に繋いできた喫茶「すきゃんだる」を軸に、いくつもの弧を描く。さらに、前述したゆずると市郎の会話のみならず、彼ら彼女らの人生の物語が、次の世代へと引き継がれながらこの先もずっと続いていくということ。

 磯村勇斗が2役で演じるムッチ先輩こと秋津睦実と、その息子である真彦もそうだ。未来に行ってもなお自分のスタイルを貫いてきた睦実が突然「大江千里風」に「キャラ変」したと思いきや、終盤、それまで父との違いを明確に打ち出していた真彦が「マッチでーす」と父・睦実のお馴染みの台詞を踏襲する。純子(河合優実)とムッチ先輩の、実らなかった恋の物語は、市郎のアシストにより、それぞれの娘と息子である渚(仲里依紗)と真彦に引き継がれる。それはどこか朝ドラ的でもあり、3世代に渡って家族を描いた藤本有紀脚本『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)と共通するものを感じたりもする。

 また、昭和に帰った市郎は、「気持ちわり」「ムツゴロウか」「同調圧力」「炙りシメサバ200個」とかつて令和で言った言葉、言われた言葉を使って、昭和の違和を指摘していく。市郎もサカエ(吉田羊)も、それぞれに異なる時代を生きたことで生じた自身の変化を受け入れながら、「昭和も令和も生きづらく、寛容じゃない」ことに改めて気づき、嘆きつつ、昔話をするのではなく、未来に希望を持って生きている。

 第9話の令和パートにおいて、純子の墓前で、人々がそれぞれにとっての「母・娘・妻・先輩」である純子に思いを馳せる場面は衝撃的だった。まるで、純子の時間だけが、昭和の世界に閉じ込められて、「17歳」の無限の可能性を歌い上げたあの頃のまま宙を浮遊しているかのようだった(とはいえその後彼女は大学に行き、ゆずると出会い、渚を生み育てたわけで、その9年間の物語を視聴者は後日談という形で知ってはいるのだが)。でも、本作は、シビアに突きつけた死を、その後軽々とひっくり返してみせる。

 市郎は、第9話の終盤に、墓参りに誘うのとほぼ同じ口調で、昭和にいる「お母さん」純子に会いに行こうと渚を誘う。それによって、第10話の渚は、1984年の「すきゃんだる」のナポリタンを食べながら、純子と会話することになる。そして渚は、昭和という「現時点」における未来であるところの「渚が5歳の頃」に繰り広げられたのだろう「渚のはいから人魚」に纏わるやり取りを、まだ「母親以前」である母親・純子との会話の中に発見し、繰り返すことで、その懐かしさに涙する。純子にとっては初めてのやり取りであるのに関わらず。この、過去現在未来が混然一体となった多幸感。それもまた、ドラマだからこそ許される奇跡なのだ。

 9年後の未来を知ってしまっている市郎ほど差し迫ってはないが、人は誰もが皆やがて訪れる「死」に向かって生きている。だから市郎の抱えている問題も、渚の思いも、決して他人事ではない。だからこそ、死に向かっていく最終回ではなく、終わらずに、続いていく最終回が、こんなにも愛おしい。

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