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「電気代が高すぎる家」には共通点が。一級建築士が伝えたい“業界でも一部しか知られていない”事実

日刊SPA!

こんにちは、一級建築士の八納啓創と申します。会社員の方から上場企業の経営者宅まで、住む人が幸せになる家をテーマにこれまで120件の家づくりの設計に携わってきました。
『日刊SPA!』では、これまでの経験を生かし、「これからの時代に必要な住まいの姿」をお伝えしていきます。

今回のテーマは「家計を蝕む光熱費に対して、賢く立ち振る舞う方法」についてです。

◆他の先進国に比べても日本の光熱費は…

以前の記事でもお伝えした通り、昨今家計を悩ましているのが住宅の光熱費。実は、他の先進国に比べて、日本は光熱費が家計を圧迫する割合が高く、まさに“光熱費地獄”にはまっていると言っても過言ではありません。

他の国と何が大きく違うのか? その一つの要素として、「パッシブデザイン」を取り入れているかどうかが挙げられます。

例えば、最近の家は「箱」のようなデザインのものが多く、庇(ひさし)がついていない家も見かけます。そういった家に、「真南の壁に大開口の窓」がついていると想像してみてください。真夏であれば、その窓から太陽の光がさんさんと入ってきて家の中があっという間に温室状態になってしまいますよね。

◆利便性を追求した結果、「光熱費がかさむ家」が増加

ちなみに夏至の太陽高度は78.4度程度。窓の上すぐに1m程度の庇がついていれば、お昼時の太陽光をしっかり遮ることが可能です。そして冬になると太陽高度が下がってくるため、同じ場所に1mの庇があったとしてても、太陽光を呼び込むことが出来ます。

このように夏は太陽の光を遮り、冬は太陽の光を家に呼び込む手法が「パッシブデザイン」なのです。

昔の日本は、南側に大きな窓を取り、その外側に濡れ縁と庇を設けていました。まさに、これはパッシブデザインそのもので、理にかなった家づくりと言えるでしょう。

しかし現在では、利便性を追求するために、南側に向いた家ばかりではなくなりました。また、モダンなデザインとして流行った箱型の家には庇がないことが少なくありません。つまり、光熱費がかさむ家が圧倒的に増えてしまったのです。

◆大手住宅メーカーが作り出す「エアコンなどに頼り切った家」

大手住宅メーカーなどでは、家の「高気密高断熱性」を重視しているのにもかかわらず、パッシブデザインを取り入れずにエアコンなどに頼り切った家もあるぐらいです。

一般の方は、そういった事実関係を知らずに、「高気密高断熱の家なら光熱費を押さえることが出来るのだろう」ぐらいの認識で、家を購入する場合がほとんどです。

「パッシブデザイン」は、住宅業界でも一部の人しか認識していません。これからの家づくりに取り入れるには、一般の方が周知したうえで、要望としてきっちり伝えていくことが重要です。 

また、「家の設計をするにあたって、年間どれくらいの光熱費がかかる家なのかのシミュレーションも出してください」と依頼したいところです。パッシブデザインなら、通常の家の光熱費よりも格段に押さえることが可能になりますから、

“光熱費地獄”に陥らない為にも忘れず頼むようにしましょう。

◆光熱費が「毎月2万円」だと思って住宅ローンを組んだら…

幸せを形にするために建てた家が元で、逆にどんどん不幸になる人が増えているーー。こんな恐ろしい現状が実際に起こっていて、特にこの数年顕著です。なぜ、そのようなことが起こるかというと、その原因はやはり「光熱費の高騰」にあります。

実はこの光熱費が高騰したことで家計が圧迫されて住宅ローンを払うのが厳しくなる「住宅ローン破産予備軍」が増えています。

家を手に入れる場合、多くの人が住宅ローンを組みますよね。

「毎月の支払いが12万円。これだと、食費をもう少し削っていかないと難しい。どうにか11万円に納まる予算で家を手に入れよう」

しかし、光熱費の支払いが当初は毎月2万円程度だったはずが、この数年で3~4万円ほどに高騰しています。

「住宅ローンの月1万円をどうやって浮かせようか?」と考えていたのに、あれこれ削って1万円下げたところで、1~2万円上がった光熱費が、家計を圧迫しているのです。

◆節約のため、エアコンをつけずに我慢ずる家庭が増加?

2024年3月現在、今の日本は「コストプッシュ型インフレ」と言われています。給与は上がらないのに、物価だけ上昇する現象のことですが、この状況がいつまで続くか誰も正確に予想できません。

なかには「省エネ対策」に励む人の姿も。一番身近な省エネ対策は「我慢する」こと。

夏の暑い時や、冬の寒い時でも、エアコンをつけずに過ごす家庭が増えていると聞きます。実はそういった無理をかさねることで、体調を崩して、逆に医療費によって出費が増える状況が生まれています。

耐え忍んでいるのに、出費が増えてしまっては本末転倒ですよね。私は今から10年ぐらい前から、「住宅ローンのシミュレーションをするときは、『必ず光熱費が年3~5%ほど高騰していくこと』を盛り込むようファイナンシャルプランナーに伝えてください」とお願いしていました。

エネルギーの世界情勢からみると、必ず物価とともに上昇することが目に見えていたのが、その理由です。とはいえ、ファイナンシャルプランナーからしても、光熱費などがここまで上がると予想していなかったのだとは思います。

現状のままでは止まりませんし、これからも必ず上昇していくでしょう。もし、光熱費の高騰分が住宅ローンのシミュレーションに入っていなかったら、「毎年3~5%の上昇分を組み込んでください」と伝えてみましょう。そうすれば、数年後に苦しい思いをしなくて済むことになるはずです。

住まいがあなたや家族を不幸に陥れるのではなく、幸せにする場所になることを心から祈っています。

<TEXT/一級建築士 八納啓創>



【八納啓創】
1970年、神戸市生まれ。一級建築士、株式会社G proportion アーキテクツ代表取締役。「地球と人にやさしい建築を世界に」をテーマに、デザイン性、機能性、省エネ性や空間が人に与える心理的影響をまとめた空間心理学を組み込みながら設計活動を行っている。これまで120件の家や幼保園、福祉施設などの設計に携わってきた。クライアントには、上場会社の経営者やベストセラー作家をはじめ「住む人が幸せになる家」のコンセプトに共感する人が集い、全国で家づくりを展開中
 
   

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