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『ふてほど』最終回は“まとまり過ぎない”ことを期待 重要だった「八嶋智人」の“違和感”

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 『不適切にもほどがある!』では、むしろ「わかりみが深い」というような共感、もしくは、劇中の不適切な表現がわかったという発見である。内容の良し悪しにかかわらず書かれていることの意味や出典はわかるのである。納得する表現においても、勉強不足ではないかと指摘される表現においても、へんな言い方だがどちらにも過不足がない。唯一、ミュージカルが馴染めない、違和感があるという声が初期にはあったが、毎回、丁寧に続けることで支持されるようになった。途中で一瞬やらないところも含めて完璧な構成だった。

 時代の行き来も、それぞれの時代の内容を重ねて、対比して見せることで、置いてきぼりにはならないように工夫されている。宮藤はもともと構成力があり、原作ものをまとめることにも長けた作家だから、昭和と令和を比較し、議論を生むバラエティ感覚のドラマを作りあげたのだと思う。市郎がタイムマシンでいろんな時代に行くシリーズ化もできるかもしれない出来の良さだ。

 それが逆に名職人の仕事として至極まとまり過ぎているようにも感じたことは否めない。大人計画の劇団員同士でグループ魂のメンバー同士の阿部サダヲは、宮藤の脚本を完璧に体現している。古田新太もそうだ。申し分ない。そんなときに八嶋智人なのである。これまで宮藤作品に出ていなかった八嶋がほどよく違和感もあり、それでいて、同時代、小劇場で活躍してきた演劇人としての、どこか通じるものをそこはかとなく漂わせていた。

 第3話のオンエアの日に、劇中でちょうど公演中の演劇の宣伝をして、ドラマを観て興味を持ったら翌日、劇場に観に行けるというハプニング性は、SNSをうまく使ったヒットアイデアだったと思う。さらに、第9話で、担当を外れる渚に一瞬ドライな対応をしたように見せて……と、なぜかとてもこのドラマでとても大切にされていた八嶋智人。けん玉はなにかの役に立つことはないのだろうか。

 純子の、「反抗って結局甘えなんだよね」というツッパリからの卒業(第8話)を書いたことには、きれいにまとめ過ぎていると思ったり思わなかったり。でも、キヨシ(坂元愛登)がラジオに投稿して不登校の佐高くん(榎本司)を励ましたエピソードは、親子愛に続いて麗しい。きれいにまとまったほうがいいに決まっているのだ。でもその美しさとかおもしろさは、思いがけない瞬間にきらりと光るものであると、作家は最後までそこに挑んでいると信じたい。

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(文=木俣冬)

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