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連載:道玄坂上ミステリ監視塔 書評家たちが選ぶ、2024年2月のベスト国内ミステリ小説

Real Sound

藤田香織の一冊:似鳥鶏『刑事王子』(徳間書店)

 退官後のことばかり考える、凪のような日々を過ごしていた警視庁組織犯罪対策部国際犯罪対策課第一国際犯罪捜査四係(長い)所属の本郷馨は、ある日突然、北欧の小国「メリニア王国」の王子とバディを組まされ、殺人事件の捜査にあたることに。枯れかけた52歳の巡査部長と、非公式で来日し世を忍ぶ仮の姿で行動する16歳のプリンスが追うのは、複数の殺人容疑などで国際手配されている22歳のジョン・スミス。軽妙な文章で好感度バリ高なキャラ設定でありながら、コンビ誕生の裏事情や、連続して発生する事件の背景はエグ深い。似鳥鶏の感覚とセンス、好きです。

橋本輝幸の一冊:長崎尚志『人狩人』(角川春樹事務所)

 神奈川県で見つかった身元不明の死体はより大きな事件につながっていた。捜査一課の桃井は、有能だが良からぬ噂もささやかれる警部補・赤堂と共に謎を追う中で、人間狩りを楽しむ集団に気づく。敵は戦後から警察ほか手出しできない場所に巣くう狡猾な巨悪。はたして誰が味方なのか。

 現代日本が舞台の警察小説においてスケールと現実味の案配は難しい。だが本書は神奈川県のみに収まりつつ、大予算映画並みの興奮を達成している。最後まで驚きが次々繰り出されて油断できない。時おり実在の飲食店が登場する遊び心もにくい。充実した大作!

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杉江松恋の一冊:潮谷験『ミノタウロス現象』(光文社)

 世界に牛頭の怪物が出現するようになる、というところから話が始まる。だけど怪物、意外なことに結構弱いのである。駆除可能。この結構弱い、というのが意表をつくところだ。なぜか地方都市で女性市長が古株議員に悩まされる話になり、なんじゃこりゃ、と思っていると死人が出て、謎解き展開になる。オフビートな語り口に芸があり、ちゃんと笑える。潮谷はこれまでいろいろな作風に挑戦してきたが、ついにコメディ・ミステリーである。怪物が弱い、というのが鍵でちゃんと論理が仕込まれている。このへんの周到さにも感心させられた。

 全般的にいわゆる本格ミステリーが強かった2月でした。でも中はばらばらミノタウロスも大暴れするし、魔女裁判もありますしね。さあ、来月はどんなことになってしまうのでしょうか。期待度大です。

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