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怒髪天、40年の濃厚な生き様見せた二日間 豪華ゲスト迎えた特別企画レポ

Real Sound

「札幌で40年前に結成して。バンドとしてもそう、人間としてもそう、いろんなものが欠けっぱなしの状態で歩いてきた。いつのまにか欠けてる部分を埋めてくれるみんなと、仲間たちと出会って、つるっとしたというか、坂さんはコロッとしたというか。本当に幸せなバンド人生だったと思っています」

 増子が改めて40周年への感謝を述べると「欠けたパーツの唄」を披露した。

 そうしたバンドの軌跡を誰もが感慨深く思っていたところでフラッと登場した、青ジャケットに白スラックス、赤ネクタイという横山やすしルックの男、そうTOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU)である。2009年の25周年『オールスター男呼唄 秋の大感謝祭 -愛されたくて…四半世紀-』の際にも同じ出立ちだったが、まだ喋らない硬派なキャラだったために誰だったかわからないという顛末のリベンジである。これには増子も思わず「やってくれたな」の苦笑い。「同じ歌なのに長く続けていると風景と心情が変わってきて……」と口を開いたTOSHI-LOW。都会に疲れて孤独だった20代、家族や新しい仲間もできたけど、やはり孤独だった25周年の30代。そして、来年50歳を迎える40代最後の今、「去年いなくなったあの人も杉並に住んでたな。治療は孤独だったでしょう。でも今雲の上から“泣きごとなんか言ってんなよ、もうちょっと頑張れよ”、そんな声が聞こえてくる気がして……怒髪天、50年、60年まで元気でいてください」そう想いの丈を語ると手にしたアイリッシュ・ブズーキで、「杉並浮浪雲」を弾き語りはじめた。哀愁と愛情に満ち溢れたそのアレンジとその歌声に、歌い終わったあと上原子は思わず「OAUでカバーしてくれないかな」と口にしていた。

 ここで思わぬアクシデント。「杉並浮浪雲」をTOSHI-LOWとともに熱唱した増子が体調不良を訴え、ステージを降りる事態となった。急遽、3人によるMC。「身長が2cm縮んだ」という坂詰の着地点のない話など、他愛のないやり取りをしていったところで、山中さわお(the pillows)に手を取られ、増子が再登場。「俺だけ登場が地味になってない?」という山中とともに歌うは「雪割り桜」。40年のうち38年を一緒に過ごしてきた同郷の盟友と大いに歌った。〈冬の時代に 俺達は咲いた花〉渾身の大合唱が会場にこだました。

 再びステージから消えた増子。数分後に戻ってくるが、ゲストは全員登場したということで、残り数曲を残すも大事をとって本日は終演とアナウンス。「すまん、明日は必ず!」と頭を下げる増子を笑顔で見守るゲストとオーディエンス。突如訪れた思わぬ終演とはいえ、濃密で貴重なものを存分に見せてくれた。来場者は皆大満足で帰路についたことはいうまでもあるまい。

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■2日目(2月5日)

「お恥ずかしい限り、俺が思ってた以上に健康でした」

 1日目の公演後、担架で運ばれる様をTOSHI-LOWに動画撮影されながら救急車で搬送。病院にて諸々の検査を受けるも予想以上の健康体で完全復活した増子。酸欠と脱水が原因だったと、殺虫剤(酸素スプレーのこと)を片手に挑んだ2日目は大雪の天気とは裏腹に、“これぞロック!”と言わんばかりのアツいライブをゲストともに繰り広げた。

 「ジャカジャーン!ブンブン!ドンドコ!イェー!」、「HONKAI」とストレートなロックナンバーを初っ端から続けざまに投下。そして2日目最初のゲストは仲野茂(亜無亜危異)だ。真っ赤な特攻服とモヒカン頭を振り乱しながらステージを縦横無尽に駆け回る。亜無亜危異のナンバー「Ready Steady Go」では、怒髪天のルーツがパンクにあることをあらためて思い知らされた。

 そして派手なイントロに合わせて、後光が指すかのごとく現れた柳家睦。〈立派な人に なれないと 誰か教えて欲しかった〉と「愛のおとしまえ」を歌い始める増子と、“FUCK OFF”柄のスーツを纏い、得意げな表情を浮かべる柳家の2人に惹き込まれる。ロックバンドに人生を捧げた男たちの挽歌でもあった。

「それではお呼びいたしましょう、日本が世界に誇るロックンロールの化身!」

 増子にそう呼び込まれたのはギターウルフ セイジ。黒のSGをマーシャルにプラグインすると、けたたましいフィードバックが鳴り響く。「不惑 in LIFE」を叩き込み、これでもかというほどの轟音を掻き鳴らした。

 そして上原子のトリッキーなイントロで始まった「OUT老GUYS」では、二井原実(LOUDNESS)が登場。世界が羨むジャパニーズメタルバンドのボーカリストが、〈我老いてなお害する者なり〉と増子と息の合ったハモリを聴かせるなんて、この上のない贅沢だ。続いてLOUDNESSの誇る名曲「CRAZY DOCTOR」を披露。メタルにルーツを持つ上原子は絶妙なビブラートからシュレッドなソロに至るまで完コピしつつも、リスペクトを感じさせるプレイ。それはもはや弾き慣れたものであり、完全にギターキッズに返った王子を垣間見た。以前のインタビューで二井原と同じキーだと語っていた増子も、突き抜けるようなハイトーンでオーディエンスを圧倒した。普段は伝わりづらい部分ではあるが、怒髪天がハイスキルを持った強者が結集した、とんでもないバンドであることをあらためて知らしめた一幕であった。

 それを経て演奏されるプログレシッブロックナンバー「SADAMETIC 20/20」のバカデカいスケール感と硬派な表情に打ちのめされるも、「この曲のゲストはあなたたちです」と「濁声交響曲」で飾らずに手を差し伸べながらフロアとひとつになっていく無邪気さに心を打たれる。

 アニメ『団地ともお』のオープニングテーマ「団地でDAN!RAN!」で登場したるは影山ヒロノブ(LAZY/JAM project)。「1曲で帰すわけにはいきませんよ」との増子の誘いに「多分、みんなも一緒に歌えるやつをやろうかな」と応え、「カモン、ドラム!」と軽快にハネたビートで始まったのは『ドラゴンボールZ』のオープニングテーマ「CHA-LA HEAD-CHA-LA」だ。これにはオーディエンス全員が童心に帰り、声を張り上げて歌いに歌い、力一杯の拳を高くあげた。

「帰る場所を失った者たちが集う温かい場所ですよ。たとえ外が地獄だろうと、今が楽しければいいですよ」

 交通機関が乱れるほどの大雪のなか、集まったオーディエンスに増子流の感謝を述べる。

 ゲストはまだまだ続く。「歩きつづけるかぎり」では鈴木圭介(フラワーカンパニーズ)が登場し、ハスキーながらも伸びやかな個性ある歌声を轟かせる。

 白スーツで登場したTAISEI(SA)は謎の説得力ある大迫力の男前な美声で「ひともしごろ」を熱唱。ボーカリストとしてまったくタイプの異なる2人だが、メロディアスな日本語詞を噛み締めるように歌う姿勢にロックボーカリストながらも日本の歌謡性と、怒髪天楽曲の素晴らしさを示すにはぴったりの人選だった。歌謡ショーっぽくやりたいと、O-EASTをあえての座席あり形式にしたバンドの意図に納得した。

 上原子のつまびくアルペジオで始まった「ありがとな」。それはこの日に出演してくれたアーティスト、集まったオーディエンス、そしてこの40年間に出会ったすべての人たちに感謝するように優しく歌い閉じると、「俺たちと出会ってくれたことに感謝します」と述べた。

「今日観に来てくれたこと、間違いなく正しかったと絶対思うから」

 増子はそう口にし、感動的に次の曲へ、と思いきや肝心な坂詰が曲の入りを間違えるという、もう完全に“持ってる”としか言いようがない展開。〈生きてるだけでOK!〉と思い悩む全人類に捧げる「全人類肯定曲」からの「Go自愛」を経て、ラストを飾るのはゲスト全員を呼び込んで「オトナノススメ」。35周年バージョンと同じく、ギターウルフ セイジの「ロックンロール!!」の雄叫びで始まった、いわずとしれた怒髪天のアンセムをオールスターで歌い回し、大団円を迎えた。

「40周年、サイコーー!!」

 増子の声が大きく響き渡った。怒髪天の40周年は、まだ始まったばかりだ。

(文=冬将軍)

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