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一体誰が想像しただろう── 『この世界の片隅に』がミュージカルに!

キネマ旬報WEB

2016年11月に封切られてから一日も途切れることなく2019年12月まで連続で上映し、異例のロングランとなった映画「この世界の片隅に」。2016年のキネマ旬報ベスト・テンで第1位となり、アニメーション映画の1位は「となりのトトロ」(88)以来となった。

昭和19年、戦艦大和を擁する軍港であった広島の呉に嫁いできた18歳のすずと夫の周作、その家族、そして遊女のリンをはじめとる市井の人々の戦時中の日々の暮らしが描かれる物語は、映画化もされた『夕凪の街 桜の国』で知られる広島出身の漫画家・こうの史代のコミックスで、2008年の発売から累計発行部数は130万部を突破している。この原作を基に、2011年にスペシャルドラマ化、冒頭で触れた片渕須直監督によるアニメーション映画の大ヒットを経て、2018年には連続ドラマ化。2019年に、30分の新たなシーンを追加した映画の完全版「この世界の(さらにいくつもの片隅に)」も公開され、あらゆるジャンルで“国民的作品”とも評される名作中の名作が、この度ミュージカルとなって上演されることになり、先日その製作発表会見が行われた。

左から、演出の上田一豪、桜井玲香、村井良大、大原櫻子、昆夏美、海宝直人、平野綾、音月桂

主人公のすず役の昆夏美と大原櫻子(Wキャスト)、すずの夫の周作役・海宝直人と村井良大(Wキャスト)、リン役の平野綾・桜井玲香(Wキャスト)、すずの義姉役の音月桂と、『ミュージカル のだめカンタービレ』(23)や『四月は君の嘘』(22)などを手掛けてきた演出家の上田一豪が登壇した。

そして、2008年に合唱コンクールの課題曲として書き下ろされてから現在まで歌い継がれてきた合唱ソングの定番〈手紙~拝啓 十五の君へ~〉の、アンジェラ・アキが音楽を担当。2014年に渡米して以後、今作で10年ぶりにミュージカル音楽作家として再始動するのも注目の一つだ。会場で披露されたビデオメッセージでアンジェラ・アキは「上田さんが書いた台本を読んで、こうの史代さんが書いた原作をこんなふうに舞台化するんだ!と感激しました。目を閉じると舞台の上で繰り広げられることが想像でき、音も聴こえてくるようなカラフルな印象でした」とコメントを寄せた。演出の上田一豪はアンジェラ・アキとの楽曲製作について「奇をてらったことはしたくない。観客の耳に届くものに歩み寄っていきたい」と語る。

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デモ曲を聴いたキャストの昆夏美は「アンジェラさんが原作や脚本をリスペクトして作られた感じが伝わってくる」、学生時代からずっとファンだったという大原櫻子は「震えるくらい感激して、涙が出て、これは絶対に歌いたいという思いが強まった」と言う。また海宝直人は「これまでのミュージカルの音楽とは違うカラー、新しい感覚」とのこと。それを裏打ちするように、桜井玲香は「空襲のシーンの曲が意外で、こういう形で表現されるんだ、と驚きました。寂しさのなかに、温かさがある」、音月桂は「ミュージカルの曲はパワフルに歌い上げるもの多いですが、ろうそくで心に火を灯すような優しい曲、デリケートに大事に歌っていきたい」と語るように、アンジェラ・アキの音楽に一層期待が高まる。なお、ミュージカルが開幕する直前の4月24日には、作品のために製作された楽曲と、それを彼女が歌ったCD《アンジェラ・アキ sings『この世界の片隅に』》の発売も決まっている。音楽を聴いてからミュージカルを観る、という楽も一興だろう。

東京公演の後は、全国8カ所でツアーが行われ、千秋楽は広島県呉市で迎える。「呉でできるのは本当にうれしいです。原作の持っているメッセージ、思いをしっかり届けたい」と村井良大。
さまざまにメディアを変え発信されていくのは、原作の持っている普遍的なメッセージを、どのジャンルのクリエイターも共感し、そしてさらに広く人々に伝えていきたいという思いに他ならないはず。とはいえ、アニメ、ドラマ、映画、舞台(ストレートプレイ)になることは予想できても、ミュージカルになるとは誰が想像しただろうか。さまざまな可能性を秘めたミュージカル『この世界の片隅に』は5月9日より東京・日生劇場で開幕する。

文・制作=キネマ旬報社


ミュージカル『この世界の片隅に』

原作:こうの史代
音楽:アンジェラ・アキ
脚本・演出:上田一豪

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