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【週末映画コラム】テーマは「落ちる」ということ。裁判劇としての面白さもある『落下の解剖学』/世界最弱のサッカー代表チームの奇跡を描いた『ネクスト・ゴール・ウィンズ』

エンタメOVO

『落下の解剖学』(2月23日公開)

 人里離れた雪山の山荘で男が転落死した。初めは事故かと思われたが、ベストセラー作家である妻のサンドラ(ザンドラ・ヒュラー)に殺人の疑念が向けられる。現場に居合わせたのは、視覚障がいがある11歳の息子ダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)だけ。これは事故か自殺か殺人か。事件の真相を探る裁判で夫婦の秘密やうそがあらわになっていく。果たして真相は…。

 フランスのジュスティーヌ・トリエ監督の長編4作目となる本作は、第76回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞し、第81回ゴールデン・グローブ賞では脚本賞、非英語作品賞を受賞。3月11日(現地時間)に授賞式が行われる第96回アカデミー賞でも、作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞、編集賞にノミネートされている。

 冷徹な視点で描かれた脚本が見事なこの映画のテーマは、「落下の解剖学」というタイトル通り「落ちる」ということ。階段から落ちるテニスボールのカットから始まり、夫の転落死、疑念の中に落ちていく妻、裁判で夫婦のイメージも地に落ちるといった具合。その発想がユニークだ。

 また、この映画には裁判劇としての面白さもある。「他人の不幸は蜜の味」という言葉もあるが、裁判であらわになる他人の秘密やうそを見聞きすることは、下世話な話で言えば、やじ馬根性やのぞき見的な興味を満たすところがあるし、人間が持つ多面性や事件の真相への興味も刺激される。

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 この映画での裁判の描き方についてトリエ監督は「フランスの裁判はあまり秩序立っておらず、アメリカで見られるような組織的なアプローチとはかなり異なっている。だからこそ、見せ場重視のアメリカの法廷ドラマとは違うアプローチで、フランス特有の映画にすることができた」と語っている。

 キャストも、知的なポーカーフェースの奥に冷酷さと自我の強さをにじませ、あえて観客の感情移入を拒むような演技で“疑惑”を生じさせたヒュラー、両親の秘密を知り、動揺する幼い息子を繊細に演じたグラネールのどちらも見事だった。

 蛇足だが、この映画の英語タイトル「アナトミー・オブ・ア・ホール」を見て、陸軍将校が妻を強姦(ごうかん)した男を射殺した事件の裁判を描いた『或る殺人』(59)という映画のことを思い出した。この裁判劇の原題は「アナトミー・オブ・ア・マーダー=殺人の解剖学」という。
『ネクスト・ゴール・ウィンズ』(2月23日公開)

 米領サモアのサッカー代表チームは、2001年にワールドカップ予選史上最悪となる0対31の大敗を喫して以来、1ゴールも決められずにいた。次の予選が迫る中、型破りな性格のためアメリカを追われた鬼コーチ、トーマス・ロンゲン(マイケル・ファスベンダー)が監督に就任し、チームの立て直しを図るが…。

 『ネクスト・ゴール! 世界最弱のサッカー代表チーム 0対31からの挑戦』(14)というドキュメンタリー映画も製作された、奇跡のような実話を基に、『ジョジョ・ラビット』(19)「マイティ・ソー」シリーズのタイカ・ワイティティ監督が映画化。ロンゲンの元妻をエリザベス・モスが演じた。

 ストーリー自体は、弱小アイスホッケーチームを描いた『飛べないアヒル』(92)、ジャマイカのボブスレーチームを描いた『クール・ランニング』(93)など、1990年代にウォルト・ディズニー・ピクチャーズが連作した、スポーツを媒介とした、問題を抱える監督(コーチ)と個性的な選手たちの再生物語をほうふつとさせる。

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