森保Jが露呈した対カウンターへの脆弱性。必然の2失点…今こそ守備組織整備の時
森保Jが露呈した対カウンターへの脆弱性。必然の2失点…今こそ守備組織整備の時
ただのスーパーゴールではなく… 日本代表は9日、アジアカップのグループリーグ初戦でトルクメニスタン代表と対戦し3-2で勝利を収めた。まさに「辛勝」と表現できる内容。FIFAランキングで127位の相手は…

ただのスーパーゴールではなく…

 日本代表は9日、アジアカップのグループリーグ初戦でトルクメニスタン代表と対戦し3-2で勝利を収めた。まさに「辛勝」と表現できる内容。FIFAランキングで127位の相手は、日本の守備の脆弱な部分を正確に見抜いて狙ってきた。必然だった2失点から大苦戦の要因を読み解く。(取材・文:舩木渉【UAE】)

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「この試合に決意と覚悟を持って臨めたのか、自問自答しなければいけない結果になったんじゃないか」

 キャプテンの吉田麻也は、厳しい表情で試合を総括した。9日に行われたアジアカップのグループリーグ初戦、3-2で辛くも勝利を収めたトルクメニスタン戦を終えてのことだ。

 入念に準備してきたであろう相手のカウンター攻撃に何度も晒され、修正できないまま失点。最終的に3ゴールを奪って逆転勝利につなげることができたものの、終盤にも不用意なボールロストからカウンターを浴びて危険な状態を作られた末にPKを献上して1点差まで迫られた。

 トルクメニスタンは戦術的に規律がとれていて、日本の弱みを正確に狙ってきた。これまでの公式戦では見られなかった5-4-1を「対日本」の特別なプランとして仕込み、前線の3人によるカウンターに狙いを絞る。

 通常の5-4-1とは違い、「4」のサイドハーフは守備から攻撃への切り替え時に素早く中央へとポジションを移し、日本のセンターバックとボランチの間の最も危険なスペースを執拗に突いてきた。序盤から右のルスラン・ミンガゾフと左のアルスラン・アマノフが度々脅威となり、日本は彼らの勢いを前にして後手を踏んだ。

 セントラルMFが柴崎岳と冨安健洋という初めてのコンビだったことも多少影響してはいるだろうが、チーム全体として前がかりになって攻める分、2人の背後と押し上げが不十分な最終ラインとの間にぽっかりと大きなスペースが空く。そこが日本の弱点だと、トルクメニスタンは見抜いていた。

「僕と冨安のところでちょっとバランスが悪かったかなというのもありますし、あとはセンターバックとの連係の中でもうちょっとプッシュアップするのか、僕らが下がるのかという部分が曖昧だったことがあると思います。それを相手のストロングポイントであるカウンターのスピードでうまく使われてしまった。ボランチとセンターバック、サイドバックもそうですけど、リスクマネジメントの部分でもうちょっと徹底するところはあると思います」

30mのスペースはなぜ生まれたか

 柴崎は試合を終えて、改めて全体のバランスの悪さを悔やんでいた。「ミーティングの中では5バックでという情報はなかった」と多少の想定外な部分があったことも明かしたが、やはりピッチ上で何かしらの打開策を見い出せず、当初のプランに変化を加えられないまま先に失点してしまったことは大きな反省材料だ。

 26分に喫した1失点目。そのきっかけとなったのは堂安律が3人に囲まれた状態で強引にカットインを試み、相手ペナルティエリア手前で柴崎へのパスが雑になってボールを奪われた瞬間だった。その時点でアタッキングサード(ピッチを3分割した時に相手ゴールに最も近い3分の1のエリア)には6人が入っていて、ディフェンスラインの4人はハーフウェーライン付近にとどまっていた。

 日本は終始ボール支配率約70%を保っており、攻撃陣は全体的に前がかりになっていた。それもあって前方の6人とディフェンスラインの間には、30m近い距離があり、トルクメニスタンにはカウンターのための広大なスペースがある状態。まさにそこを狙って中央寄りにポジションをとっていたミンガゾフにボールが渡り、ノープレッシャーの状態で一気に運ばれてしまう。

 そこでディフェンスラインは4人で後退しながら、右センターバックの吉田が少し下がるスピードを抑えてミンガゾフをけん制する。するとトルクメニスタンの背番号8は左サイドに張り出していていたアマノフへ展開。ただそこで日本のディフェンスラインはリスクを恐れて下りきってしまっており、誰もボールに対してプレッシャーをかけないまま、フリーでシュートを打たせてしまう。それがあの30m級の弾丸ミドルシュートによる失点だ。

 ロシアワールドカップの決勝トーナメント1回戦、あのベルギー戦の最後のカウンターからの失点がトラウマになっているのか。速攻からの失点を恐れるあまり、逆に臆病になりすぎているのではないかとも感じる。攻撃陣はフレッシュな面々になって恐れるものなくどんどん仕掛けていくが、一方でワールドカップ組が多く残っている守備陣はリスクを恐れているのか押し上げ切れないでいるのかもしれない。

 とにかくトルクメニスタン戦の前半は、相手の狙いでもあるカウンターに晒され続けた。巨漢FWヴァ人・オラサベドフも積極果敢に日本のDFに勝負を挑み、その後ろから攻撃のキーマンであるミンガゾフやアマノフが絡み、時には中盤からアーメット・アタエフも飛び出してくる。

今こそ攻守一体を前提に規律の再確認を

 これほどまでに危険な状態を作られた原因について、吉田は「特にボールを失う場所と、失い方、横や後ろへのパスのミス」だと分析している。確かにボールの奪われどころの悪さは、より改善していかなければいけないだろう。2失点目につながるPKを与えてしまった場面は、北川航也のボールロストだったが、その前の長友のスローインが投げられた時点でセンターバック2人の押し上げはまたしても不十分だった。

 最終ラインが不揃いなところを瞬時に突かれ、両センターバックの間を狙ったアルティムラト・アンナドゥルディエフにスルーパスが通る。この時点で日本のゴール前に残されたのはGKのみ。権田修一はフリーで突破してきた相手選手に必死に食らいついたが、ペナルティエリア内で倒してPKを与えてしまった。だが、完全に崩された末のこの場面で守護神を責めることはできない。

 トルクメニスタン戦の2失点は、それぞれ種類は違えど、ともにカウンターで奪われたものだった。しかも日本の守備組織の弱点を見事に突かれ、生まれるべくして生まれたゴール。早急に修正しなければ、今後対戦する相手チームも同じような形を狙ってくるに違いない。

 柴崎は「日本はワールドカップでベスト16に入ったからといって、まだまだあぐらをかいていられるような立場ではない。アジアには自分たちよりもいいチームももちろんありますし、この大会で成長しながら戦って、勝っていかなければ、今の段階では優勝は難しい。どれだけチームが試合の中、この遠征の中で成長曲線を描きながら、優勝までの道のりを描けることも非常に大事だと思います」と現状への危惧を口にしていた。

 3ゴールを奪って逆転勝利したことによって後半の攻撃面の修正が注目されがちだが、守備面にも改善すべき点は大いにある。日本が主導権を握れる試合が多くなるアジアカップでは、相手がカウンター狙いでくることも多くなる。だからこそボールをゴールまで運ぶまでのイメージを共有、さらに失うリスクを冒せる場面や場所を整理し、前線とディフェンス陣で認識を擦り合わせていくか。

 これまで森保一監督は守備組織の構築にあまり時間を使ってこなかったが、十分に時間を取れて公式戦を繰り返せるアジアカップ期間を利用しない手はない。いつまでもフレッシュな2列目のアタッカーたちに自由を与えるのではなく、選択肢を整理し、チームとして同じ画を描くための規律を植えつけるべき時だ。

(取材・文:舩木渉【UAE】)

(更新日:2019年1月10日)

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