門脇麦 | 「夢は諦めなければ叶う」なんて考えは、とっくの昔に捨てました
門脇麦 | 「夢は諦めなければ叶う」なんて考えは、とっくの昔に捨てました
乱交パーティの一夜を描いた『愛の渦』で全裸の体当りの演技を披露し、待望の新作主演映画『シャンティ デイズ 365日、幸せな呼吸』の公開も控えている女優の門脇麦さん。女優になる前は、実はずっとプロバレエダンサーを目指していたという門脇さんに、バレエをやめた理由、そして女優になったきっかけなどを伺いました。
門脇麦
人間はいかに努力しても「デキないこと」もある

――門脇さんは東京ガスのCM「ガスの仮面 MASK OF GAS」でバレリーナ役を演じて話題になっていましたが、小さい時からバレエを続けてらしたそうですね。

門脇麦 (以下、門脇)4歳ぐらいから中学2年生までやってました。

――プロを目指してらしたとか。

門脇はい。当時は本気でプロになろうとしていたので、それまで自分の持てる生活の時間をすべてバレエにささげていました。ただ、どんなスポーツでもそうだと思うんですが、バレエは、特に持って生まれた要素や才能がすごく大事な世界なんです。いかに努力してもそれをカバーできないということに、中学2年生ぐらいの時に気付いてしまって。

門脇麦

――それで、「自分にはプロのダンサーになるのは無理だ」……と思われたということですか? どんなきっかけでそう思われたんでしょうか。

門脇きっかけというよりは、自分が努力して上のレベルに上がっていくにつれて、徐々に意識するようになった感じです。持って生まれた才能や要素を持った人たちの演技を観ていると、私とは何かが根本的に違っている。
 そして、私と彼らの間にあるハードルは、どうしても越えられない。それを目の当たりにしたことで、「あぁ、無理なんだな」と肌で感じるようになりました。努力で叶わないことも世の中にはあるんだな、と。そのとき、これまで抱いていた「夢は諦めなければ叶う」という考え方は捨てました。

――それでバレエを辞めたんですね。

門脇はい。それまではバレエで生計を立てていきたかったんですけど、無理だってわかったから。だったら、早く別のものを見つけなきゃいけないんじゃないかと思って。

ひたすら映画を観る日々で、出会った映画『花とアリス』

――ダンサーから女優に転身されるまでは、なにをしてたんですか?

門脇とにかくバレエは見るのもいやだったので、きっぱり一切やめました。トゥシューズやレオタードも全部捨てましたし、バレエのために伸ばしていた髪の毛もやめたその日に切ってショートカットにしました。

――行動が早いですね!

門脇バレエを断ち切った後は、「いったい自分はじゃあなにがやりたいんだろう?」ってことをずっと考えてました。その間は、本当にいろんなことをやりました。ボイストレーニングもやりましたし、「他のジャンルのダンスはどうだろう」と思ってジャズダンスやヒップホップもやりました。でも、気付いてみたら、自分が関心のあることはどれも「表現すること」につながっていたんです。

門脇麦

――それが映画につながったんですね。

門脇そうですね。高校2、3年生ぐらいのときから映画を観始めるようになったんです。そのとき、「映画も表現職だな。ちょっとやってみたいな」と思って。それが女優を目指したきっかけだったんです。

――当時はどんな映画を観ていたんですか?

門脇いろんな映画を観てました。でも、なかでも印象深いのは『花とアリス』です。蒼井優さんが10代の頃の作品だったので、「自分と同じくらいの年の女の子が、こんなに人に衝撃を与えられる作品を作っているんだ」とショックでした。
 それに、『花とアリス』はいままで自分が観たことがないような作品だったんです。最初観たときは「これはドキュメンタリー映画なのかな?」と思ったぐらいで。

――たしかに、すごく俳優さん同士のセリフ回しや間の取り方がリアルな感じですよね。

門脇そのときまで、私が観ていた映画はエンターテイメントの大きな作品が多くて、『花とアリス』みたいに「セリフじゃないようなセリフ」のやりとりでストーリーが進む映画って観たことなかったんです。途中で「あ、これセリフなんだ」って気付いたんですけど、それは自分にとってすごく衝撃的でしたね。そこから女優という職業に興味を持つようになったんです。

「表現したい」なんて大それたことを言うのは、恥ずかしい

――小さい頃から「なにかを表現したい」という気持ちはずっと昔からお持ちだったんですか?

門脇そうですね。いま思うと、なんて恥ずかしくて大それたことを考えていたんだろうって感じですけど(笑)。

――いまは「表現したい」とは思わないんですね。

門脇女優をやってみて思ったんですが、私は本当になにも持っていない凡人なんですよ。だから、表現するなんて言葉を使うのはおこがましくて。一方、監督をはじめ、映画を作ることに関わっている人たちというのは、とても感性が豊かな人たちばかりなんです。
 でも、せめてそういう人たちに「門脇麦のこういう部分がこの役で必要だから、この作品に出てほしい」って言ってもらえるんだったら、それに応えて、どんな役でも柔軟に演じられるようにしたいと思うんです。

――「自分をこんな風に表現したい」というよりは、監督やスタッフさんの求める人物像を演じる……ということですね。

門脇あくまで「役」を表現するわけで、自分自身を表現するのとはちょっと違うというか。たとえば、歌やダンスならその人の個性が出て、自分自身から生まれ出てくるものだと思うんです。でも、女優の場合は、監督の演出だったり、台本のセリフを言っているだけで自分の言葉というわけではないんですよね。むしろ、「なにかに身を委ねている」っていう感覚のほうが強いです。

――昔といまでは「演じること」への感覚が大きく変わっているんですね。

門脇そうですね。昔は「自己表現したい」と思っていたので、常に自分が主体だったんです。だから主観でしか物事を見る事ができなかったんですけど、いまは「みんなで作っている作品に関わっている1人である」と思っているので。
 私は出る側だからたまたまみなさんの目につくことが多いですが、どんな作品もそれぞれ現場で必死に戦ってる人たちがいる。だから、私もみんなと一緒に全力で死ぬ気で戦わなきゃいけない。そう思って、演じています。

執筆:藤村はるな、撮影:小島マサヒロ

(更新日:2016年1月10日)

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