馬場徹 | 夢は目指した時点で「目標」に変わる
馬場徹 | 夢は目指した時点で「目標」に変わる
故・つかこうへいさんの代表作のひとつ『広島に原爆を落とす日』で主演をつとめた馬場徹さん。舞台だけでなく、TVドラマ「ルーズヴェルト・ゲーム」「若者たち2014」などに出演し、その演技力と存在感で徐々に注目を集めています。年齢にみあわずストイックな馬場さんが稽古場で行った「あること」とは。そして、公私ともに仲がいいという早乙女太一さんへの思いや、今後の俳優としての目標についても教えてもらいました。
馬場徹
サウナスーツで稽古!?

――いよいよ、9月6日から主演舞台『広島に原爆を落とす日』の公演ですね。つかこうへいさんの代表作のひとつで、今回は再演となりますが、前回(2013年)とはずいぶんキャストが変わったようですね。

馬場徹 (以下、馬場) 今回は若いですね!

――じゃ、前回から続投している馬場さんがまわりを引っ張っていくような感じですか?

馬場『広島』で僕が演じるディープ山崎はすごく台詞が多い役なんです。本当に体力を使う舞台なのですが、まわりの人がエネルギーを出してくれると、すごくやりやすくなります。だから、『広島』は全員でやらないといけない舞台なんです。みんな同じ気持ちにならないとバラバラになってしまう。「とにかく大げさなほどのリアクションをとってほしい」とはよく言います。まず、稽古の段階でマックスを出しておけば、あとは削っていけるんです。いい意味で、楽な方向に持っていきたいですね。

――稽古の段階でマックスを出す……といえば、馬場さんがサウナスーツを着たまま稽古されたという話を聞いたことがあるんですが、これはどういうことなんでしょう?(笑)

馬場去年の『広島』の公演のときですね。稽古が12月で寒かったということもあるんですけど、本番の舞台上が絶対暑くなることはわかっていたので、莫大な量の台詞を暑さで忘れてしまうといけないと思い、それならまず稽古で体を熱中症のようにしてしまおうと思ったんです。酸欠状態になって、頭が真っ白になっても台詞が出るかどうか試そうと考えたんですね。さすがに暑すぎてダメでした(笑)。

――今回は真夏ですし、さすがにサウナスーツは着ませんよね?

馬場はい(笑)。だけど、稽古場ではエアコンを入れてません。冬とは違う暑さ、熱さで稽古をしています。

――『広島に原爆を落とす日』はとても深いテーマを扱った舞台です。馬場さんが演じるディープ山崎ひとつとっても、白系ロシアの混血であるが故に海軍作戦参謀本部から南海の孤島に追いやられ、ついには原子爆弾の投下ボタンを押すことになるという、複雑な役です。それだけ演じる側のエネルギーも必要になるかと思いますが、とくに心がけている部分などはありますか。

馬場つかさんがその台詞にどんな思いを込めているかをつねに考えるようにしています。つかさんは自分の言いたいことを役者に言わせているんじゃないかと思うんです。つかさんは在日の韓国人二世で、それによって、いろいろなことを経験されたと思います。だからこそ斜に構えて物事を見ることができる。今回の『広島』でも、稽古をしていて、台詞のひとつひとつが、本当につかさんが言いたいことを言っているんだな、と感じます。それをうまく言葉遊びをしたり、比喩を使ったりしながら表現しているんです。

馬場徹

――差別をはじめ、さまざまな問題にまつわる人々の怒りや苦しみや悲しみを、大きなエネルギーを費やして描くのがつか作品の特徴だと思います。

馬場だからこそ、役者が間違った解釈をしてしまったら、舞台の上で危険なことを言っているだけになってしまうでしょう。どれだけ正しい気持ちで作品に取り組めるか、正しい解釈をすることができるかが重要になってくると思います。その分、深く台本を読むようになりました。

――つか作品で培った経験は他の作品でも生きていますか?

馬場登場人物が冗談めいたことを言っていても、「この人は本当におもしろいと思って言っているのかな?」と考えるようになりました。ひょっとしたら、そう言わざるを得ない状況なのかもしれない。そう言っていないと自分が壊れてしまうような状況なのかもしれない。一つの台詞に対して、いろいろ視点を変えながら解釈するようになりました。

次なる目標は「悪役」

――それにしても、17歳の頃は「舞台はイヤだ」と思っていた馬場さんが、よくぞここまで舞台にのめり込んでいますね(笑)。

馬場本当にそうですね(笑)。自分でも驚いています。

――同年代の俳優の方で、仲の良い方、あるいはライバルとして意識されている方はいらっしゃいますか?

馬場早乙女太一君です。僕より3つ下なんですけど、彼は本当にすごいです。大衆演劇というパワフルな世界の中で、小さい頃からものすごく厳しい環境の中でやっているので、頭の中の年齢や感覚が明らかに23歳のものではありませんね。勝てないですよ。一緒にお仕事することも多いですが、プライベートでも一番よく会う友人です。お互い刺激し合っていますね。

――では、馬場さんが尊敬する、あるいは目標にしている俳優さんはいらっしゃいますか?

馬場独特の雰囲気を持っている堺雅人さんも好きですし、アクションに憧れていたので真田広之さんも大好きです。あと、堤真一さんも好きですね。……結局、演劇人が好きなのかもしれません。演劇もやって、映画やテレビでも活躍できる人たち。テレビを見ていても、こうなりたい、と思える先輩たちです。

――馬場さん自身の今後の目標をお聞かせください。

馬場僕、悪役をやりたいんですよ。正義のヒーローも素晴らしいんですけど、悪役のクセのあるところがすごく好きで、憧れがあります。

馬場徹

――『ルーズヴェルト・ゲーム』でも、憎まれ役のイツワ電器野球部の投手・如月を演じた鈴木伸之さんはとても印象に残りましたからね。

馬場いいなぁ……と思って見ていました(笑)。

――最後に、今、世の中で自分の力を発揮できないまま、モヤモヤした毎日を過ごしている人たちが若者を含めてたくさんいると思います。そのような人たちに向けて、馬場さんからアドバイスなどがあればお聞かせください。

馬場そんなこと、僕が言っちゃっていいんですか?(笑) でも、これは本当に思うんですけど、無理して夢とか持たなくていいと思うんですよ。「やりたいことを見つけなさい」みたいなこと言われているかもしれませんが、無理して何かを見つけなくてもいいと思っているんです。生きていくこと自体が大変なんですから。

――なるほど。

馬場僕はハリウッドの映画に魅了されて、役者になるという「夢」を持ちましたが、夢は目指した時点で「目標」になりますよね。生きていくうちに、何か目標は出てくると思うんですよ。たとえば、アイドルが好きな人なら、アイドルと会うことが目標になるでしょうし。「ライブに行きたい!」と思う気持ちが生まれて、それを行動につなげれば毎日が楽しくなる。僕は楽しく生きたほうが絶対にいいと思います。大変なことが多いんですけど、どれだけ大変なことを楽しめるかが一番重要だと思います。好きなことを見つけて楽しんだほうがいいと僕は思いますね。

構成:大山くまお、撮影:吉澤健太

(更新日:2016年1月10日)

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