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『薬屋のひとりごと』“手抜き”騒動から作画技術を考える 視聴者の肥えた目がもたらすもの

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『薬屋のひとりごと』©日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会

 アニメ制作におけるデジタル技術の進化により、素人でも一目でわかるほどの映像美を持つ作品が増えている。映画並みの高品質な作画を特徴とする作品も増えつつある今、『薬屋のひとりごと』第4話「恫喝」のあるシーンについて賛否が分かれた。話題となったのは、帝が猫猫に話しかける引き画のデフォルメ表現の描き方。この作画に対し、一部のファンから「手抜きではないか」という声が上がり、注目を集めた。

参考:『薬屋のひとりごと』のヒットは“必然”だった? 確かな実力者たちが揃った信頼の制作陣

 アニメーションにはいくつかのスタイルがある。「フルアニメーション」は、背景を省略せず、細部まで描いた原画を使用し、1秒間に24枚の絵を再生することで、より自然で実写に近い動きを実現する。一方、「リミテッドアニメ」では、絵の一部を省略し、原画の数を減らすスタイルだ。リミテッドアニメの場合、会話シーンでキャラクターの口元のみを動かすことが多く、背景を変えずにキャラクターだけを動かすこともあるという。『薬屋のひとりごと』では、遠いカットではディテールを省略するという意図的な手法が採用されていたことが明らかになった。

 指摘の対象となった『薬屋のひとりごと』第4話は、作画の素晴らしさで「神回」と評されることも多い。このエピソードでは、『葬送のフリーレン』のノンクレジットOP映像や「アウラ」の自害シーンの原画を手掛けたもああんが作画監督を務めており、原画7人、第2原画はなしという体制で制作が進められている。第4話では毒見のシーンで顔を隠す瞬間のような細かい所作や、猫猫が梨花妃にお粥を食べさせるシーンなど、各シーンでキャラクターの動きが緻密に描かれていた。感情の微妙な変化を表現する細やかなキャラクター描写は、視聴者の記憶に深く残ったのではないか。

 一方で、デジタル技術の進歩に伴い、従来の省略された作画手法に課題が生じていることを指摘する声も。例えば、細部がより明確に見えることや、動画スタッフが原画を正確に扱えなくなる問題などが挙げられている。また、背景のディテールがどんどん詳細に描かれるようになることで、静止画の背景と動画のキャラクターの線画の間に生じるディテールの違いに残る“違和感”をどのように埋めるかという議論も終わりが見えない。作画と背景の調和が取れず、美しくない画が見られる問題に対する解決策を模索する監督は多いものの、まだ突破口は見つかっていないのが現状だ。

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 近年ではCGと作画の組み合わせも、ヒット作を中心に徐々に一般的な手法となりつつある。例えば、『呪術廻戦』のテレビシリーズでは全て作画で表現されていた呪霊を、劇場版では一部CGで表現しているとのこと。ストーリー上「数の多さ」が重要になるムカデの呪霊と魚の呪霊は、膨大な作業量が必要になるため、作画ではなく3Dが選択されたという。

 『鬼滅の刃』においても、CGと作画の組み合わせが活用されている。例えば、キャラクターと直接関わらないシーンで、炭治郎たちの道案内をする鴉にはCGが用いられている。動物を自然に描くのは難しく、身近な参考がない場合には特に安定した表現を実現することが難しい。こうした背景から、作画にかかるコストを削減するためにCGを使用する手法が広まっている。

 また、作画のレイアウトを構築するためにCGでモックアップを作成する方法もある。特に建物など、ゼロからの作画が大変な場合、作画作業に入る前にCGで初期モデルを作成することが一般的だ。『鬼滅の刃』での珠世の診療所や鬼殺隊本部は、このような方法で作画に先駆けてCGモデルが作成されている。

 日本のアニメ業界が技術の向上によって大きく進歩していることは、間違いなく素晴らしい成果だ。しかし、今回の「省略作画」の議論のように、より洗練された視聴者の目が増えてきたことによる新たな影響も考えられる。デジタル変革期にある今、業界が直面しているこれらの重要な問題に向き合う必要があるのではないだろうか。
(文=すなくじら)

 
   

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