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朝ドラになぜ“働かない父”が登場するのか 『ブギウギ』脚本・櫻井剛が描く心情の揺らぎ

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『ブギウギ』写真提供=NHK

 脚本家が足立紳から櫻井剛へ。朝ドラことNHK連続テレビ小説『ブギウギ』第9週「カカシみたいなワテ」は櫻井の担当週で、日本に戦争の気配が色濃くなっていくなか、梅丸楽劇団が解散、歌う場を失ってしまったスズ子の苦悩が描かれた。

参考:朝ドラ『ブギウギ』第9週「カカシみたいなワテ」を振り返る スズ子(趣里)の新たな決意

 朝ドラは基本、ひとりの作家が全話を書くが、時々、複数作家が関わることもある。『舞いあがれ!』(2022年度後期)や『エール』(2020年度前期)が複数作家体制だった。メインライターでないと、どこかスピンオフ的な、箸休め的な印象を覚えることもあるが、『ブギウギ』ではそういう印象はなく、比較的、なめらかに引き継がれている。むしろ、時代が戦争に突入していく重要な局面を櫻井が担い、かなり責任重大なのではないか。

 櫻井剛は、芦田愛菜と鈴木福の共演で大ヒットした『マルモのおきて』(フジテレビ系)で注目された脚本家で、昨今ではNHKのよるドラ『あなたのブツが、ここに』(2022年)も好評だった。登場人物が実直に、健気に状況に立ち向かっていくようなヒューマンドラマに定評がある。『ブギウギ』第9週でも、登場人物それぞれの心情のゆらぎを丹念に描いていた。

 まずスズ子(趣里)は、ツヤ(水川あさみ)の死から1年、戦争が激しくなったため、華美な演目が禁止され、「三尺四方」の範囲内で踊ることを強いられ、抑圧されていく。心のままに歌い踊ることで観客の心を動かしてきたスズ子なので、動けないことは武器をもぎとられたようなものだ。

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 下宿には、梅吉(柳葉敏郎)が居候して1年。ツヤの死を誰よりも嘆き悲しみ、抜け殻のようになった梅吉は、スズ子のお金で飲んだくれていた。梅吉ばかりが哀しみ過ぎて、スズ子は悲しむ隙がない。

 ステージでも、家でも、感情の出しどころがなく、スズ子はどんどん追い詰められていく。そこへ、弟子入り希望の小夜(富田望生)が現れた。住む家がみつかるまでの間、下宿に住まわせたものの、梅吉と小夜が意気投合して、愉快にやりはじめたものだから、スズ子は疎外感を覚えてますます苛立つ。

 優しく寄り添ってくれる小夜のほうが本当の娘のようだと言われて激怒。かつてない父娘喧嘩となり、スズ子と梅吉は口を利かなくなってしまった。が、梅吉が、屋台で、スズ子の悪口を言った客と喧嘩をしたことを知って、仲直りしたのが、週の終わりの第45話。そして、スズ子は、逆境のなかでも歌い続けようと決意する。

 妻を亡くして飲んだくれ、子供に迷惑をかけるような毒親化した人物はこれまでの朝ドラにもいる。『おちょやん』(2020年度後期)のテルヲ(トータス松本)や、『おかえりモネ』(2021年度前期)の信次(浅野忠信)などだ。彼らは、生まれたときからダメだったのではなく、妻を亡くすという、大きな喪失によってやる気を削がれてしまったという理由がある。こういう設定が、近年続いているのはなぜだろう。

 かつて、働かない父というキャラクターは、ヒロインが奮起し自立するための装置のようなところがあった。だが、彼らにも言い分を作り記号化を避けることで、物語に深みが出る。おりしも、震災以降、大きな喪失体験をもった日本人が増えていることも、要因かもしれない。あるいは、近年、ハラスメント行為には厳しい目が向けられているため、単なる横暴な人物を描くことに配慮が成されているということもあるだろう。時代の変化とともに人物描写にも変化があることは興味深い。とはいえ、気になるところもある。

 ただ、飲んだくれて、下宿の前でだらしなく寝ているとか、朝もなかなか起きないとかいう描写は、まだまだ記号的であり、ほかの表現の模索がないものかと感じる。これは断じて“飲んだくれ父ちゃん禁止”“ダメ父禁止”と、大日本国防婦人会や警察のように頭ごなしの否定ではない。お決まりのものではなく、さまざまな表現を期待するということである。

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