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前作以上の困難に挑んだ『毒戦 BELIEVER 2』 敢闘賞は“メガネ姿のヤクザ”ハン・ヒョジュ

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『毒戦 BELIEVER 2』Netflixにて独占配信中

 「その意気やよし!」という企画がある。困難な戦いに果敢に挑む人は応援したくなるものだ。中島みゆきの「ファイト!」理論である。とはいえ、現実が残酷であることも忘れてはならない。そんなわけで『毒戦 BELIEVER 2』(2023年)は非常に微妙な作品に仕上がった。残念ながら、そうそううまい話はないものである。

参考:ジョニー・トーの傑作を野心的リメイク! 狂人続出の『毒戦 BELIEVER』は男2人の「情」の物語

 本作は『毒戦 BELIEVER』(2018年)の続編だ。この1作目は、香港が誇る巨匠ジョニー・トーが手掛けた傑作『ドラッグ・ウォー 毒戦』(2012年)のリメイクである。『ドラッグ・ウォー 毒戦』は、それまで香港で活躍していたトーさんが、中国大陸で撮影した映画なのだが……当時の大陸は、まだトーさんを受け入れる準備が整っていなかった。おまけにトーさんの作風は、善人も悪人も死ぬときは死ぬというドライすぎるもの。それは「警察こそが絶対正義」な大陸の規制と決して相容れないものだった。撮影中に、やんややんや言われてブチギレたトーさんは、逆ギレ気味に警察を血も涙もない正義の組織として描き切って、映画は伝説となったが、以後トーさんは大陸と距離を取った。

 そんないろいろとワケありの傑作をリメイクした『毒戦 BELIEVER』は、まさに「その意気やよし!」の映画だった。作り手たちは原作を「ハードボイルドの権化」とリスペクトしつつ、自分たちの持ち味で勝負を挑んだのである。「イ先生」なる謎の麻薬組織の長を執拗に追う刑事と、彼に協力する謎めいた青年の物語をウェット&ハッタリ全開で描いたのだ。次々と出て来る狂人たちに、炸裂するアクション。そして刑事と青年の、友情とも利害関係とも違う不可思議な絆と「真相はあなたの心の中に……」な結末もバッチリ決まった。原作とは全然違うけど、これはこれでと受け入れられる快作となったのだが……。

 その続編である本作は、さらなる困難に挑んだ。前作がイイ感じで終わっているのに、その続編である。おまけに困難は重なるもので、主要キャストも変わってしまった。1作目では明らかにならなかった謎がある、というアプローチで新たな物語を作り、そんな困難な状況に挑んだわけだが……やはり結果は厳しいものがあった。

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 まず、そもそも最大の謎である「イ先生」に関するネタが前作で割れてしまっているので、どうしても盛り上がりに欠ける。前作があえて答えを提示せずに余韻を残して終わったので、本作の存在そのものが蛇足とは言わないまでも、「答え合わせ」にしかならず、野暮ったく感じた。何より監督の暴力人(ばいおれんちゅ)としての創意工夫が決定的に弱い。前作のようなキレのあるアクションはなく、中盤のジャングルの追跡劇では、今日日なかなかに厳しいCGが炸裂する。全体を通して慣れないことをやっている感が強かった。

 とはいえ、頑張りの痕跡も確認はできる。敢闘賞は、間違いなく新キャラを演じたハン・ヒョジュだろう。ビッグナイフの異名をとる武闘派女ヤクザを熱演しており、異様にデカいおじさんメガネ姿で人を殺しまわるのは素晴らしいものがあった。本年度“最優秀メガネっ子”は彼女に進呈したい。

 観ているあいだには、一応あれこれ話は進むので退屈はしない。しかし、観終わったあとには、『こち亀』(『こちら葛飾区亀有公園前派出所』)の80~90巻くらいの両津さんが渋い顔でそうするように、「う~む、微妙だな」と呟かざるを得ない。特に前作の余韻を大事にしたい人には、あまりオススメもできないのが正直なところだ。

 ただし、粗暴でクレイジーでヤキモチ焼きのメガネっ子という、あまり見かけないタイプのキャラが出てくる点と、無謀な企画に挑んだ姿勢は「その意気やよし!」と評価したい。それこそ香港映画だって、死んだ主役級のキャラが双子という形で復活した奇跡の傑作『男たちの挽歌 II』(1989年)や、完璧に終わった映画の完璧な前日譚『インファナル・アフェアII 無間序曲』(2003年)といった、無謀とも言える続編に挑み、これらを前作と並ぶかそれ以上の傑作にし仕上げてきた作品を生み出してきた。もちろん、とにかくやってみるという姿勢は粗製濫造と紙一重ではある。しかし無茶な企画で多くの屍を築くことで、ジャンル全体のレベルが底上げされること、そして屍のうえに輝くような傑作が生まれることも事実だ。織田裕二の昔の映画でも「挑まなければ始まらない」と言っていた。なので本作『毒戦 BELIEVER 2』のような無鉄砲な姿勢を、わたくし加藤よしきは応援しています。

(文=加藤よしき)

 
   

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