
多額のお金が動く、株式の譲渡。しかし、法的に有効な株式であっても「資産」として認められないものはすべて「無価値」になってしまうことがあると、税理士の伊藤俊一氏は言います。本記事では、同氏による著書『税務署を納得させるエビデンス 決定的証拠の集め方』シリーズ(ぎょうせい)から、債務超過で破綻した銀行の株式が資産として認められなかった判例をもとに、株式が価値を持つ定義について解説します。
譲渡所得の基因となる株式の意義
Q
株式について譲渡所得の基因となる資産の意義について基本的考え方を教えてください。
A
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下記の国税情報及び各種考え方が重要になります。まずは下記の裁判例における「株式とは?」という基本的考え方を理解します。
解散する銀行の株式は「資産」になるか?
情報 調査に生かす判決情報第39号 平成27年12月 ~判決(判決速報№1365【所得税】)の紹介~ 東京国税局課税第一部国税訟務官室
《ポイント》
株式が所得税法33条1項の規定する譲渡所得の基因となる「資産」に該当するためには、自益権や共益権を基礎として一般に経済的価値が認められる必要がある。
債務超過で破綻した銀行の創業者、株式を譲渡し「損失」を確定申告したが…
(事件の概要)
1 本件は、X(納税者)が、A銀行株式会社(以下「本件銀行」という。)の株式を譲渡したことにより株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上損失が生じたとして所得税の確定申告をしたのに対し、
Y(課税庁)が、当該株式の経済的価値は譲渡時において喪失しており譲渡所得の基因となる資産に当たらないから、当該株式の譲渡損失を株式等に係る譲渡所得等の金額の計算の基礎に含めることはできないとして行った所得税の更正処分等の適否が争われている事案である。