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「現代ダンジョン配信もの」に傑作誕生! 『【悲報】お嬢様系底辺ダンジョン配信者~』が面白い

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 ネット小説の流行り廃りは早い。ある設定やアイデアを使った作品が人気を集めると、それに追随する作品が一気に増加。たちまちジャンルへと成長する。しかし一定期間(個人的な感覚だと半年くらいか)が過ぎると、また別のジャンルが生れ、人気が移行してしまうのだ。もちろん、まったく新作が書かれなくなるわけではないが、かつての勢いや熱気が戻ってくることはない。「悪役令嬢もの」のように、物語の基本フォーマットとして定着するものもあるが、例外中の例外。短いサイクルで人気ジャンルが変化するのが、ネット小説の特徴の一つといっていい。

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 では現在、人気のあるジャンルは何か。これまた個人的な感覚になるが、「現代ダンジョン配信もの」だろう。舞台は、ダンジョンのある現代(未来や現代と似た別世界の場合もある)。ダンジョンの中で探索者が、VTuberのように配信をすることが当たり前になっている。そんな設定をベースにした物語のことである。

 人気ジャンルは、面白い物語が多い。ということで数ヶ月前から「現代ダンジョンもの」を漁っていたのだが、その中で特に優れていたのが、カクヨムで連載されている、『【悲報】お嬢様系底辺ダンジョン配信者、配信切り忘れに気づかず同業者をボコってしまう~けど相手が若手最強の迷惑配信者だったらしく動画がアホほどバズって伝説になってますわ!?』だ。この手のネット小説特有の長いタイトルはあまり好きではないので、見かけたときに読もうかどうしようか迷った。しかし作者が、ドラゴンタニシではないか。ちなみにドラゴンタニシは、アニメ化もされたライトノベル『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』の作者の赤城大空である。『下ネタ~』は、満載された下ネタだけでなく、しっかりとした設定とストーリーで読ませる、愉快な作品だった。ならばこれも面白いはずだと読んでみた。いやこれ、本当に面白いよ。そう思ったのは私だけではないようで、たちまちガガガ文庫から赤城大空名義で出版されたのだ(本のタイトルは、ほんのちょっとだけ変わっている)。

 基本的なストーリー・ラインは、「現代ダンジョン配信もの」のセオリーに従った、オーソドックスなものだ。主人公は十六歳の山田カリン。子供の頃に見ていたアニメ『ダンジョンアライブ』のキャラに憧れ、ドレス姿で紅茶を嗜みながら、華麗な動きとお優雅な振る舞いでモンスターを倒す、お嬢様探索者を目指した。しかしダンジョン探索の様子を生配信しても、視聴者はほとんどいない。なぜなら、あまりにもカリンが強すぎて、フェイク動画と思われていたからだ。ところがある日、迷宮壁を爆破しようとしていた迷惑系配信者を一撃で倒した。その相手が若手最強の影郎であり、気づかないまま一部始終が配信されたことで、カリンは大バズリするのだった。

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 さまざまな理由で底辺配信者だった主人公が、その桁外れな実力を配信で知られ、人気者になっていく。いままで何度、このパターンに出会ったことか。それなのに、この物語に夢中になった。理由の一つは、主人公のキャラクターだ。アニメのキャラに憧れ、お嬢様言葉を使おうとするが、咄嗟のときにはチンピラ喋りになる。メチャクチャな強さを持っているが、自分の実力はせいぜい中堅どころだと思っている。いろいろな意味でズレてる少女が、配信をフォローするようになったファンたちと賑やかなやり取りをしながら、常に予想外の行動に出るのだ。この予想外という部分が重要。次に何が起こるか分からず、だからこそ先が気になってページを捲らずにはいられないのである。それにしても作者、よく突拍子もないことを考えるものだ。

 また配信中のフォロワーのメッセージや、掲示板の魅力も見逃せない。VRゲームを舞台にしたネット小説から掲示板の挿入というスタイルが広まったと思うが、大きな発明といっていい。もともとエンターテインメント・ノベルは、読者が主人公に感情移入するものだ。だから主人公が、周りの人から褒められると、読んでいるこちらまで気持ちよくなる。掲示板(とメッセージ)を使うと、そのような〝主人公褒め〟が、簡単にできるのだ。

 もちろん褒め方にもセンスが必要。これが作者は抜群に巧い。フォロワーたちは、ときにカカリンに突っ込みを入れ、ときに彼女の行動に慌てる。ハイテンションなやり取りの中に、笑えるネタを山のようにぶち込む。一方で、カリンの凄さを際立たせる。こちらも配信を見ているような気もちになり、ヒロインに惚れ込んでしまうのだ。

 なお、カクヨムの連載は、読者の応援コメントも面白く、これも含めて一つの物語になっているような感がある。コメンに書かれた言葉が、物語の中で使用されるようなったのも楽しい。こういう作品があるから、ネット小説を漁るのは止められないのだ。

 
   

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