top_line

無料ゲームで脳トレしよう
今すぐ遊んでみるならコチラ

マカロニえんぴつの歩みには前例がなかったーー兵庫慎司の『マカロニえんぴつ 青春と一緒』評

Real Sound

 バンドブームが終わりかけた頃に音楽業界に入って以降(電気グルーヴやスピッツがメジャーデビューした時期です)、そういう例を、何度も見てきた。

「みんなデザインを信藤三雄のコンテムポラリー・プロダクションに頼むんだなあ」とか。「カメラマンは、このタイプのアーティストなら平間至、あのタイプなら野村浩司に依頼するんだなあ」とか。

 レコーディングやマスタリングのエンジニアもそう、イベントやフェスへのブッキングのしかたもそう、タイアップの取り方もそう、MVの作り方もそう。

 しかし、江森さんはそうではないことが、読むとよくわかる。たとえばMVの監督、リード曲ごとに、誰にどんな理由で依頼したのかが、こと細かに書かれているのだが、すでに実績がある有名どころに依頼したのは「夏恋センセイション」の加藤マニぐらいで、ほかは自分でYouTubeで見つけた、MVを撮ったことのないような人に、次々と頼んでいるのである。

 なぜそうしたのか。当時のマカロニえんぴつは無名でカネがなかったから、という事情もあったのかもしれないが、前例を参考にすることが、このタイミングのこのバンドにとってベストではないと思った、だから自分で正解を探すしかなかった、という方が大きいのではないか、と思う。

広告の後にも続きます

 バンドの育て方や導き方も然りで、「江森はこうする」と「マカロニえんぴつだからこうする」が合わさって、独自のものになっている。はっとりの考え方とも一致しているが(本書にもそういう記述がある)、流行りやマニュアルに乗らない、乗ってはまずい、という方針が貫かれている。

 あと、個人的に、特に改めて気づかされたこと。インターネットの時代になって(なんせその前から業界人だったもんで)、スカウトする側はバンドを見つけやすくなっただろうなあ、と漠然と思っていたが、だからこそ困難になっている側面もある、という事実だ。

 たとえば、昔は、そのバンドがライブハウスに200人とか集めるようになるとスカウトが来る、ということもあったが、今はそれでは遅すぎる。ファンがゼロに近いような段階で見つけて、将来的にいける存在なのかどうかを、見極めないといけない。

 マカロニえんぴつも、まさにそうやって発掘されたバンドであることも、本書には、非常にリアルに書かれている。

 さらに言うと、最初の音源のリアクションはよかったが、その次の作品から苦労したことや、初の渋谷クラブクアトロが全然埋まらなかったことも赤裸々に書かれていることも、とてもよかった。

 特に笑ったのが、出会った当時のマカロニえんぴつの見た目が「絶望的にダサかった」ことや、「ド直球に言ってしまえば、彼らはファッションセンスがなかったのだ」ということや、マカロニえんぴつというバンド名に意味がないことを知って頭を抱えて、しょうがないから後付けで意味を考えたことまで、いちいち書かれていることだ。

 チーフマネージャーでありプロデューサーである、という立場を考えると、わざわざ書かなくてもいいことである。

 でも書いた。なぜ。事実だから。で、そんな、「音楽的にはとても良い素材だが、このままでは売れないだろう」(本書より)という第一印象だったバンドをどう変えていったのか、という中に、そのへんも関わってくるんだから、触れないのはおかしいだろう、という。

 つまり、チーフマネージャーでありプロデューサーである自分よりも、書き手である自分の方が勝っちゃっているのだ。というあたりも、本書がおもしろい要因のひとつだと思う。

 なお、自分がマカロニえんぴつをマネージメント/プロデュースするにあたり、それより前に東京カランコロンとSAKANAMONを発掘して育てた経験があったことが活きた、ということも、本書には書かれている。

 が、つまりそれは、今のマカロニえんぴつのような、アリーナはあたりまえでスタジアムに指先がかかっている、というくらいでかいバンドのマネージメント/プロデュースは、江森さんにとっても初めて、ということでもある。

 なので、何年か後に、続編が書籍化されるのも、楽しみにしています。

  • 1
  • 2
 
   

ランキング(読書)

ジャンル