TVアニメ「薬屋のひとりごと」(毎週土曜深夜0:55-1:25、日本テレビ系/ABEMA・ディズニープラス・Huluほかにて配信)の第7話が11月18日に放送された。李白から貰った簪を利用し、里帰りを果たした猫猫。久しぶりに再会した“親父”がつぶやいた一言が「意味深」とSNSで注目を集めている。(以下ネタバレを含みます)
■「薬屋のひとりごと」とは
同作は、日向夏の小説を原作とする後宮謎解きエンターテインメント。小説は「ヒーロー文庫」(イマジカインフォス)より刊行中で、「ビッグガンガン」(スクウェア・エニックス)および「サンデーGX」(小学館)でのコミカライズも展開されており、シリーズ累計2400万部を突破。中世の東洋を舞台に、「毒見役」の少女・猫猫が宮中で起こるさまざまな難事件を次々に解決する姿を描く。
TVアニメは長沼範裕監督(「魔法使いの嫁」や「劇場版 弱虫ペダル(2015)」など)のもと、TOHO animation STUDIOとOLM(「オッドタクシー」や「古見さんは、コミュ症です。」など)がタッグを組みアニメーション制作を担当。CVは猫猫役を悠木碧、壬氏役を大塚剛央が務める。
■里樹妃へのいじめに心を痛める猫猫
園遊会から一夜明け、武官の高順(CV:小西克幸)が猫猫のもとにやってきた。高順から渡されたのは、昨日玉葉妃(CV:種崎敦美)が食べるはずだった羹(スープ)の入った器。器を受け取った猫猫は、綿と粉と筆を用意し、指紋鑑定を始める。
現代でも事件現場などで使われるこの方法で器についた指紋を調べる猫猫。すると器には4人の指紋が付着していた。羹をよそった者、配膳した者、里樹妃(CV:木野日菜)の毒味役。そしてもう一人、器の縁を触った誰か。そのうちの一人が羹に毒を混ぜたのだろうと猫猫は推測する。
それを聞いた高順が、なぜ里樹妃の毒味役の指紋が付着しているのかと疑問を口に出すと、猫猫はそれを“いじめ”と表現する。前回の様子からしても、里樹妃の毒味役が里樹妃が食べられないものをわかった上で、玉葉妃の食事と入れ替えた可能性は高い。さらに、いじめの根拠として猫猫が挙げたのが、園遊会で里樹妃が着ていた衣装である。
当日、玉葉妃を象徴する色と被っている桃色の衣装を身にまとっていた里樹妃。当初、猫猫は空気の読めない里樹妃が自ら選んだものと思っていたが、毒味役の行いを知り、それもまた侍女たちによるいじめの一環であることに気づいた。つまり、侍女たちは里樹妃に恥をかかせようとしたのだ。
里樹妃は元夫である先帝が亡くなった後にその息子である現帝の妃となった。年若いことに加え、そのことが周りの反感を買っているのだろう。それにしてもやり方が汚すぎる。「敵だらけの後宮の中で 妃が真に信じられるのは自分の侍女たちだけです」と猫猫。里樹妃も侍女たちを信じ、勧められるがままにあの桃色の衣装を着たのだとしたらあまりにも切ない。
猫猫の表情にも静かな怒りが宿る。それでもなお、壬氏や高順の前で毒味役を咎めなかったのは彼女の命を守るため。結果的に里樹妃は毒を飲まずに済んだが、悪意を持って食事を入れ替えたことがわかればただでは済まないだろう。冷静に物事を捉えつつも、思いやりに溢れた猫猫の言動に感動した。
■玉葉妃にからかわれる壬氏が可愛い!
そんな猫猫はどんなところで生まれ育ったのか。気になり始めた矢先、彼女のルーツを知る機会が訪れる。園遊会で、壬氏、梨花妃(CV:石川由依)、李白(CV:赤羽根健治)の4人から簪を貰った猫猫。そのことを小蘭(CV:久野美咲)に話すと「じゃあ後宮から出られるんだね」と言われる。どうやら簪を使えば、後宮から出してもらえるように侍女から外の男性にお願いすることができるというのだ。
すると、猫猫は豪胆にも李白のもとを訪れ、実家に一時帰宅するため身元を保証してほしいと頼む。もちろん、武官の李白が下女である猫猫のお願いをただで聞くはずがなく、猫猫はしっかりと切り札を用意していた。それは自身が生まれ育った高級妓楼・緑青館の紹介状。しかも、高級官僚でもなかなか手を出せない三姫の紹介状だ。
さらに猫猫は壬氏と梨花妃から貰った簪をちらりと見せ、他にもあてがあることを匂わして李白の心を揺らす。完全に猫猫の作戦勝ち。李白は誘惑には勝てず、猫猫は見事に里帰りの機会を手に入れた。
面白いのはそこまで賢いのに、簪の本当の意味…つまり壬氏からの好意には猫猫が全く気づいていないということ。その状況を誰よりも面白がっているのが玉葉妃であり、彼女は猫猫を訪ねてきた壬氏に「あの子ならもう行ってしまったわ」と言ってからかう。それを本気に捉え、ショックを受ける壬氏。本人も自分の気持ちに無自覚なようだが、3日間に渡る猫猫の里帰りが猫猫へのほのかな恋心を自覚するきっかけになるのだろうか。
■後宮の“因果”とは?
一方、李白とともに無事里帰りを果たした猫猫。最初に彼女を迎えるのが、緑青館の店主であるやり手婆(CV:斉藤貴美子)だ。婆は猫猫の姿を見るや否や、即座に強烈なパンチをお見舞いする。10ヶ月ほど前に突然人さらいに遭い、姿を消した猫猫。感動的な再会とはならなかったが、婆なりに心配していたのではないだろうか。
その後、李白を緑青館に残して猫猫は実家に急ぐ。猫猫の家は花街の裏通りにあり、そこには華やかな世界とは真逆の景色が広がっていた。立ち並ぶあばら屋に物乞いと梅毒の夜鷹(=売春婦)。猫猫が育った環境の過酷さが伝わってくる。
だが、家に帰れば途端に安心感が猫猫を包み込む。いつもと変わらず、「おかえり」と猫猫を迎える“親父”。後宮での出来事を話しながらともに食事を取り、眠った猫猫の顔を見ながら彼は「後宮とは因果だねぇ」と呟く。因果とは果たして何なのか。未だベールに包まれた猫猫の過去が少しずつ匂わされた第7話に、SNSでは「久々の実家で親子水入らずだな」「何気に傷心の壬氏で遊んでる玉葉すき」「後宮の因果とは猫猫の出生に何か秘密があるのかしら?」という感想がSNSで呟かれた。
◆文=苫とり子
※種崎敦美の崎は、正しくは「たつさき」
<薬屋のひとりごと>李白とともに里帰りを果たした猫猫…… 事情を知らない壬氏の動揺っぷりにも注目
2023年11月19日