
“推し活”という言葉が定着して久しい。必ずしも周囲に高く評価されていない時代からその姿を追いかけ、特別な存在として魅力を見出し続け、いつしか世間に発見されて“みんなのもの”になっていくーーそんな切ない輝きを閉じ込めたような創作漫画が11月11日、X(旧Twitter)で公開された。阿賀直己さん(@AgaNaomi)による『偶像の恋』だ。
(参考:漫画『偶像の恋』を読む)
朝の情報番組で流れたアイドルのオーディション風景を見て、候補者の「コウヤ」に目を奪われた男子高校生。誰よりも早くコウヤの魅力に気づき、人知れず応援を続けていた彼が、CDショップでコウヤVer.のジャケットに手を伸ばすとーー。
小説家としてデビューし、現在は漫画原作者として活躍している阿賀さんが、仕事の合間に制作してアップしたという本作。「ネットにアップする用の漫画は“全力でやる楽しい趣味”という感覚で制作している」と話す阿賀さんに、本作が誕生した経緯など話を聞いた。(望月悠木)
■アイデアはお風呂で浮かんだ
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――なぜ『偶像の恋』を制作しようと?
阿賀:特に経緯というほどのものはありません。お風呂に入っている時、ふと男の子のモノローグが浮かび、そこから会話や出来事がズルズルと続けて出てきました。それをスマホのメモに書いていたら短いお話ができあがった、という感じです。
――“推し”ということが軸になっている作品でした。お風呂に入っている時、推しのことを考えていたのですか?
阿賀:いえ、私自身に〝推し〟と呼べるような存在はいません。ただ、演劇やライブなどイベントに行くことは大好きです。そういった場所で、ファンの歓声を聞いたり高揚した姿を見たりすると、「すごいパワーだな」といつも思います。何がどうすごいのかを上手く言葉にできないからこそ、物語として頭に浮かんだのかもしれません。
――とにかくファン心理の移り変わりが見事に表現されていた内容でした。主人公の心の揺れ動きを描くうえで意識したことは?
阿賀:誰かを、もしくは何かをものすごく好きになった時の、周囲が見えなくなる感じを表現できるように意識しました。また、純度の高い“好き”ゆえの思い込みの激しさや滑稽さを、モノローグとエピソードで伝えることにもこだわりました。