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「もっと気楽に生きていいんだ」南沢奈央さんを救った”居場所”とは 【好きってなんなん?】

BOOKウォッチ

今日も寄席に行きたくなって(新潮社)

 「推し活」ブームの今、「好き」にまっすぐ生きる人たちは、どんな熱いハートを持っているのか? 「好き」をとことん掘り下げる連載「好きってなんなん?」第1回目は、大の落語好きとして知られる俳優の南沢奈央さんにお話を伺った。

 2023年11月1日、落語愛をたっぷりと語ったエッセイ『今日も寄席に行きたくなって』(新潮社)を上梓した南沢さん。本書でも「もはや生活の一部」「人生観が変わった」と書いているが、落語がそこまで大きな存在となった理由とは。目をきらきらと輝かせて語ってくれた。

南沢奈央さん

悩んでいた頃の出合い

 落語との出合いは高校時代。読書感想文の課題で読んだ、佐藤多佳子さんの小説『しゃべれども しゃべれども』(新潮社)がきっかけだった。くすぶっている若手落語家のもとに、ひょんなことから「しゃべる」ことにコンプレックスを持つ4人が集まり、落語指南を通して成長していく物語だ。

「私ももともと人見知りで、登場人物たちにすごく共感したんです。ちょうど高校1年生の時にこの仕事を始めたのもあって、大人の方とどう接したらいいんだろう、どう自分を表現したらいいんだろうと悩んでいた時期でした。そんな時にこの小説を読んで、『落語を聴いたら私も変われるかもしれない』と思ったんです」

 図書館で落語のCDを借りて聴いてみたところ、言い回しが独特で全然聞き取れないのに、いつの間にか笑っていた。その日から落語のとりこになり、高校生の間は毎日、携帯音楽プレーヤーにダウンロードした音源を聴きながら登下校していたという。

 大学生になってから初めて寄席へ。音だけでも大好きだったが、生で聴く面白さは「全然違いました」。昼の部の5時間弱の間、落語家や「色物」と呼ばれる芸人が入れ代わり立ち代わり登場し、寄席を出る時には「遊園地で一日遊んだ帰り」のような気分に。

「一生の趣味に出合っちゃった、と思いました」

「推し落語家」はどんな人?

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 今やどんなジャンルでも「推し活」が盛り上がっているが、落語ファンも推しの落語家がいる人が多い。東京と大阪の寄席のほか、全国のホールで落語会も開催されるので、追いかけて回っている熱心なファンもいるそうだ。

 南沢さんは、「落語家さんは声で好きになることが多い」とのこと。

「以前稽古をつけてくださったことがある、柳亭市馬(りゅうてい・いちば)師匠の声がすごくいいんです。つやのある声というか、発声が美しくて、まるで浪曲みたい。ご本人も歌がすごくお好きな方なんですよ」

 確かに、話芸では声の存在感も重要だ。美しい声はもちろん、しゃがれ声や高い声など、個性的な声を持つ落語家も多い。「推し落語家さんはいっぱいいます」とはにかむ南沢さん。

 同年代の落語ファンの友達との交流もある。本書では、立川志の輔さんが東京都下北沢・本多劇場で上演した「怪談牡丹灯籠」を2人で観に行き、「やばい!」「やばかった!」と興奮を分かち合ったという、微笑ましいエピソードが語られている。その友達も同じく俳優で、舞台で共演した際に意気投合したのだそうだ。

『今日も寄席に行きたくなって』南沢奈央 著(新潮社)
「私はそんなに友達が多いほうじゃないんですけど、落語好きの友達は増えました。俳優の友達は、この職業だからこその目線で落語を語れるのも楽しくて。『あそこの表情よかったよね』とか『あの言い回し最高だったよね』みたいな話で盛り上がってます」

 さらに、年の離れた人とも共有できるのが落語のよさだ。共演した先輩俳優と一緒に寄席に行くこともあれば、南沢さんだからこそのこんな縁もある。

「友達と言ったら失礼ですけど、立川談春師匠は一番よくご飯に行く仲です。全友達の中で一番です(笑)。親のようでもあり兄のようでもあり、すごく可愛がっていただいています。仕事の相談をしたり、師匠が私の舞台を観てアドバイスをくださったりすることもあります」

 落語ファンはどんな人が多いのか聞いてみると、「人見知りの人はけっこう多い気がします。私がそうだからそう思うのかな」。

「役者の友達もわりと人見知りなほうです。内気なんだけど、落語を聞くとすごく大きく笑うんですよ」

ダメな自分も愛せるように

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