
オープンAIのサム・アルトマンCEOは拍手喝采を送る900人超のソフトウェア開発者らを前に、「いずれは必要なことをコンピュータに頼めばあらゆるタスクをこなしてもらえる時代が来るだろう」と述べた。オープンAIが初めて開催したこの開発者会議には、数十年前にアップルが始め、技術開発に貢献したシリコンバレーのカンファレンスの伝統が取り入れられた。
同社が本社を置くサンフランシスコにあるホンダの自動車販売店跡地で行われたイベントで、最新AIモデル「GPT-4ターボ」が公開された。2021年以降の質問には答えられなかった旧版と比べて性能が向上し、今年4月までの世界情勢や文化イベントに関する情報も検索できるようになった。
さらに、画像分析ができるAIモデル「GPT-4V」の最新版も発表された。このツールを使えば、目が見えない人や弱視の人に画像内容を伝えられることを9月の研究論文で公表していた。
ChatGPTは1億人超の週間アクティブユーザーと200万人の開発者を抱える。アルトマン氏は「すべて口コミで広がっている」と語り、製品が複数あることを強調しながら、特定のタスク用にカスタマイズされたChatGPTを作ることができる「GPTs」という新しい製品ラインナップも発表した。
ペンシルバニア大学でコンピューターサイエンスを研究しているアリッサ・ホワン氏はGPTビジョンのツールをいち早く目にしたところだが、「どれほど複雑な画像であっても、さまざまな種類の素材を記述する機能はとても優れている。ただ、改善の余地はある」と話す。
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限界を試す目的でホワン氏はステーキの画像にチキンヌードルスープのキャプションを付け、チャットボットを混乱させてみた。すると、チキンヌードルスープに関係する画像であるという説明が出力された。
これを目にした同氏は「敵対的な攻撃につながる可能性がある。画像に攻撃的な文章やそれに類するものを入力したら、意に沿わない結果が得られるだろう」と指摘する。
オープンAIが同氏のような研究者に早期アクセス権を与えているのは、一般向けリリース前に最新ツールの欠陥を見つけてもらうためでもある。アルトマン氏は6日のイベントで、安全上のリスクに対処する時間を確保するために「段階的に繰り返して展開する」アプローチを採用していると説明した。
オープンAIが開発者向けカンファレンス「DevDay」でデビューするまでの道のりは、一風変わったものだった。2015年に非営利の研究機関として設立された同社はちょうど1年前、チャットボットをリリースして世界的に有名になり、興奮と恐怖を呼び起こし、AIの急速な進歩のための国際的な安全対策の推進を促した。
カンファレンスが開催された前の週には、バイデン大統領がAI技術に関するアメリカ初の基準(ガードレール)を定めた大統領令に署名した。
国防生産法が適用されるこの大統領令は、オープンAIのほか同社を財政的に支援するマイクロソフト、さらにはグーグルやメタといった競合他社とみられるAI開発者に対し、重大な安全リスクをもたらす可能性のある「高レベルの性能」を持つAIシステムの構築に関する情報を、政府と共有するよう求めている。主要なAI開発企業が今年初めに政府と合意した自主規制を拠りどころとした命令だ。
2023年11月18日