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『ブギウギ』スズ子が“スイングの女王”に 草彅剛演じる羽鳥との練習が成功を収めた理由

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『ブギウギ』写真提供=NHK

 スズ子(趣里)の上京後が描かれた、NHK連続テレビ小説『ブギウギ』第6週。これまでの朝ドラを振り返っても、ヒロインが生まれ故郷を離れ新天地で新しいことに挑戦するというプロットは“あるある”ではあるが、こんなにも奮闘と成功が一つのセットとしてコンパクトに1週で描かれることも珍しい。

『ブギウギ』趣里が向き合い続けた和製ジャズの名曲「ラッパと娘」

 秋山(伊原六花)と東京にやってきたスズ子は、早速梅丸楽劇団の旗揚げ公演に向けて作曲家の羽鳥(草彅剛)とワンツーマンになって、彼の書き下ろし曲「ラッパと娘」の練習に挑んだ。しかし、この練習がなかなか難航する。前日に渡した楽譜を書き直して当日その場でいきなり歌ってもらうアドリブ感からも、羽鳥自身がジャズ的な感覚で何かを引き出したい……むしろ、その即興性の中で生まれる何かに惹かれる性格なのがうかがえる。そのため具体的な助言はなく、“ワクワクしない”や“ジャズっぽくない”という抽象的な理由でスズ子は歌い出しから何度も何度も繰り返し歌わされていた。

 彼女が彼の指導の方法に困惑するのも無理はない。出身の梅丸少女歌劇団(USK)ではいつも必ず“見本”があった。それは歌劇団の歴史であり、尊敬する先輩であり、彼女にとって「大和礼子(蒼井優)」という存在だ。しかし羽鳥の求めるものは、歴史をなぞったり既存をコピーしたりすることではない。「福来スズ子」でいること。彼女としての歌である。

 思い返せば、これまでスズ子の歌が褒められてきた場面は、どれも彼女が誰かに本気で聞かせようと歌うのではなく、自分のためだけになんとなく、時には出鱈目にちょけて歌っている時だった。スズ子の憧れた大和でさえ、特別なものを感じたその歌声にはいつだって“遊び”があった。それが潜在されていることを羽鳥は見抜き、引き出そうとしているのである。

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 だからスズ子が半ばヤケクソになって羽鳥の自宅に乗り込み、彼に対するフラストレーションを全てぶつけた歌は「USKのスズ子」ではなく「福来スズ子」そのものが表現され、羽鳥を昂らせた。一見、言いたいことも言ってきたしやりたいこともやってきた自我の強いスズ子だが彼女も自己のアイデンティティの喪失、歌劇団での立ち位置やイメージづくりなどもがいてきた過去がある。

 友人関係でも、いらないお節介を働かせて失敗したことが何度だってあった。その悩みを経験したからこそ、子供の頃に比べてスズ子が“鈴子らしさ”を出しづらくなったように感じる。彼女が憧れの大和と過ごした最後の練習期間、みんなで会得したラインダンスは協調性やチームワークを体現するものでもあるが、それと同時に“みんなと同じでいる”ことの象徴でもあった。今、スズ子は会って間もない羽鳥という謎めいた人物に思いの丈をぶつけたことで、その協調性の殻を破ったのだ。それを感情的にならず、スズ子が言いたいことが言えそうな雰囲気で接し続けた羽鳥も、大した人物である。

 そして迎えた旗揚げ公演は見事大成功を収め、新聞の見出しには大きく「スイングの女王 誕生」と書かれていた。同じく男性と一緒に踊るという新しい挑戦をした秋山の見出しは、スズ子のものに比べてやや小さい。それくらいヒロインがこんなにも早くに成功を収めたのは異例のようにも感じるが、彼女が成功を掴んだのは新しいことを会得したからではなく本来備わっていた自由さを取り戻せたことによるものなので納得もいく。これからスズ子は羽鳥と共に、新しいことに向かっていくのだ。その旅路で関わりが出てきそうな松永(新納慎也)との関係性も気になるところだ。

(文=アナイス)

 
   

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