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『ブギウギ』趣里が向き合い続けた和製ジャズの名曲「ラッパと娘」 鍵となった自我の解放

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『ブギウギ』写真提供=NHK

 NHK連続テレビ小説『ブギウギ』の第6週となる「バドジズってなんや?」が放送された。秋山(伊原六花)と共に上京したスズ子(趣里)は、松永(新納慎也)や羽鳥(草彅剛)らと出会い、新たな表現の扉を開いていく。今週末には、梅丸楽劇団(UGD)の一員としてスズ子が舞台に立つことに。「ラッパと娘」の歌唱に苦労しながらも乗り越えて、旗揚げ公演で圧巻のパフォーマンスを披露するまでが華やかに描かれた。

参考:伊原六花、『ブギウギ』出演の喜びを語る 趣里は「スズ子になると子犬みたいなかわいさ」

 気になるのは今週スズ子が向き合い続けた「ラッパと娘」という楽曲だ。何度もやり直しをさせられ冒頭ばかり“500回”も練習したこの曲は、羽鳥のモデルである服部良一が作曲し、スズ子のモデルである笠置シヅ子が実際に歌唱していたジャズの名曲である。視聴者の中にも、この1週間ですっかりこの曲に夢中になり、羽鳥の「トゥリー、トゥ、ワン、ゼロ」の掛け声に合わせてリズムにノリたくなっている方もいるのではないだろうか。

 また、歌詞の中でも印象的なのが週のタイトルにもなっている「バドジズデジドダ~」の部分だろう。これは声を楽器のように使う「スキャット」という手法であり、言葉自体に意味はない。スキャットを取り入れた楽曲には、スキャットマン・ジョンの「スキャットマン」や由紀さおりの「夜明けのスキャット」などの名曲があるが、どちらもスキャット部分は言葉の意味を重視した表現ではなく、音声をメロディに乗せたリズムの心地よさを魅力とする。

 第6週では、戦前の和製ジャズの名曲と称される「ラッパと娘」を歌唱することで、スズ子が成長していく様子を描いている。羽鳥はたびたびスズ子に「楽しんで歌っているのか」と問うが、一見すると楽しんでいるかどうかは歌唱のクオリティとは関係がないようにも思える。だが制作部長の辛島(安井順平)がちらりと話した通り、ジャズの誕生の背景には奴隷解放や南北戦争終結後に軍楽隊の楽器が多く流通した歴史がある。さらに即興を用いた自由な演奏が特徴的であることから、ジャズのルーツはスズ子の自我の解放と繋がっているようにもとれる。

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 このような流れからも、ここでスズ子が「ラッパと娘」を自分らしく楽しんで歌うことは、スズ子の成長の側面から見て非常に重要な意味を持つ。「ラッパと娘」は、梅丸歌劇団で培った調和の取れた様式美から頭一つ抜け、“福来スズ子”を作り上げるための一歩として必要なエピソードとなった。

 趣里の歌唱は圧倒的だった。のびのびとした手足、バレエで培ったしなやかな動き、勢いのあるステップや大きな口を開けて笑顔で観客を挑発する様子は、まさに笠置シヅ子のパワフルなステージを彷彿とさせる。毎週の華麗なステージングは『ブギウギ』の大きな魅力といっていいだろう。

 曲の完成には苦労したスズ子と羽鳥だが、「ラッパと娘」を通して2人は理解を深めたのではないか。この先も、多くの傑作を世に生み出すヒットメーカーとスウィングの女王の物語から目が離せない。

(文=Nana Numoto)

 
   

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