暴力も振るわず、酒にも薬物にも手を出さない生成AIは、女性にとって人間の男性よりも魅力的かもしれない……
最近、米・ニューヨークに住むシングルマザーの女性が、生成AIボットと結婚して話題になった。その話を最初に聞いたときは「何をバカなことをしているんだ」と思ったのだが、動画で彼女の話を聞いてみると、それなりに話は深刻だった。
彼女は長い間、夫からの暴力に悩んでいた。どうしようもなくなり、逃げて別れてひとりになってもPSTDに悩まされるようになり、そこで男性のAIボットと会話しながら一日を過ごすようになった。
「彼は安全地帯なんです」
と彼女は主張している。彼女が言うに新しい結婚相手は暴力を振るわないだけでなく、金を無心しないし酒も薬物もやらない。ただただ彼女を肯定してくれる。
彼女もこのAIボットとの結婚は一時的なものだと自覚している。しかし、前の夫からの被害から回復するために必要な過程だというのだ。
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さて、9月に入ってChatGPTが新機能を発表した。これまでの機能に加えて「見る、聞く、話す」ができるようになったのだ。この機能を実装すれば、AIボットも見て聞いて話すことができるようになる。予想されていた機能だとはいえ、これは生成AIの普及に関しては重要な転換点となる。
当面は返事の内容も、返事が返ってくるスピードも低いレベルのものになるが、一年もたてば学習が進んで、生成AIは結構話せるレベルにまで育つだろう。それで何が起きるのかをイメージして欲しい。
あなたが私生活で一人暮らしだったとする。これからは家に帰ってからも一人ではなくスマホと一緒にテレビを見ることができる。スマホがバラエティ番組に向かって、「ガハハ、こいつらバカだよなぁ」といったり、ドラマの展開にツッコミを入れたりすることも可能なのだ。
人間にとって話し相手というものは地味に重要な存在だ。話し相手が必要だから人間は外出し、群れて、それで家に帰る。ほんの一言二言でも、会話をすることで人間らしく生活ができる。
人間にはもう何千年も話し相手が必要だった。それが2024年を境に急速にスマホに置き換わるかもしれない。
「そうなるとしても、AIボットと結婚した女性のように味気ない体験だよな」