
10月2日より放送がスタートしたNHK連続テレビ小説『ブギウギ』。「東京ブギウギ」で知られる歌手・笠置シヅ子の生涯をモデルとした本作は、第1話からパワフルな歌声とダンスが目白押しだった。10月3日放送の第2話では、鈴子(澤井梨丘)が母・ツヤ(水川あさみ)の“義理と人情”という言葉を聞いて、親友のタイ子(清水胡桃)に義理を返したいと思い立つ。
参考:『ブギウギ』第3話、鈴子(澤井梨丘)がタイ子(清水胡桃)の一言で将来について悩む
アホのおっちゃん(岡部たかし)がタダでお風呂に入ることを許しているのは“義理”だと語るツヤ。15年前に香川から大阪に出てきた梅吉(柳葉敏郎)とツヤは思いつきでお風呂屋さんを開業することになった。しかし、開業したばかりのお店には誰一人としてお客さんは来ない。そこに初めてのお客さんとして訪れたのがアホのおっちゃんだった。最初はタダでお風呂に入れることに懐疑的だったツヤもアホのおっちゃんの“人情”に触れ、次第に受け入れるようになっていく。本作のテーマにも通ずるツヤの「せやからおっちゃんは恩人や」という言葉には、人間関係が希薄になってきた現代社会では感じられない、人との優しいつながりが感じられる。
ツヤの話を聞いた鈴子はあることを思い立ち、親友のタイ子のもとへと向かう。何やらタイ子には好きな人がいるらしい。そこでタイ子に手紙を書くように勧めるのだが、これまたうまくいかない。「このままでいい」と現状維持を臨むタイ子に対して、鈴子は「義理返させてーな」とお節介を焼く。鈴子が1年生の時に転校してきた際に、最初に声をかけてくれたタイ子に対して、鈴子はずっと恩を感じていたのだ。だが、タイ子は「気持ちは嬉しいけど、もういいから」と突き放す。タイ子にとって芸者の子や妾の子とバカにされることは耐え難いことだった。一歩踏み出せない理由の奥には家庭環境があることが見え隠れしている。
タイ子と仲違いしてしまった鈴子が相談したのはツヤ。こういう時に真っ先に相談できる相手が母親であることはなんと心強いことか。鈴子のバカにする方が悪いという言い分も十分に理解はできる。そんな鈴子に対してツヤは「誰でも辛いことが1つや2つあるもんや。それを気にせんでええって軽う言うんはお母ちゃんは違うと思うねん」と諭すように語りかける。“義理と人情”とは裏返せば、独りよがりにもなり得る。
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だが、両親から悩みなく育てられた鈴子にとってそれは理解し難いことでもあった。人間関係とはこうして学んでいくものでもある。鈴子はまさに今、人間関係を学んでいるのだ。鈴子が嫌なことが何もないと笑顔で答えると、ツヤの表情が少し曇ったのは花田家にも複雑な家庭環境があることを想像させる。だが、それでも鈴子が天真爛漫な性格に育ったのはツヤが愛情を持って育ててきたからだろう。
意を決して謝罪をする鈴子に「もうええって」と受け入れるタイ子。2人は仲直りのしるしとしてお祭りへと向かうのだった。小さい頃、屋台の人になりたかったタイ子に対して、鈴子は将来はお風呂屋さんを継ぐことを明るく話す。鈴子がタイ子に将来は何になりたいのかと問いかけると、女学校に行きたいと語るが、金銭事情から行くことを諦めていた。本編では軽いタッチで描かれつつも、子どもが置かれているシビアな環境も見えてくる。
そしてタイ子は鈴子のように歌が上手かったら、花咲少女歌劇団に入るのにと語りかける。鈴子は歌って踊れるという職業に心を躍らせる。これが鈴子にとって歌劇団との初めての出会いであり、彼女の人生を動かす第一歩だった。
(文=川崎龍也)