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【山本萩子のMLBプレーオフ至上主義!│前編】球場の盛り上がり、選手の表情、起用法…何もかもいつもと違う独特の魅力<SLUGGER>

THE DIGEST

【山本萩子のMLBプレーオフ至上主義!│前編】球場の盛り上がり、選手の表情、起用法…何もかもいつもと違う独特の魅力<SLUGGER>(C)THE DIGEST
 いよいよ現地10月3日(日本時間4日)からMLBのプレーオフがスタートする。ワールドチャンピオンの座を賭けたシーズン総決算の戦い。『ワースポxMLB』のキャスターを務め、その豊富な知識で業界内をどよめかせている(?)山本萩子さんが「MLBのプレーオフならではの魅力」を語ってくれた(聞き手:久保田市郎/SLUGGER編集長)。
※SLUGGER 2023年11月号の記事を再構成

大谷翔平、藤浪晋太郎、そして鈴木誠也——1994年生まれの3人は試練を乗り越え、ただひた向きに前へ前へと進み続ける<SLUGGER>

――NPBと比べて、ともするとレギュラーシーズンはのんびりした雰囲気もあるMLBですが、プレーオフになると一変しますよね。

 4月の開幕時とは違うチームになっているって言って過言じゃないですよね。選手の気合の入り方もそうだし、目の色や表情一つとっても。もちろん、球場のお客さんの盛り上がり方もそうだし、選手の起用法だって全然違いますよね。いい意味で別競技みたいな。「プレーオフこそがメジャーリーグ」だなっていう感じがします。全員がチャンピオンリングを死に物狂いに取りに行っているのがすごいですよね。その泥臭さも含めてプレーオフのかっこ良さ、魅力であって、メジャーリーグそのものの面白さですよね。

――7月の終わりにトレードで加入した選手でもチームに溶け込んで、とにかく全力でチャンピオンを目指すという感じ。

 そうなんですよね。まさに家族。「全員で、このチームで、この家族でリングを取りに行くんだ」っていう心意気が最高ですよね。全員が本当に同じ方向を向いていることが、個々のプレー一つとっても伝わってくるんですよね。

――お客さんも違いますよね。トロピカーナ・フィールド(※レイズの本拠地。いつもは閑古鳥が鳴くことで知られる)ですら、「普段どこにいるんだよ」って言いたくなるくらい盛り上がる(笑)。

「こんなにいたのか」って感じですよね(笑)。お客さんもプレーオフの楽しみ方を分かっているというか、ここぞという時に盛り上がるから、選手のいいプレーにもつながるんですよね。ファンも一緒になって試合を作る感覚が、レギュラーシーズン以上にありますよね。――アメリカ人にとって日本の応援スタイルは新鮮だって言うじゃないですか。それも分かるんですけど、僕はフェンウェイ・パークとかで、試合の要所に入って徐々に球場全体がザワザワしはじめて、ワーッと盛り上がる時の独特の感じが好きで。あれは応援団がリードする球場では絶対に起きないですよね。

 作り上げてるものじゃないですよね。

――自然発生するのがいいんですよね。それがプレーオフになると、さらに3、4倍の熱量になる。

 内側からにじみ出るような熱さだから、すごい爆発力、圧力ですよね。これがワイルドカード・シリーズから、どの球場でもずっと見られるのはすごい。初戦から全然違う。負けたら終わりのゲームだけじゃなくて、ずっと最高潮の盛り上がりなのが特殊ですよね。テレビで見ててもそれが分かるくらい違います。

――大谷翔平(エンジェルス)が言っていた「ヒリヒリした9月」以上に、プレーオフはヒリヒリしてますよね。

 9月はその前段階ってことなんですよね。そういうチームに行くことができた藤浪晋太郎(オリオールズ)選手は本当に幸せですよね。

――後は、敵地のチームが勝った時の、地元ファンの沈黙。あの残酷な感じもちょっとゾクゾクします。

 アウェーの選手はしてやったりって感じですよね、黙らせてやったみたいな。

――去年、ジェレミー・ペーニャ(アストロズ)がマリナーズとの地区シリーズ第3戦で延長18回にホームランを打った時なんか、アストロズの家族席しか拍手してない、みたいな感じでしたよね(笑)。

 そうそう! 残酷ですけど、そこがまたいいんですよね。ヒリヒリしますよね。

――後は、先ほどもおっしゃっていた選手の起用法。

本当に違いますよね。激アツですよね。――日本では「もっと投げさせればいいのに」っていうニュアンスで「メジャーは100球で先発投手を代えてしまう」と言う人がいますが、それは10月のためと言っても過言じゃないくらい。

 そう! 10月に無茶させるんですよね。私が本格的にMLBを見始めた19年のナショナルズも投手の起用法がすごかったです。マックス・シャーザー、スティーブン・ストラスバーグ、パトリック・コービンのスクランブル登板の連続に本当に衝撃を受けました。「こんなことするんだ」って。ストラスバーグは翌年以降、故障で残念なことになってしまいましたけど、あの起用に応えてワールドシリーズでMVPに輝きましたよね。これぞメジャーという熱さでした。後は、ドジャース時代の前田健太選手もリリーフでものすごいフル回転してましたよね。

――レギュラーシーズンでは連投が続かないようにセーブしながら回していくのが監督の仕事ですが、プレーオフに入ったら逆に「本当に信頼できる数人のピッチャーで行けるところまで行く」感じですよね。

 1試合も負けられないから、残酷な起用法も込みでそういうプランを立てるんですよね。

――17年のドジャースは前田もすごかったんですけど、ブランドン・モローもすごかったんですよ。何しろ、その年のプレーオフ全15試合中14試合に登板するという(笑)。

デーブ・ロバーツ監督、何をやってるんですか(笑)。

――それで、ワールドシリーズでは最後にアストロズ打線にとんでもないホームランを打たれて撃沈するという。

 そうなりますよね(笑)。

――でも、意気に感じて全力で投げる姿も、最後に燃え尽きた姿もカッコ良かったですね。

 先発から中2日でリリーフとか当たり前にするじゃないですか。本当にレギュラーシーズンはそのために調整するんだなって思います。本当に、「プレーオフは何をしてもいい」くらいの感じですよね。いかに相手の勢いを止めるかがすごく重要で、強いピッチャーをとりあえずつぎ込んで、とりあえずこの中軸だけとにかく抑えてこい。いい意味で後先を考えないというか……。――13年にレッドソックスが優勝した時の田澤純一の使い方もまさにそうでしたよね。必ず7、8回のランナーがいる場面で、ミゲル・カブレラ(タイガース)のような強打者に当てる。

 どんな展開でも、どのイニングでもとりあえずここを抑えてほしい、という感じですね。しびれますね。やっぱりそういう、勝負勘みたいな部分は大事だなと思います。プレーオフはとにかく結果がすべてだから、監督がどこでどのカードを切るかがすごく重要ですよね。

 あとは先発投手の交代のタイミングも大事。20年のレイズもワールドシリーズ第6戦で、好投していたブレイク・スネルを6回途中で下ろして、結果としてリリーフが打たれて負けてしまったことがありましたよね。ケビン・キャッシュ監督はデータに基づいて交代に踏み切ったわけですけど、それでもうまくいかなかった……。データだけじゃなくて、その日の調子も大事だし、いろんなところから判断しないといけないんですよね。

――あの試合、スネルが下がった時にドジャースのムーキー・ベッツがロバーツ監督にウィンクしたらしいですね。「これで勝てる」って。

 うわー! そんなことがあったんですか? やっぱり、それだけスネルが良かったってことですよね。

――本当に紙一重の運命、ドラマ。面白いですよね。

 キャッシュ監督の気持ちも分かるんですよね、「やらない後悔をしたくない」というのが。正解がないですよね。本当に起用から見えるドラマは絶対にありますよね。
【後編へ続く】

PROFILE:やまもと・しゅうこ。1996年10月2日生まれ。神奈川県出身。フリーアナウンサー。2019年より『ワースポxMLB』(NHK BS)のキャスターを務める。野球好き一家に育ち、東京ヤクルトスワローズの熱心なファンとしても有名。好きな選手は宮本慎也、「土橋・宮本」の二遊間は永遠の推し。

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