申し分ない投球内容

勝ち星に恵まれていないが潜在能力は高いグリフィン
投げている球を見れば、2ケタ勝利を挙げていても不思議ではない。
巨人のフォスター・グリフィンは来日1年目の今季5勝5敗、防御率2.92をマーク。身長190センチの長身から150キロを超える直球は威力十分で、カットボール、ツーシーム、ナックルカーブ、チェンジアップ、スプリットと変化球も多彩で三振奪取能力が高い。
来日デビュー登板となった4月1日の中日戦(東京ドーム)で、7回3安打無失点の快投で来日初勝利と最高のスタートを切り、4月に月間3勝をマーク。だが、5月以降は打線の援護がない登板が重なったこともあり白星が伸びない。ツキにも見放された。8月23日のヤクルト戦(東京ドーム)で予告先発投手として発表されていたが、試合前の練習中に左側頭部にフリー打撃の打球が当たるアクシデントに見舞われた。頭部打撲と診断され、先発を回避。続く9月6日のヤクルト戦(神宮)でも予告先発投手で発表されていたが、発熱により2度連続で当日の先発回避となった。
仕切り直しとなった同月18日のヤクルト戦(東京ドーム)では、5回2安打無失点の好投。序盤は制球に苦しみ、3回の投球中には左手の親指をなめる仕草が見られた。ユニフォームに血が付着していたことからマメがつぶれたと見られるが、回を重ねてきっちり修正する。4回は山田哲人を遊ゴロ、村上宗隆、ドミンゴ・サンタナをスプリットで連続三振と強力クリーンアップを三者凡退に封じた。47日ぶりの白星は手に入れられなかったが、投球内容としては申し分なかった。
通算203勝右腕も高い評価
シーズン前から、前評判が高い投手だった。原辰徳監督は「最初にビデオで見たときに体の使い方が日本人的だった。必ず日本で素晴らしい成績を収めることができる」と活躍に太鼓判を押し、「ボールの持ち、胸の張りは素晴らしい。強い弓を引いているような感覚でパーン! と。アーチェリーじゃなく弓矢。腕の振りも強い」と称賛していた。
球団OBで現役時代に通算203勝をマークした野球評論家の堀内恒夫氏も、「グリフィンはビーディよりもボールのキレがあって球持ちも良い。腕が遅れて出てくるから、バッターにとっては打ち難いタイプのピッチャーなんだ。しかも、2月の宮崎キャンプからブルペンで走者がいることを想定しながら、クイックの練習も取り入れていた。順応性もあるし、一目見たときから即座に俺は『こいつは使えるぞ!』と思ったものだよ」と週刊ベースボールのコラムで、完成度を高く評価していた。
外国人“沢村賞”左腕のように
5勝止まりという成績は、本人も不完全燃焼だろう。気になるのは来季の去就だ。
他球団の編成担当は、「巨人が契約延長を見送るようであれば、グリフィンは争奪戦になるでしょう。先発ローテーションで2ケタ以上は十分に勝てる。タイプ的には元広島のクリス・ジョンソンと重なる。190センチを超える長身から角度のある直球を武器に、変化球の制球力も安定している。あのレベルの投手はなかなか獲得できない」と評する。
ジョンソンは来日1年目の15年に14勝7敗、防御率1.85で最優秀防御率のタイトルを獲得。翌16年は15勝7敗、防御率2.13でリーグ優勝に導き、外国人投手としては52年ぶりの沢村賞を受賞した。球団史上初のリーグ3連覇に貢献するなど、在籍6年間で4度の2ケタ勝利をマークした。グリフィンも日本球界で活躍する資質を備えている。来季はV奪回を狙う巨人で左腕エースとして白星を積み重ねるか、それとも――。
写真=BBM