
人でごったがえしたランペドゥーサ島の移民・難民レセプションセンターの混乱を極めた様子を受け、一斉に怒りの声があがっている。その矛先は密航を斡旋する業者だけでなく、イタリアのジョルジャ・メローニ首相やヨーロッパ連合の担当当局、そしてチュニジア側のカイス・サイード大統領に対しても向けられた。
一体どういうことなのか。
◆イタリアに押し寄せた移民の数
ランペドゥーサ島には、ざっと24時間の間に120隻を超えるボートが到着。これにより、島のレセプションセンターの滞在者数は一時7000人にものぼった。これは定員の15倍の人数で、島の定住者数を超える。
イタリア内務省によると、今年海路でイタリアに流入した移民の数は、9月16日の時点で12万7000人超と昨年同時期の倍近くに達した。
ランペドゥーサ島はイタリア本土よりも北アフリカに近く、長らく密航斡旋業者のターゲットとなってきた。国際移住機関(IOM)地中海調整事務所の広報官を務めるフラビオ・ディ・ジャコモ氏によると、現在ヨーロッパ行きの主な出発地となっているチュニジアからの移民の場合、イタリアにやって来た全移民の約70%をランペドゥーサ島で受け入れている。
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ヨーロッパでは、2015~2016年の移民危機の時や、さらに最近ではロシアのウクライナに対する全面侵攻の後など、1日あたりの移民流入数が今回をはるかに上回ってもそれに対応してきた。しかし小さい島に短期間で立て続けに移民が殺到したため、対処できない事態になったとディ・ジャコモ氏は指摘する。
今回やって来た移民は少しずつ本土へ送られており、そちらで亡命申請の手続きが進められる。その多くは就労や親族との再会を目指し、ヨーロッパ内のほかの地へ向かうことを希望している。
◆移民の詳細
チュニジアを出てランペドゥーサ島に到着するボートに乗船しているのは、コートジボワール、ギニア、カメルーン、ブルキナファソ、マリ、そしてチュニジアなど、アフリカ各国の市民である。その多くが、ヨーロッパへの出航を決意する前に何年間かチュニジアで居住、就労していた。
IOMによると隣国のリビアを横断してからチュニジアに入国し、そこから移民としてやって来る人々も増えている。例えばエジプト、エリトリア、スーダンの市民などが挙げられるが、これらの地域ではライバル関係にある軍指導者の間で繰り広げられている対立の影響で、4月以降すでに400万人超が退去を強いられている。
ヨーロッパ行きの密航船に乗っているのは、大半が若い男性か単身の未成年者だ。女性や子供の姿も見られるが、数は少ない。
◆移民が急増した背景
移民の専門家によると、地中海で発生した暴風雨ダニエルの影響で、チュニジア沿岸部の都市スファックスとその周辺の密航斡旋業者が数日間にわたり休業せざるを得ず、停滞が生じた。
2023年9月30日