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ドニー・イェンが世界中から尊敬を集める理由 最高を更新し続けるアクションの凄み

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 『修羅雪姫』は小池一夫原作の実写邦画作品であり、後に特大ヒットシリーズ『キングダム』(2019年)を撮ることになる佐藤信介のキャリア初期作だ。ドニーさんが邦画に関わった唯一の作品であり、アクション監督としてダイナミックな剣戟アクションを手掛けている。

 『ブレイド2』は伝説的アメコミ映画『ブレイド』(1998年)の続編にして後のオスカー監督ギレルモ・デル・トロのキャリア初期作。この映画でドニーさんはファイト・コレオグラファーを担当し、少ないながらも出演も果たしている。もっとも、『ブレイド2』での仕事はドニーさんにとって不満の残るものとなった。

 というのも、香港においてアクション監督はアクションシーンにおいて時に監督より強い権限を持つ。アクション監督はアクションの振り付けだけではなく、カメラアングルからフィルムスピード、編集にも関与する。一方ハリウッドでは「アクション監督」という役職は存在せず、スタント・コーディネーターやファイト・コレオグラファーが振り付けを考え、基本的にカメラアングルや編集には手を出すことはできない。つまりどのような振り付けを考えても監督にアクションへの造詣がなければ、そのアクションシーンは散々なものとなる。そしてドニーさんにとって『ブレイド2』はその代表例となった。

 しかしそんなドニーさんにもキャリア転換期が訪れる。まず最初がドニーさんがアクション監督(と共同監督)を務めた『ツインズ・エフェクト』(2003年)。まるで『ブレイド2』への意趣返しとでもいわんばかりにキレキレのヴァンパイアハント・アクションを手掛け、香港のアクション監督に贈られる最も栄誉ある賞として知られる香港電影金像奨 動作設計部門をはじめて受賞した。

 そして2005年。ウィルソン・イップ監督の香港ノワール映画『SPL/狼よ静かに死ね』(2005年)で数年ぶりの主演とアクション監督を務める。この映画でドニーさんは世界に先駆けて実験的にMMA(打・投・極)を導入し、リアリズムとスタイリッシュを高い次元で両立させた。特に警棒とナイフを使ったウー・ジンとの路地裏ファイトは今なお伝説と呼ばれるほどクオリティが高く、そのリアルさは本当に戦っているところを撮影したのではないかと錯覚するほどだ。この映画でドニーさんは完全にアクション監督としての個性「振り付けに見えない振り付け(Choreograph the unchoreographed)」を確立。再び香港電影金像奨の動作設計部門を受賞した。続く2007年。ドニーさんは『導火線 FLASH POINT』で本格的にMMAを導入した。

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 『ジョン・ウィック』シリーズのアクションの特徴は、タクティカルなガンアクションに投げ技と極め技を交えた通称“ガン・フー”だろう。そんな『ジョン・ウィック』のアクションを手掛けるのは、チャド・スタエルスキ&デヴィッド・リーチ率いる「87Eleven Action Design」だ。彼らのYouTubeチャンネルを覗いてみると2013年の3月に「Flashpoint Fight Choreography Practice」という『導火線 FLASH POINT』のラストバトルを完全コピーした練習動画を挙げている。これは『ジョン・ウィック』(2014年)が撮影開始される7カ月ほど前の出来事である。また、2012年に香港のチャリティーイベントでドニーさんと共に登壇したキアヌ・リーブスは、『導火線 FLASH POINT』をお気に入りの一本として挙げている。

 今や『導火線 FLASH POINT』は現代アクションの教本として知られている。世界中のスタントマンたちが『導火線 FLASH POINT』のアクションシーンを分析し、作品に活かしているのだ。実際『導火線 FLASH POINT』のアクションを観てみると、異次元のクオリティに目を見張る。リアリズムを追求したMMAアクションはどこまでも痛々しく、泥臭くなるスレスレのところでキレ味の鋭い打投極の攻防を展開している。このアクションの凄いところは「パンチしてガードして反撃」といった基本的なリズムの攻防がほとんど存在しないことだ。

 粗々しいリズムのアクションは、それぞれが別個の生命体として命を削り合っているような印象を受ける。まさに「振り付けに見えない振り付け」なのだが、どのようにしてこんなアクションが可能となっているのかよくわからない。曰く「あえて振り付けのタイミングをずらしている」らしいのだが、技術的なことはさっぱりわからない。とにかく『導火線 FLASH POINT』は世界中の基礎がしっかりしている格闘アクションを観れば観るほど、異次元のクオリティだとわかる。

 『導火線 FLASH POINT』の公開から12年ほど経ったが、今でも格闘アクション映画におけるベストバウトにこの作品を挙げる人は多いだろう。それほどまでにエポックメイキングな作品なのだ。『導火線 FLASH POINT』で現代アクションを確立し、それが「87Eleven Action Design」に影響を与え、そんな彼らが「ジョン・ウィック」シリーズのアクションを手掛け、やがてドニーさんが『ジョン・ウィック:コンセクエンス』に出演し、異次元の挙動をフィルムに焼き付ける。まるで星の巡り合わせみたいな話だが、色んな人のアクションに対する情熱によって『ジョン・ウィック:コンセクエンス』という最高のアクション映画が結実したのは明らかだろう。

 ちなみに『マトリックス』で当時キアヌのスタントダブルを務めていたチャド・スタエルスキ監督はユエン・ウーピンに影響を受けて「87Eleven Action Design」を設立したそうだ。ドニーさんがユエン・ウーピンからアクションを学んだように、チャド・スタエルスキもまたユエン・ウーピンから影響を受けていたのだ。こうしてアクションマンたちの経歴を紐解いてみると、彼らは様々なミームで繋がっていることがわかる。

 『ジョン・ウィック』シリーズをボージョレ・ヌーボー的に常に最高を更新し続けるアクションシリーズだと記事冒頭で評したが、ドニーさんも常に最高を更新することで知られ、現時点で日本公開主演最新作である『レイジング・ファイア』(2021年)はドニーさんの最新最高傑作として名高い(ここだけの話、ドニーさんの最高傑作はいくつもある)。

 改めてドニーさんのInstagramを覗くと、最新の投稿で元気に筋トレしている姿を見ることができる。還暦を迎えたドニーさんだが、まだまだ最高を更新し続けるつもりらしい。『導火線 FLASH POINT』で更新した最高が巡り巡って『ジョン・ウィック:コンセクエンス』で結実したように、きっと今この瞬間も最高を更新しようとする意志が未来のアクション映画の発展に影響を与えているに違いない。

 ちなみに度々『ブレイド2』を批判していたドニーさんだがギレルモ・デル・トロ監督との関係は良好なようで、デル・トロ監督が『イップ・マン 完結』(2019年)のレビューを引用して「ドニー・イェンは24時間365日見れる」とツイートし、それにドニーさんが「またあなたと仕事したい!」とリプライしている。ここにもアクション映画の発展があることを願ってやまない。

(文=2号)

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