2015年に策定され、2030年を達成年限とする「持続可能な開発目標(SDGs)」。2023年はその中間年に当たるが、米ニューヨークの国連本部で9月18日に開催された「SDGサミット」では、SDGsの達成は “危機的状況にある” との宣言が採択された。そうした中、練馬区立豊玉南小学校にて9月13日、6年生の児童に向け「SDGsを達成するために」をテーマに出前授業が行われた。講師はカーボンフリーコンサルティング株式会社代表取締役で社会起業家の中西武志氏。

同区出身の中西氏は冒頭で「今日は、どうすれば環境問題がよくなるのかをみんなで話し合いたいなと思います」と呼びかけ、気候変動、大気汚染、水質汚染、生物種の消滅と生態系の破壊といった主な環境問題について解説した。
「何が言いたいかというと、問題があるということにまず気がついていただきたい。それを解決するために必要なことは正確な知識と行動。 “活動的な無知より恐ろしいものはない” とはドイツの文豪・ゲーテの言葉ですが、知らないのに猛ダッシュすると間違えた方向に向かってしまう」
その後、環境の悪化による影響として環境難民の増加を挙げ、「2050年までに気候難民になる恐れがある人の数は中南米だけで1700万人。2000年以降、環境によって住む地域を奪われる人は戦争難民より多く、2050年には圧倒的に増えると言われている」と指摘。

環境について考えるための例題として、実際に中西氏が引き受けた取り組みを紹介し「WFP(国連世界食糧計画)から “東ティモールから西ティモールに流入した1700人(340家族)が20年間生活でき、環境に貢献できるような仕事を生み出してほしい” と連絡がきました。WPFの名前は使えるけどお金は提供されません。あなたならどうしますか?」と問いかけた。
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中西氏は解決策として「私たちがこのプロジェクトのオーナーになってお金を出資し、WFPを通じて現地の政府機関やNGOに提供して植林事業や果実の換金などを支援。お金を先に提供してプロジェクトが回るような仕組みを作ってもらった」と説明。1家族につき0.32ヘクタールの土地を与え、ジャトロファの木で生垣を作り、カシューナッツの木を植えてもらったという。
「カシューナッツの木は二酸化炭素を吸収して大きくなる。ジャトロファの種はバイオ燃料になるので、薪を燃やす二酸化炭素を削減し、クッキングストーブを作って現地の女性が重労働から解放される。その権利を販売する “カーボンクレジット” という仕組みを考え、日本の金融機関とタイアップして環境保全預金を作った」

預金金利の一部を環境保全のために捻出できる「環境保全預金」は大きな成功を収め、アフリカにおいても展開できたという。「難しいでしょう? でも、簡単だったら私みたいな人はいない。かなり複雑なことをやったんだけど、これを理解して共感を覚え、お金を出してくれる人が世の中にたくさんいたんです」と中西氏。その後、カーボンニュートラル自動販売を1台設置するごとに1本植林する 「LOVE the EARTH ベンダー」の取り組みも紹介した。
最後に、児童に「フィリピンのスモーキーマウンテン(スラム街のゴミの山)で安全で衛生的な仕事を提供してください」という課題を投げかけ、子どもたちからは「ゴミの山を一度移動させて、少なくなったゴミを分別してリサイクルする」「生ゴミを畑の肥料にしてリサイクルする」「クラウドファンディングで現地の人に靴などを提供。国連貿易開発会議にフィリピンと貿易できるよう働きかけてもらう」「東京みたいに埋立地を作る」といったアイデアが飛び出した。
中西氏は「私たちは廃棄物燃料を製造する工場を作り、セメント会社がその燃料を石炭の代わりに使っている。課題を解決する方法は一つではなく100%の正解もありません。これからも学んで理論を身につけること、そして行動を起こすことの両輪で世の中の課題を解決してほしい」とまとめて授業を終えた。この授業は一般財団法人ピースコミュニケーション財団によるピースコミュニケーションプロジェクトの一環として行われた。