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『すずめの戸締まり』はおかえり上映で真に完結する 新海誠の“ネタバラシ”で深まる解釈

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「Blu-ray&DVD発売記念『すずめの戸締まり』“おかえり上映”」©︎2022「すずめの戸締まり」製作委員会

 映画『すずめの戸締まり』のBlu-rayおよびDVDの発売を記念して、全国100館で「おかえり上映」が9月20日から開催中。国内外で大ヒットした『すずめの戸締まり』だが、今回の再上映は、過去に作品を観たことのあるファンでも楽しめる特別な仕様となっている。

参考:『すずめの戸締まり』が中国、韓国で記録を更新 アニメの世界興行が別のフェーズへ

 特筆すべきは、未使用だった「草太からすずめへの『ただいま』」がラストシーンに追加されている点だろう。詳細についてはぜひ劇場で確かめてほしいため、言及を控えるが、まさにこの演出により物語が真に完結したと感じられるほどだった。しかし、おかえり上映の魅力はそれだけではない。

 おかえり上映では、Blu-ray&DVD全エディションに音声特典として収録される新海誠監督と三木陽子助監督によるオーディオコメンタリーの一部を新たに収録し直し、スマートフォンアプリで楽しむことができる。視聴者は映画を観ながら、副音声で作画や劇伴などの裏話を聞くという贅沢な時間を過ごすことができる。

 とはいえ「副音声なしで作品に集中したい」というファンもいるかと思うが、おかえり上映にせっかく行くのであれば、副音声はぜひ合わせて聴いてほしいところ。各シーンの制作に関わったクリエイターたちの仕事をなぞっていくだけでなく、ファンには喜ばしい小ネタの解説も充実しているからだ。

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 たとえば、あるシーンは『ルパン三世 カリオストロの城』のルパンがクラリスを守るシーンへのオマージュであり、また、新海監督が草太の部屋の背景に“野田洋次郎風”の要素を反映させたりと、まさに作品を複数回視聴したファンに向けた貴重な情報が詰まっている。『君の名は。』や『天気の子』と重なるシーンについての解説もあるため、他の作品とのつながりに気付いたファンは興奮するはず。

 さらにエンドロール時に流れる副音声には、「おかえり上映用」に収録されたコンテンツが追加。この「おかえり上映」は、物語内で描かれるすずめたちの旅と同じく、2023年9月25日から9月29日にかけての期間を挟む形で設定されている。新海監督は副音声の中で、満月であることが「常世への条件」という裏設定を持っていることを明かし、「すずめが岩手にたどり着く物語のクライマックスを2023年の9月29日に結びつけた」と述べた。実際に子ども時代のすずめが現実に戻るときには扉の後ろに大きな満月が映り込んでおり、納得感のあるネタバラシに大きくうなずいてしまう。

 月の満ち欠けが扉の開閉にも見えることから、この設定が生まれたそうだが、本作では新海監督らしい印象的な「空」のシーンは月に関連づけられていたようだ。なお、2023年の9月29日は「中秋の名月」にあたり、1年の中でも最も美しいとされる満月が空に輝く日。こうした現実世界の出来事とリンクする描写は、新海誠作品の魅力の一つでもある。

 もうひとつ、『すずめの戸締まり』のエンドロールでは、すずめがマフラーを巻いて自転車に乗る場面があるが、新海監督は「すずめのマフラーの巻き方」にも特別な意味が込められていることを強調していた。“すずめの子ども時代に関連している”という点のみ書いたところで、このマフラーの話については、ぜひ劇場で草太の追加された台詞とともに聞いていただきたい。

 ここまでオーディオコメンタリーの中身に触れてきたが、紹介した情報は全体のごく一部である。私たちを待っているのは、新海監督の並々ならぬ作品愛に満ちた121分だ。今回の「おかえり上映」は、新たなカットを追加した再上映にとどまらず、新海監督の独自のビジョンによる「完全版」の公開と言っても過言ではない。上映終了までにはまだ間に合う。それでは、すずめに「ただいま」を言いに行く準備をしようではないか。
(文=すなくじら)

 
   

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